私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~

阿弥陀乃トンマージ

血気盛んな方たち

「の、乗っ取られたというのは 」

「まあ……敵対勢力に?」

「て、敵対勢力……穏やかな話じゃないね」

「この若さの女子がか細い血縁関係を理由に征夷大将軍に就任したらそりゃ色々あるわよ……葵っちも心当たりが一つや二つあるんじゃないの?」

「た、確かに……」

 葵はつい先日の氷戸光ノ丸ひとみつのまる五橋八千代いつつばしやちよ日比野飛虎ひびのあすとららと繰り広げた将軍位争奪の学内選挙や自らの身に降りかかった有備憂ありぞなえういによる襲撃事件を思い返して深々と頷いた。

「そ、それでどうするの?」

「勿論、このままにしておくわけにはいかないわ、鎌倉を奪還するのよ!」

 紅は力強く握り拳をつくる。葵が戸惑いながら尋ねる。

「奪還ってい、いつ?」

「今日明日には」

「どこで?」

「そりゃあ鎌倉御所に乗り込むのよ」

「誰が?」

「私と猛時が」

「何を?」

「何をって政権をよ」

「何故?」

「私が征夷大将軍だからよ」

「ど、どうやって?」

「力ずくで」

 そう言って、紅は袖をめくり、力こぶを作ってみせる。

「そ、そうなんだ……」

「いつ、どこで、だれが、なにを、なぜ、どうやって……5W1Hを使っていち早い状況理解に務められるとは、流石ですね」

 猛時が感心した様子を示す。

「聞くまでもない質問もあったようだけど……」

「ちょ、ちょっと待って! 二人で乗り込む気なの 」

 葵の驚く声に紅が頬杖を突きながら答える。

「生憎人手不足でね……」

「それにしても数が足りなすぎじゃない 」

「勿論、ここにいる猛時以外にも信頼出来る御家人ごけにんたちが何人かいるわよ」

「御家人?」

「簡単に言えば家来ね、私はそういう言い方はあまり好きじゃないけど。信頼の寄せられる大切な友人たちよ」

「じゃ、じゃあ、その人たちも呼ばないと!」

 紅はため息交じりに答える。

「ちょっと、別件を頼んでいて皆それぞれ鎌倉周辺から離れていてね、私自身も視察中に……迂闊だったわ。そこを狙ってくるとは……」

「先程調べて参りました所、御所を乗っ取った連中もそこまで多人数ではないと思われます。二人でも十分対応出来るかと」

 猛時が冷静に報告する。

「そう、侍所さむらいどころは?」

「突然のことですので、まだ完全には掌握しきれていない模様です」

「侍所?」

「簡単に申し上げれば、軍隊と警察組織のことです」

 葵の問いに猛時が淡々と答える。

「それならなんとかなりそうね……よし! 猛時、出陣よ!」

「いやいや! 流石に無謀でしょ  もうちょっと対策を練らないと!」

「葵っち、こういうのは勢いが大事なのよ。思い立ったら何とやらって言うでしょ?」

「左様です」

 当然とばかりに頷く猛時に葵は驚愕する。

「星ノ条さんまで  二人ともちょっと血気盛ん過ぎない 」

「そんな……誉めても何も出ないって~」

「いや、全然誉めてないよ 」

「やっぱり騒いじゃうんだよね~鎌倉武士系女子の血ってやつがさ~」

「初めて聞いたよ、そんな系統!」

「大丈夫、大丈夫、私も猛時もわりと一騎当千?な所があるからさ~」

「わりとじゃ駄目だよ! 一騎当千?って疑問形だし!」

「通知表で『武芸』の欄、オール5だよ?」

「『武芸』の欄なんかあるの  そ、それにしてもだよ」

「恐れながら……」

 猛時が口を挟む。

「この場合、相手の体勢が整う前に乗り込むのが最も効果的と考えます。時間を与えればそれだけ向こうが有利、こちらが不利になってしまいます」

「そ、それはそうかもしれないけど……」

「更にもう一点……連中はまさか我らが二人きりで来るとは思ってもいないはずです。その心の油断を突きます」

「理には適っているかも知れないけど……」

 葵が腕を組んで首を捻る。

「善は急げね。猛時、準備をお願い。私もすぐに支度するわ」

「御意……」

「待って……」

 部屋を出ようとした紅が葵の声に立ち止まり、振り返る。

「どうしたの?」

「……助太刀するよ」

「え?」

「何ですって?」

 葵がバッとその場に立ち上がり、力強く宣言する。

「その『鎌倉奪還作戦』、私たち『将軍と愉快な仲間たちが学園生活を盛り上げる会』、通称『将愉会』も参加させてもらうよ!」

「「ええっ 」」

 今度は紅と猛時が驚きの声を上げる。

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