僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜
第十一話・14
洋服店を出た後、僕たちは喫茶店に来ていた。
店の中は落ち着いた雰囲気で、そのせいなのか主に女性客が多い。
僕はバイト以外で喫茶店に来ることはないけど、香奈姉ちゃんは友達とよく来ているみたいだ。
香奈姉ちゃんは、運ばれてきた紅茶とチョコレートケーキのセットを見て嬉しそうに言った。
「ここの紅茶とケーキ、とっても美味しいんだよ」
「そうなの?」
僕は、運ばれてきた紅茶とチョコレートケーキを見る。
香奈姉ちゃんが勝手に注文したものだが、味には定評があるらしい。
よくわからないが。
まぁ、香奈姉ちゃんが注文したものだから間違いはないだろう。
しかし──。
いくらケーキを食べたいからって、僕の分まで注文するかな。
「その目は、疑ってるな。美味しいから食べてみなさいよ」
そう言うと香奈姉ちゃんは、フォークでチョコレートケーキの一口分を取り、そのまま僕の方に向けてきた。
「あの……。そんなことしなくても、僕の分も頼んだんだから──」
「いいから、食べてみなさい」
一歩も引くつもりはなかったのか、香奈姉ちゃんは手に持っていたケーキの一口分を僕の口元の方まで持っていく。
こうなると、仕方がない。
「そこまで言うのなら……。いただきます」
僕は、恐る恐る口を近づけてケーキを食べた。
なんか周囲の視線が痛いけど、今は気にしないでおく。
ケーキ自体は、甘くて美味しいんだけど……。
「どう? 美味しいでしょ?」
香奈姉ちゃんは、笑顔でそう訊いてくる。
「…うん。とっても美味しいよ」
僕も微笑を浮かべてそう答える。
他の返答はできそうにない。
「そうなのよ。とっても美味しいんだから」
香奈姉ちゃんは、そう言って自分の分のケーキの残りを食べ始める。
しかも、僕が口をつけたフォークでだ。
ちょっと待って……。それって間接キスになるんじゃ……。
「香奈姉ちゃん」
「ん? 何かな?」
香奈姉ちゃんは、そのことに気づいていないのかケーキの三口目を食べながら、思案げな表情で僕を見てくる。
僕は、すぐに手元にあるフォークを手に取り、香奈姉ちゃんに渡そうとした。
「そのフォークはその……。僕が口をつけたものだから。こっちを使ってよ」
「そんなの知ってるよ。だから私は、このフォークを使ってるんだよ」
「え? それって?」
「間接キスになるからって言いたいんでしょ?」
「うん……」
さすがにそれはわかっていたか。
香奈姉ちゃんは、手にしているフォークでケーキを刺して最後の四口目を頬張る。
「間接キスの相手が楓なら、私は全然気にしないよ。むしろ楓が、そのことを気にしてくれてるのが嬉しいくらいだよ」
「香奈姉ちゃん……」
「それよりも、食べないの? ずっと手をつけていないみたいだけど……」
「もちろん食べるよ。だけどその前に、やっておかないといけないことがあるから」
「やっておかないといけないこと? それって?」
香奈姉ちゃんは、思案げに首を傾げていた。
僕は、自身の前にも置かれてあったチョコレートケーキにフォークを入れ、一口分を取って香奈姉ちゃんに向ける。
「はい。どうぞ」
「え……」
「お返しだよ。遠慮なく食べてよ」
僕の言葉に、香奈姉ちゃんは少しの間だけきょとんとした表情をしていたが、すぐに微笑を浮かべた。
不覚にも、その表情は今まで見たどの表情よりも可愛く見えてしまう。
「ありがとう」
香奈姉ちゃんは右手で垂れ下がってきた髪を押さえ、僕が取った一口分のチョコレートケーキを食べた。
それは一瞬のことだったが、僕にはゆっくりとした流れに思えてしまうくらいだ。
周りにいた女性客も小さな声で「キャーキャー」言いながら何やら言っている。
僕は、何か大変なことでもしたんだろうか?
よくわからない。
僕は、残ったチョコレートケーキをゆっくり食べながら側に置いてあった紅茶を一口飲んでいた。
喫茶店を出た後、僕たちは再びショッピングモールを歩いていた。
香奈姉ちゃんは、上機嫌で僕の手を握ってくる。
しばらく歩いていたところで、香奈姉ちゃんは何を思ったのか、ふいに訊いてきた。
「今日って、バイトあるの?」
「今日はシフト入ってないから、休みになるかな。…それがどうかしたの?」
「それならさ。この後のデートも付き合えるよね?」
「まぁ、別に予定もないから大丈夫だけど」
僕は、一応そう答える。
大丈夫だと言ったものの、一体どこに行くつもりなんだろう。
「そういうことなら、さっそく行きましょうか」
「行くって、どこに?」
「いいからこっち──」
そう言うと香奈姉ちゃんは、握っていた僕の手を引いて走り出した。
香奈姉ちゃんに手を引かれるままたどり着いた場所は、大きな公園だった。
ここには中央に噴水があり、男女のカップルのデートコースとしても有名な場所である。
その証拠に、今も複数の男女のカップルがベンチに腰掛けてイチャイチャしている姿が目に映った。
「どうかな? ここなら問題ないでしょ?」
香奈姉ちゃんは、そう言うと腕を絡めてくる。
こういう時の香奈姉ちゃんって、甘え癖みたいなのがあるから、油断ができないんだよなぁ。
「何かあったの?」
僕がそう訊くと、香奈姉ちゃんは絡めてきた腕にそのまましがみついてくる。
「何もないよ。今日は一日、楓とデートを楽しみたいなって思ってね。…ここなら、誰にも邪魔されることなくイチャイチャできるから」
「イチャイチャって、例えば何をするの?」
「それは、例えばキスするとか、膝枕するとか……。──まぁ、色々だよ。楓は、どっちがいい?」
香奈姉ちゃんは、頬を赤く染めてそう訊いてきた。
香奈姉ちゃんの『色々』という言葉に、つい興味が湧いてしまうが、そこは敢えて訊かないようにしよう。
「それって、どっちか選ばないとダメなやつなの?」
「そうだね。私的には、ベンチに座ってゆっくりしたいかな」
香奈姉ちゃんは、微笑を浮かべてそう言って意味深に太ももあたりをポンポンと軽く叩く。
それって、完全に休憩したいってことじゃん。
そうなると、まず空いているベンチを探さないとダメだろう。
「そうだね。どこか空いてるところがあればいいね」
僕は、そう言いながら周囲を見やる。
こういう時に限って、ちょうど良く空いているベンチが一つだけあったりするんだよな。
それも、ちょうど僕たちの近くにだ。
香奈姉ちゃんは、空いているベンチを見かけるとすぐに腰掛けた。
「さぁ、楓。隣に座ってよ」
「う、うん」
頷くと、僕はベンチに腰掛ける。
ちょうど香奈姉ちゃんの隣だ。
香奈姉ちゃんは、お約束と言わんばかりに太もものあたりを優しく撫でて笑顔で言った。
「ねぇ、楓。膝枕してあげようか?」
「やっぱり、そういう流れになるんだね」
「どうなの? 膝枕してほしい?」
女の子の膝枕は、男にとって憧れのシチュエーションだ。
これを無下にする男子は、そういないだろう。
「してくれるなら、してほしいけど……。周囲の人たちの目が気になってしまって、どうにも……」
「そんなの気にする必要なんてないよ」
「だけど……」
「周りの人の目なんか気にしたら、何もできなくなっちゃうよ」
そう言うと香奈姉ちゃんは両手を伸ばして僕の頭を抱き寄せ、そのまま太もものあたりまで誘う。
僕の視線は、香奈姉ちゃんが穿いているスカートの裾の方にいく。もう少しで中の下着が見えるくらいの位置だ。
「どうかな? 私の膝枕は?」
香奈姉ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤くして、そう訊いてきた。
きっと膝枕がしたくて、しょうがなかったんだな。
女の子がしてくれる膝枕がどれだけ気持ちいいものかなんて、語るまでもない。
僕は、恥ずかしいと思いながらも、香奈姉ちゃんの問いに答える。
「う、うん。柔らかくて気持ちいいよ」
「そっか。『柔らかくて気持ちいい』か。…よかった。楓が喜んでくれたのなら、嬉しいな」
香奈姉ちゃんは、いつもの優しそうな笑顔を浮かべて僕の顔を見て、そう言った。
僕は余計に恥ずかしくなり起きあがろうとするも、香奈姉ちゃんが僕の頭部に手を添えて押さえにきたので、そうもいかない。
「もう少しだけ、このままでいいかな?」
「え……。別に構わないけど。でもこの状態は……」
「大丈夫だよ。勝負下着は穿いてきたから」
「………」
問題はそこじゃないんだけどな。
これだと、周囲の人たちの視線がどうなっているのか気になるところだ。
香奈姉ちゃんは、周囲の視線なんかどこ吹く風といった様子で、上機嫌で僕の頭を優しく撫でていた。
店の中は落ち着いた雰囲気で、そのせいなのか主に女性客が多い。
僕はバイト以外で喫茶店に来ることはないけど、香奈姉ちゃんは友達とよく来ているみたいだ。
香奈姉ちゃんは、運ばれてきた紅茶とチョコレートケーキのセットを見て嬉しそうに言った。
「ここの紅茶とケーキ、とっても美味しいんだよ」
「そうなの?」
僕は、運ばれてきた紅茶とチョコレートケーキを見る。
香奈姉ちゃんが勝手に注文したものだが、味には定評があるらしい。
よくわからないが。
まぁ、香奈姉ちゃんが注文したものだから間違いはないだろう。
しかし──。
いくらケーキを食べたいからって、僕の分まで注文するかな。
「その目は、疑ってるな。美味しいから食べてみなさいよ」
そう言うと香奈姉ちゃんは、フォークでチョコレートケーキの一口分を取り、そのまま僕の方に向けてきた。
「あの……。そんなことしなくても、僕の分も頼んだんだから──」
「いいから、食べてみなさい」
一歩も引くつもりはなかったのか、香奈姉ちゃんは手に持っていたケーキの一口分を僕の口元の方まで持っていく。
こうなると、仕方がない。
「そこまで言うのなら……。いただきます」
僕は、恐る恐る口を近づけてケーキを食べた。
なんか周囲の視線が痛いけど、今は気にしないでおく。
ケーキ自体は、甘くて美味しいんだけど……。
「どう? 美味しいでしょ?」
香奈姉ちゃんは、笑顔でそう訊いてくる。
「…うん。とっても美味しいよ」
僕も微笑を浮かべてそう答える。
他の返答はできそうにない。
「そうなのよ。とっても美味しいんだから」
香奈姉ちゃんは、そう言って自分の分のケーキの残りを食べ始める。
しかも、僕が口をつけたフォークでだ。
ちょっと待って……。それって間接キスになるんじゃ……。
「香奈姉ちゃん」
「ん? 何かな?」
香奈姉ちゃんは、そのことに気づいていないのかケーキの三口目を食べながら、思案げな表情で僕を見てくる。
僕は、すぐに手元にあるフォークを手に取り、香奈姉ちゃんに渡そうとした。
「そのフォークはその……。僕が口をつけたものだから。こっちを使ってよ」
「そんなの知ってるよ。だから私は、このフォークを使ってるんだよ」
「え? それって?」
「間接キスになるからって言いたいんでしょ?」
「うん……」
さすがにそれはわかっていたか。
香奈姉ちゃんは、手にしているフォークでケーキを刺して最後の四口目を頬張る。
「間接キスの相手が楓なら、私は全然気にしないよ。むしろ楓が、そのことを気にしてくれてるのが嬉しいくらいだよ」
「香奈姉ちゃん……」
「それよりも、食べないの? ずっと手をつけていないみたいだけど……」
「もちろん食べるよ。だけどその前に、やっておかないといけないことがあるから」
「やっておかないといけないこと? それって?」
香奈姉ちゃんは、思案げに首を傾げていた。
僕は、自身の前にも置かれてあったチョコレートケーキにフォークを入れ、一口分を取って香奈姉ちゃんに向ける。
「はい。どうぞ」
「え……」
「お返しだよ。遠慮なく食べてよ」
僕の言葉に、香奈姉ちゃんは少しの間だけきょとんとした表情をしていたが、すぐに微笑を浮かべた。
不覚にも、その表情は今まで見たどの表情よりも可愛く見えてしまう。
「ありがとう」
香奈姉ちゃんは右手で垂れ下がってきた髪を押さえ、僕が取った一口分のチョコレートケーキを食べた。
それは一瞬のことだったが、僕にはゆっくりとした流れに思えてしまうくらいだ。
周りにいた女性客も小さな声で「キャーキャー」言いながら何やら言っている。
僕は、何か大変なことでもしたんだろうか?
よくわからない。
僕は、残ったチョコレートケーキをゆっくり食べながら側に置いてあった紅茶を一口飲んでいた。
喫茶店を出た後、僕たちは再びショッピングモールを歩いていた。
香奈姉ちゃんは、上機嫌で僕の手を握ってくる。
しばらく歩いていたところで、香奈姉ちゃんは何を思ったのか、ふいに訊いてきた。
「今日って、バイトあるの?」
「今日はシフト入ってないから、休みになるかな。…それがどうかしたの?」
「それならさ。この後のデートも付き合えるよね?」
「まぁ、別に予定もないから大丈夫だけど」
僕は、一応そう答える。
大丈夫だと言ったものの、一体どこに行くつもりなんだろう。
「そういうことなら、さっそく行きましょうか」
「行くって、どこに?」
「いいからこっち──」
そう言うと香奈姉ちゃんは、握っていた僕の手を引いて走り出した。
香奈姉ちゃんに手を引かれるままたどり着いた場所は、大きな公園だった。
ここには中央に噴水があり、男女のカップルのデートコースとしても有名な場所である。
その証拠に、今も複数の男女のカップルがベンチに腰掛けてイチャイチャしている姿が目に映った。
「どうかな? ここなら問題ないでしょ?」
香奈姉ちゃんは、そう言うと腕を絡めてくる。
こういう時の香奈姉ちゃんって、甘え癖みたいなのがあるから、油断ができないんだよなぁ。
「何かあったの?」
僕がそう訊くと、香奈姉ちゃんは絡めてきた腕にそのまましがみついてくる。
「何もないよ。今日は一日、楓とデートを楽しみたいなって思ってね。…ここなら、誰にも邪魔されることなくイチャイチャできるから」
「イチャイチャって、例えば何をするの?」
「それは、例えばキスするとか、膝枕するとか……。──まぁ、色々だよ。楓は、どっちがいい?」
香奈姉ちゃんは、頬を赤く染めてそう訊いてきた。
香奈姉ちゃんの『色々』という言葉に、つい興味が湧いてしまうが、そこは敢えて訊かないようにしよう。
「それって、どっちか選ばないとダメなやつなの?」
「そうだね。私的には、ベンチに座ってゆっくりしたいかな」
香奈姉ちゃんは、微笑を浮かべてそう言って意味深に太ももあたりをポンポンと軽く叩く。
それって、完全に休憩したいってことじゃん。
そうなると、まず空いているベンチを探さないとダメだろう。
「そうだね。どこか空いてるところがあればいいね」
僕は、そう言いながら周囲を見やる。
こういう時に限って、ちょうど良く空いているベンチが一つだけあったりするんだよな。
それも、ちょうど僕たちの近くにだ。
香奈姉ちゃんは、空いているベンチを見かけるとすぐに腰掛けた。
「さぁ、楓。隣に座ってよ」
「う、うん」
頷くと、僕はベンチに腰掛ける。
ちょうど香奈姉ちゃんの隣だ。
香奈姉ちゃんは、お約束と言わんばかりに太もものあたりを優しく撫でて笑顔で言った。
「ねぇ、楓。膝枕してあげようか?」
「やっぱり、そういう流れになるんだね」
「どうなの? 膝枕してほしい?」
女の子の膝枕は、男にとって憧れのシチュエーションだ。
これを無下にする男子は、そういないだろう。
「してくれるなら、してほしいけど……。周囲の人たちの目が気になってしまって、どうにも……」
「そんなの気にする必要なんてないよ」
「だけど……」
「周りの人の目なんか気にしたら、何もできなくなっちゃうよ」
そう言うと香奈姉ちゃんは両手を伸ばして僕の頭を抱き寄せ、そのまま太もものあたりまで誘う。
僕の視線は、香奈姉ちゃんが穿いているスカートの裾の方にいく。もう少しで中の下着が見えるくらいの位置だ。
「どうかな? 私の膝枕は?」
香奈姉ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤くして、そう訊いてきた。
きっと膝枕がしたくて、しょうがなかったんだな。
女の子がしてくれる膝枕がどれだけ気持ちいいものかなんて、語るまでもない。
僕は、恥ずかしいと思いながらも、香奈姉ちゃんの問いに答える。
「う、うん。柔らかくて気持ちいいよ」
「そっか。『柔らかくて気持ちいい』か。…よかった。楓が喜んでくれたのなら、嬉しいな」
香奈姉ちゃんは、いつもの優しそうな笑顔を浮かべて僕の顔を見て、そう言った。
僕は余計に恥ずかしくなり起きあがろうとするも、香奈姉ちゃんが僕の頭部に手を添えて押さえにきたので、そうもいかない。
「もう少しだけ、このままでいいかな?」
「え……。別に構わないけど。でもこの状態は……」
「大丈夫だよ。勝負下着は穿いてきたから」
「………」
問題はそこじゃないんだけどな。
これだと、周囲の人たちの視線がどうなっているのか気になるところだ。
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