とろけるような、キスをして。
報告(1)
*****
顔がなんだか痒い。
意識が浮上した時、痒みに目を擦る。
片目を半分だけ開けると、目の前に修斗さんの綺麗な寝顔があった。
「っ」
どうやら髪の毛が私の顔にかかっていたよう。
それを指でそっと避ける。
暖房は夜中のうちに自動で切れていたものの、素肌のままくっついて寝ていたからか布団一枚でも温かかった。人肌が一番温かいというのはどうやら本当らしい。
私に抱き着くように眠る修斗さんの寝顔をしばらく見つめる。
薄く開いたピンク色の唇が、昨夜私にたくさんのキスをくれてたくさんの愛を囁いてくれたのを思い出す。
それだけで身体の奥が疼くような感覚がして、自分で恥ずかしくなって赤面する。
そうこうしているうちに、修斗さんが目を覚ました。
「ん……んー……」
「修斗さん?おはよう」
「みゃーこ……おはよ」
まだ微睡の中なのか、何度も目を擦りながら私の首筋に顔を埋める。
それがくすぐったくて身を捩る。
「ちょっと修斗さんっ、くすぐったいよ」
すると段々と目が覚めたのか、ふにゃりと微笑んでキスを一つ。
「おはよみゃーこ」
「……お、おはよう」
朝から甘い。甘すぎる。
「昨夜はごめん。我慢できなくて。みゃーこも移動で疲れてたのに」
「ううん。謝らないで」
受け入れたのは私だし、一緒にいられて嬉しかったのは事実。
「むしろ、泊まっていって大丈夫なの?ロトンヌ行かないといけないんじゃなかったの?」
大和さんと雛乃さん、困ってないだろうか。
修斗さんはスマートフォンを取り出すと、
「うわ、めっちゃ不在入ってる」
と欠伸をしながら電話を折り返す。
何故か私を抱きしめたままだから、その耳元で鳴るコール音も全部筒抜けだ。
『おい修斗!お前今どこにいんだよ!?ちょっと出るだけっつっただろ!』
……やっぱ怒ってた。そりゃそうだよね。
「悪い。みゃーこ帰ってきたから一緒にいた」
悪いと言いつつも、修斗さんは私の髪の毛を撫でて遊んでいる。
ダメだ。この人全く反省してない。
『みゃーこちゃん!?……ってことはお前、まさか……』
「後でみゃーこ連れてそっち行くからさ、ちょっと待ってて」
『あ、おい!』
修斗さんは勝手に話を終わらせて電話を切る。
「……大和さん、怒ってたよ?」
「いいの。アイツはいっつも俺に対してはあんな感じだから」
「どれだけ怒らせてるのさ……」
そんなんでも一番の親友らしい。男同士の友情というのはよくわからない。
「あー……服着たくない。布団から出たくない。みゃーことずっとくっついてたい……」
そう言って私の胸に吸い付くようにキスをした修斗さんに、私の肩が跳ねた。
そのまま伸びてきた手が下から掬い上げるように揉みしだく。
服を着ていないから、その刺激は甘く全身に響く。
「ちょっ……待って」
「少しだけ」
反対側の手が後頭部に回り、引き寄せられて深いキスをされた。
目覚めてすぐに、そんな。
押し寄せてくる快感に抗おうとするものの、修斗さんはそれを許してくれなくて逃げられない。
その手が背中を撫で、さらに下に向かおうとした時。
私のスマートフォンが音を立てた。
さすがにそれには修斗さんも手を止めて、不満そうに私から少し身体を離す。
布団で身体をなんとか隠しながら、ベッドの下に落ちていたスマートフォンを拾う。
画面に表示されていたのは雛乃さんで。
慌てて電話に出た。
「もしもし?雛乃さんですか?」
『あ、みゃーこちゃん?良かった。番号変わってなかったんだね!』
「はい。どうかしましたか?」
『いや、大和がね、"みゃーこちゃんが修斗に襲われてるかもしれない"ってずっとそわそわしてて。さっき電話してたんだけど急に切られたからってすごい怒っててね』
「そうでしたか……。なんかすみません」
『みゃーこちゃんが無事ならいいのよ。そのかわりちゃんと話聞かせてよー?後で修斗と一緒に来るんだよね?サンドウィッチとホットチョコレート用意しとくから!』
「……ありがとうございます」
直接見なくても、雛乃さんがニヤニヤしているのが手に取るようにわかる。
多分、大和さんと雛乃さんは修斗さんの気持ちを前から知っていたのかもしれない。
でもそれなら、一体いつから修斗さんは私のことを想ってくれていたんだろう。
電話を切って見上げると、なんとも面白くなさそうな顔を向けられる。
「……またアイツらに邪魔された」
「いや、予定すっぽかしたの修斗さんだからね」
自分のことを棚に上げて何を言っているんだか。
コメント