とろけるような、キスをして。

青花美来

拍子抜け



*****


「みゃーこ、おはよ」

「……おはよ」


朝、ふと目を覚ますと先生は先に起きていたようで、私に腕枕した状態でスマートフォンを弄っていたよう。
私が起きたのを見て、手に持っていたスマートフォンをベッドに置いた。


「昨日、みゃーこあのまま寝ちゃったから、起こすのも可哀想で。向こうの部屋で布団に寝かしてあげようと思ったんだけど、みゃーこが俺の服掴んだままだったから布団敷けなくて。ごめんな、一緒の布団で」

「……ううん。私こそ迷惑かけてごめん」

「迷惑じゃないよ。可愛いみゃーこが見れたから俺は満足」

「……馬鹿」


憎まれ口を叩いて、身体を起こす。
数時間前のことを聞きたいのに、先生があまりにも普通に接してくるから逆に聞けない。
本当に覚えていないのだろうか。それなら、私も何も知らないふりをした方がいいのかも。

まだ高鳴っている心臓を、深呼吸して少し落ち着かせた。


「……先生、ご飯食べよ。私作るから」

「え、いいの?」

「うん。ついでにお弁当も作ってあげようか」

「マジ?やった!」


子どもみたいに喜ぶ先生に笑いそうになりながら、先生の寝室を出た。
私服に着替えて顔を洗ってから、昨日買った食材を使って、朝食とお弁当を作る。
焼き魚と卵焼きにお味噌汁。簡単な朝食だけど、先生は目を輝かせて食べてくれた。


「お弁当箱とかある?」

「あ、無いや」

「じゃあタッパーとか」

「それならある!」


タッパーにラップを敷いて、その上に用意したおかずを並べていく。
三日も泊めてもらうんだから、せめてこれくらいのお礼はしないとね。
蓋をして、その間にスーツに着替えてきた先生にお弁当を渡す。


「はいこれ。美味しいかどうか、自信無いんだけど」

「大丈夫。絶対美味いの知ってるから。ありがとう。……なんか、こうやってると新婚みたいだな」

「ふふっ、私もそれちょっと思った」


一緒に寝て、朝起きて、朝食を作って、一緒に食べて。お弁当を作って渡して送り出す。
専業主婦みたいだなって、ちょっと思ってた。


「あ、そうだ、みゃーこ。これ」

「ん?」

「ここの合鍵。今日も実家行くんだろ?これ使っていいから」

「ありがとう」

「今日は暗くなる前に仕事終わるはずだから、そしたら迎えに行くからスマホ忘れずに持ってって」

「わかった。気を付けてね。お仕事頑張って!行ってらっしゃい」

「……やばいねそれ。めちゃくちゃ良い。頑張る。行ってきます!」


先生は照れたように頬を染めながら手を振って仕事に行った。
なんで照れていたのかはよくわからないけど、嫌がってたわけじゃないみたいだからまぁいいか。

さて。私も準備して実家に行こう。片付けの続きをしないと。
食器洗いを終わらせた後にキッチンをサッと掃除して、私も家を出た。

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