オーストラリア!自由気ままにぐるっとバイク旅

ノベルバユーザー526355

第28話:死なぬがホトケ。カカドゥへ、いざ出陣。

11月19日 雨 352キロ
→pinecreek→coounda(CP)
舗装された幹線道路から外れ、ジャングルへといざなうダートに突入。念願のカカドゥ・ナショナルパーク(国立公園)に足に入れていく。憂そうと茂った森はさらに密度が濃くなり、熱帯雨林特有のものとなる。あの砂漠時代の経験が遠い昔のウソのようで、乾きという苛酷さだけが現実であったことの証として喉の奥で覚えていた。水っ気と生命力エネルギーは比例する。例えば、数日前より見かけ始めたアンツ・ヒル(蟻塚)も、最初は地面から竹の子みたいにポツポツと突き出ていたモノが、徐々に巨大化し、今では自分の背丈の2倍はある大きさまで至るほどだ。自然の中では、人間なんて虫けら同然、そんな実感が否応無しに冒険気分を盛り立ててくれた。僕のバイクはオンロードタイプなので、ジャングルのダートロード(未舗装道路)を走るのには適していなかったが、まだ本格的な雨期前ということもあったし、また道中出会ったオフロードバイクの道連れもいたので不安はなかった。
オーストラリア内陸ではいくら幹線道路とは言え、何もないアウトバックにただ舗装した道路にセンターライン(ないところもある)が引かれているだけの代物で、標識もなければ信号もない。一日ですれ違った車の数も思い出せるほどだった。そう言えば日本では当たり前のガードレールも、ここでは存在しない。ガードする必要なものなんて何もないし、仮にあってもそれ自体が危険に思えた。車を運転するのも、そこを走るのも大人、危険は承知、全て自己責任。今思えば、日本の道路は、標識やライトの数にしてもしかり、過剰な構築物、無駄遣いというか過保護というかブラックジョークさながら、かといって当然のように常識化しているだけに笑えない。
カカドゥ行きのダートロード、クロコダイルの開けた口に飛び込む気分だ。偶然の不測の事態が起きることが、必然のような気がした。今までにも増して行き交う車なんて減るはず、皆無も想定一人ぽっちとなるはずだ。だから、ここにきての旅の道連れは、神のおぼし召し、彼とは出会うべくして出会ったのだろう。そして二人は、悪魔な出来事、待ち受ける試練もつゆ知らず。

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