いつかまた

ノベルバユーザー525438

ホワイトホール

「ホワイトホールって、知ってる?」
「ブラックホールじゃなくて?」
「ついに痕跡が…み、見つかったって…」
「?へー」
「きゃー!!!」
突然スピカに抱きつかれた。
「びっくりした…」
「すごーい!!やっぱやっぱやっぱ旧人類は偉大だわー!!これはね終焉回避も夢じゃないってことなのよ!」
「おーすごいじゃん」
「反応薄いわね!?」

スピカが嬉しそうで僕も嬉しい。
頭のいいスピカと真逆の僕には何の話なのか分かんないけど。

「ねぇ、ホワイトホールって何?」
「あ、ホワイトホールってね、ブラックホールとは真逆の特性を持った星なの。ブラックホールは吸い込む。でもホワイトホールは吐き出す。二つはついになっているんじゃないかって言われてたのよ。でも今までは机上の理論で存在までは確認出来なかった」
「ふーん」
小宇宙を動かしながら説明するスピカ。
僕は映像越しにスピカの顔をこっそり見つめて返事をする。おっと目が合うところだった。
「34年前のニュース知ってるよね?終焉の始まりと言われた衛星NPN26がブラックホールに吸い込まれた時の事」
「うん、もちろん」
「今さっきその欠片が80万光年先で見つかったんだって!今、この‘‘時’’に!凄いわ!私達は凄い時代に生きているのよ!あの偉大なホーキング博士の説はやっぱり正しかった、…うぅっ」
「スピカ⁈なんで泣くの?」
「夢…夢が、叶うかもしれない…って、思…うぁあぁああ」



「スピカの夢って結局なんだったんだ?」
あの時はそれどころじゃなくて結局聞けなかったんだよな。
冷たくなってこの家に帰ってきたスピカの頬を撫でながらふと、当時を思い返していた。

どうせ後数年で世界は終わるし僕も死ぬ。スピカはそれが5年早まっただけ。死ぬのは当たり前だし怖くない。

それなのにどうしてか涙が溢れて止まらない。
この感情は一体何だろう。

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