第18話：大陸連合魔術学院生

「今日は皆さんに転入生を紹介します。
　カンリフ王国ハザートン公爵家のノア殿とエラ嬢です。
　爵位の違いで争うことなく仲良くしなさい。
　争いが目に余るようなら強制退院処分になりますからね」

　俺とエラは無事に大陸連合魔術学院に入る事ができた。
　しかも試験を受ける事もなくだ。
　ようは寄付金裏金次第で魔力がなくても入れるという事だ。
　俺は学院に寄付金として二十カラットのダイヤモンドを十個寄付した。
　理事長にも裏金として同じ二十カラットのダイヤモンドを十個渡した。
　前世も異世界も同じようなものだ。
　前世で裏金を受けとられなかった師匠と大師匠は本当に偉い方だった。

「ノア殿とエラ嬢は空いている一角に移動しなさい」

　俺とエラは教壇から学院生が学ぶための一角に移動した。
　いや、俺とエラを護る護衛十人も一緒に移動する。
　学院生が連れて歩ける護衛の上限は五人までなのだが、この教室には五人も連れていない学院生が大半だ。
　比較的物価の高い学院の城下町に多くの家臣を住ませられないのだろうな。

　まあ、その経済力の差を見せつけられたのが腹立たしいのだろう。
　他の学院生から激しい敵意の籠った視線を向けられる。
　もしかしたら、俺とエラが入った事で、今まで使っていた場所から強制移動させられた学院生がいるのかもしれない。
　十二人分の空間を空けたのだ、必ず移動させられた者がいるだろう。
　もしかしたら全員が強制移動させられたかもしれないな。
　寄付金と裏金を奮発し過ぎてしまったかもしれない。

「ノアお兄様、どうして机がこんな形の配置になっていますの」

「ああ、これはね、刺客の襲撃を警戒した配置なのだよ。
　学院に来る者には二種類いてね、魔力があって魔術を探求する院生と、本国にいては問題がある者、俺のように命を狙われている院生がいるのだよ。
　命を狙われている院生は、常に暗殺を警戒しなければいけないから、前後左右を空けていないと危険なのだよ」

「まあ、それは先生や学院生も信用できないという事ですか」

「ああ、この教室にいる人達が必ず俺と襲うという訳ではないよ。
　ただ俺を殺したい奴が、金を渡して他の院生に狙わせようとする可能性もあれば、院生の護衛を抱き込んで殺させようとする可能性もある。
　だから他の院生やその護衛が背後にいる配置はできないのだよ。
　教室に入れる院生の数は限られてしまうけれど、院生と護衛の席は左右を空けた横一列の配置にするしかないのだよ」

「はん、背後に回らなくてもボンボン公子を殺すのなんて簡単だぜ」

　やれ、やれ、やはり嫌われているようだな。
　争いのない穏やかな学生生活を送りたいのだがな。

「ノアお兄様、全く魔力がない無能者もおられるようですが、どうしてなのですか」

　これこれ、理由はさっき話したじゃないか。
　これ以上馬鹿を刺激してはいけないよ。
　人間本当のことを言われるくらい腹が立つ事はないのだよ。
　貴族に生まれたのに魔力が全くないなんて、恥以外の何物でもないからね。
　少しでも誇りのある者なら間違いなく襲い掛かってくる。
　俺は無暗に人殺しはしたくないんだがな。