今回の人生は、如何でしたか

ユタカトシ

第一章


朝起きると私はベッドの上にいた。

ベッドの上に寝転んでいたわけではない。
いや、寝転んでいるボクもいた。

でも私はベッドの"上"から僕を見ている。

寝転んでいるボクは血で赤く染まっている。
…死んでいるのだろう。
しかしここはどこだ?
ボクの部屋ではない。

白を基調としたお洒落な部屋
ターコイズカラーのアクセントクロスが印象的だ。
優しい光のダウンライト

シャワーの音がする。

女の歌声


私は浴室へ向かった。
ガラス張りの浴室

湯気で多少見にくいものの、私は感動した。

今この感動を一言であらわすことができるものがいるとしたら、そいつは神か仏だな。


私は今までこんなにも美しい"モノ"を見たことがなかった。




「あなた、やっとでてきたのね」


なんだ、声まで美しいのか。


どうやらコイツには私が見えているようだった。

「2週目の人生はどうだった?
   珍しいのよ、この時代に2週連続で人間
   になれることは」

コイツは何を言っているんだ?



私はボクと、一心同体であった。
ボクが死ぬまで、ボクと二人三脚で歩んできた。
私には肉体がない。
鏡にはうつらない。
生きている人間たちからすれば、私はボクの一部にすぎない。
それでも私は私として存在していた。
ボクのおかげだと思っていた。

ボクが死んだら私も消えてしまう。
なぜかそう確信していたが、実際はボクだけが死んだ。ボクの意思だけが消えていたのだ。


「さあ、ついてきて。
 貴方に休んでいる暇はないの」

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