祖国奪還
第18話 成長コンボ
「あれっ? 魔法のスキルが手に入っている」
手に入れたスキルの検証をある程度終えて、司は拠点から周辺へと少しずつダンジョンの攻略を始めた。
念のため、スキルに変化がないかをステータスカードを見て確認したら、まさかの変化が起きていた。
スキルの欄に、火魔法のスキルが手に入っていたのだ。
生活魔法によって、小さな火種を作ることはしていたが、魔物との戦闘に使えるような魔法を練習した覚えがない。
それなのに、どうして魔法のスキルを得ているのか原因が思い浮かばなかった。
「魔法で思い浮かぶのは……」
原因を探るため、何か魔法に関することがあったか、司はダンジョンに入ってからのことを思い浮かべた。
「ゴブリンメイジか?」
魔法に関することで司が思い浮かんだのは、ゴブリンメイジだった。
ゴブリンメイジは、ゴブリンでありながら魔法が使えるようになった変異種のことをいうのだが、スキルの検証用にゴブリンを探していた時にたまたま戦闘することになった。
魔法が使えるといっても、強力な魔法を使えるという訳でもないため、スケルトンたちが四方から襲い掛かることに寄手t難なく仕留めることができた。
その時の検証で、ゴブリンメイジをゾンビとして使用した時、生前通りに魔法が使えるのかと試してみた。
結果として魔法は使えたが、魔法を使うということは魔力を消費するため、ゴーストと同様にあっという間に活動停止してしまった。
ゾンビは、使い続ければ肉が腐り落ちてスケルトンとして使うことしかできなくなる。
なので、1度活動停止したゴブリンメイジの死体を、今度はスケルトンとして動かしてみた。
すると、スケルトンの場合魔法が使えなくなってしまったところを見ると、ゾンビとして使える間だけしか魔法を使用できないのだと判断した。
それと、何故自分が魔法を使えるようになっているのかの理由が分からない。
「…………」
魔法のスキルを得た理由が何なのか、司はとても重要なことのような気がして、しばらくの間思考の時間に入った。
「ゴブリンメイジを倒したからか? でも、倒したのはスケルトンだし」
最初司は、ゴブリンメイジを倒したことで手に入ったのではないかと考えた。
しかし、倒したのはスケルトンであって自分ではないためそれはないと考えなおした。
スキルの検証をしている間は指示を出しているだけで、司自身は戦わず、戦闘はスケルトンたちに任せていた。
それなのに、毎日使える魔力量が増えていることに疑問を持っていた。
魔力は使えば使う程増えると言っても、体感できる程増えることはなかなか無い。
そこまでの感覚に陥るのは、魔物を倒した時に感じるものだという話だ。
「スケルトンが魔物を倒しているのに魔力が増えていた。……もしかして、スキルで動かしたスケルトンたちが生物を倒しても俺に能力アップの還元がされるのか?」
魔力が上がったのが生物を殺したことによる能力アップだとしたら、魔物を倒したスケルトンたちではなく、戦っていない自分がそうなるのはおかしい。
しかし、よく考えたら、スケルトンたちは自分の能力で動かしている。
言うなれば、スケルトンという道具を使って自分が魔物を倒したと言ってもいい。
だから魔力が上がったのではないか。
「しかし、それはそうとしてスキルはどうして……」
何故か魔力が上がった理由はそれで説明がつくが、魔法のスキルを手に入れた理由が分からない。
「……フフフッ! そうか!」
魔法を使ったのは、ゴブリンメイジをゾンビにして使用した時だけだ。
それを思いだした時、先程の考えと結び付けることで答えが導き出せた。
答えが正解であるとしたら、司の中では説明がつく。
その答えが浮かんだ司は、思わず笑い声が漏れてきた。
「ゴブリンメイジのゾンビが魔法を使ったことも、間接的に俺が魔法を使ったことになる」
魔物を倒したことによる能力アップが自分に来るのだとしたら、魔法を使ったということも自分が使ったということになる。
そう考えれば、魔法のスキルがいつの間にか手に入っていた理由なのだろう。
「そうと分かれば……」
スケルトンたちが魔物を倒せば、司の能力も僅かに上がる。
倒した魔物に司が持っていないスキルがあるとすれば、ゾンビとして使うことで労せず手に入れることができる。
スキルは訓練によって手に入れることはできるが、手に入れても訓練をしなければたいして役に立たないものだ。
それでも、スキルを持っているのと持っていないのでは差が出るため、持っていることに無駄はない。
簡単にスキルを手に入れることができるというのならば、手当たり次第に手に入れることを思いついた。
「一組残して、周辺の魔物を狩って来てくれ」
現在司が動かしているスケルトンは12体、ゴーストが3体だ。
それを、スケルトン4体とゴースト1体を一組にして、司は魔物を狩って来るように指示を出した。
一組残したのは司の護衛のためだ。
ゴーストが空中から魔物を発見し、スケルトンたちが密かに距離を詰めて一気に仕留める。
それが彼らの得意な戦法だ。
この周辺の魔物を見ている限り、そこまで強い魔物はいない。
このパターンだけで充分対応できるだろう。
「倒した魔物の死体はここへ持ってきてくれ」
“コクッ!”
司の指示を受け、スケルトンとゴーストたちは頷きを持って返事をする。
そして指示通り、拠点周辺の魔物を狩りに動きだした。
倒した魔物の死体を持ってくるように言ったのは、スキル獲得のためだ。
自分が持っていないスキルを持った死体を、ゾンビとして動かすことで新しいスキルを手に入れる。
新しいスキルを手に入れられなくても、戦闘員の数が増やせる。
スケルトンたちが魔物を倒せば、自分は何もせずとも能力が上がっていく。
このやり方なら、一石二鳥どころか三鳥にも四鳥にもなる。
「この間に、俺は手に入れたスキルの訓練をしよう」
労せずともスキルを手に入れられるのはありがたいが、手に入れたものを使わないでいれば宝の持ち腐れになりかねない。
何もせずとも能力アップするとは言っても、本当に何もしないでいるわけにはいかない。
司はいすれ帝国兵を大和王国から追放することを目標にしている。
そのためには、強くならなければならない。
少しでも早く強くなるため、手に入れたスキルの訓練をおこなうことにしたのだ。
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