《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

15-6.そろそろ、ギャグでもかましてくれ!

 クロコが脱落、マグロは仮眠。


 起きているのはオレと勇者。それからスキンヘッド岩男ことガデムンと、露出姉さんことタンポポンの4人である。


「いつまで、こうしているつもりよぉ。私ぃ、お風呂に入りたいのだけれどぉ」
 と、タンポポンが甘えたように言う。


 すぐさま駆け寄って、慰めてあげたい。けれど、クロコの二の舞になってはいけないので、互いに近寄らないにしようと決めていた。


 起きている4人は、距離をとって座り込むという奇妙な構図になっている。


 幸いなのは、みんなの『魔結晶カメラ』が生きていることだ。魔結晶さえ入れれば、明かりを発してくれる。
 ただ、映像が外に送られているのかどうかは、わからない。この様子だと、送られていないかもしれない。


「仕方ないですよ。出口はふさがれちゃってますし。救助してくれるのが、イチバン手っ取り早いんですけど」
 と、オレは箱にもたれかかって言う。


 外の音はイッサイ聞こえない。外でも何か起こっているのか。あるいは魔法か何かで音が遮断されているのかもしれない。


「でも、このまま救助が来なかったら、いずれ夜になっちゃうでしょぉ。私たちも眠くなるわよぉ。みんな眠ってしまったら、いずれはモンスターにやられちゃうわぁ」


「たしかに」


 その心配はいらないわ――と、勇者がつづける。


「夜のあいだは、私が見張るから。あんたたち3人は眠っておきなさい。あんたたちが起きたら、私が仮眠をとるから」


「いつまで、こうしてるつもりよぉ」
 と、もう一度タンポポンがそう尋ねた。


「この箱が除けられるか、あるいは出口を見つけられるまでね」
 と、勇者はイッサイ疲労を見せない風情で言った。


 オレは長らく、この勇者と冒険してきた。たしかに勇者は1日2日寝なくとも、やっていけるだろうと思った。そう思えるだけの、勇姿を見て来ている。


「また、ノドが乾いてきたわぁ」


 タンポポンの言うように、たしかにノドの渇きが感じられた。
 ダンジョンのなかは蒸し暑くて、すぐにノドが渇く。


 いつモンスターが出てくるやもしれぬ、という緊張感のせいもあるかもしれない。さきほどガデムンたちが汲んできてくれた水も、もうなくなっていた。


 ったく。
 こんなはずではなかった。


 もっと気楽に冒険していく予定だったのに、なにゆえこんな展開になってしまったのか……。


 さっさと、「戻ってきてください」と、勇者が言ってくれれば、オレの冒険は終幕グッド・エンドを迎えることが出来ていたのに。


 いかん。
 吐き気がしてきた。


 シリアスくさい雰囲気がつづくと、嘔吐ゲロっちまう持病が、出てきてしまったようだ。


 誰か抱腹絶倒の一発ギャグでもかましてくれんだろうか。


「もう一度、水を汲みに行く必要がありそうね。今じゃなくても、いずれは行く必要があるわ」
 と、勇者が言う。


「だけど、ここにいるのは4人しかいない。2人ずつでしか分けられないぜ」
 と、オレはあくびをしながら言った。


 薄暗闇だし、周りにいる連中は心地良さそうに眠っている。


 ノンキなものだ。


 このままダンジョンで寝てたら、死んじゃうかもしれないのに。


 まぁ、魔法をかけられて眠っているのだから、仕方ないと言えば仕方ないのだけれど、その安らかな寝顔を見ていると、なんだか腹が立ってくる。


 なんでオレがこんな思いをしなくちゃならないんだ、という理不尽にたいする怒りである。


 温厚なオレが、人の寝顔でイラついてしまうということは、この緊張感のせいもあるのだろう。


「マグロちゃんに起きてもらいましょうか。そうすれば5人になるでしょ」
 と、勇者が5指を広げて見せた。


「5人になっても、2対3でしかわけられないじゃないか」


 3人のほうは良いが、2人のほうはよほど相手のことを信用できなければ、行動をともにすることは出来ない。


 っていうか、そもそも犯人が1人とも限らないのではないか? じゃあ3人になっても、ほか2人が犯人ならと思うと油断はできない。


 この場にいるなかで、心底信用できるのは、マグロぐらいだ。マグロはずっとオレといっしょにいたし、他人を眠らせるような素振はしていない。
 クロコが眠らされたときだって、マグロは仮眠を取っていたのだ。


 気持ち的にはタンポポンも信用してあげたいところだが、真剣に考えるなら、チョット疑わしいところもある。


 え?
 勇者?
 イチバン信用ならないな。


「よっし、なら水はオレが1人で汲んでくるとしよう」
 禿頭をぴしゃりと叩いて立ち上がったのは、ガデムンである。


「1人で――ですか?」


「まったく、どいつもこいつも信用できねェ。1人になって気持ちを休めたいと思ってたんだ。トイレにも行きたいしよ。そのついでに、水を汲んできてやるよ」


「でも3階層ですよ。ここ」


 警戒しなくてはならないのは、なにも眠らせてくる犯人だけではない。モンスターだっている。


「心配ねェって」
 と、ガデムンは空の水筒を回収すると、逃げるようにして立ち去ったのだ。


「出すもの出したら、ちゃんと手を洗ってくださいよ。それから水を汲んできてくださいね」
 と、オレは注意したのだが、聞こえたかどうかはわからない。

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