《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
14-4.ぜんぜん話が、進展してませんけど!
勇者とマグロ。
ふたりに強化術をかけた。
マグロはネニとデコポンのふたりを運んだ。勇者は《青薔薇騎士団》の3人と、カイトとウィザリアの5人をまとめて持ち上げた。
勇者が怪力女だということではなくて、オレの強化術がなせる技である。もう一度言うが、オレの強化術のおかげである。
こうして熟睡している7人の冒険者は、立方体の箱のある部屋へとかためられた。
箱のある部屋というか、本来なら階段があるはずの部屋である。
こうして一部屋に固めていれば、モンスターが出てきても守ることが出来るというわけだ。
「あとはここで待ってれば、救護班が来てくれるはずだな」
「まぁ、そうなんだけど……」
と、勇者は首をかしげた。
「何か問題が?」
「救護班が来たところで、この箱を除けられるのかしらね? 私たちでも除けれないものを、そう簡単に除けれないと思うわ」
「まぁな」
「それにさっきから外が、静かなのよ」
言われてはじめて気づいた。ダンジョンのなかにいても、外の喧騒はかすかに聞こえていたはずだ。実況の声も、さっきから聞こえて来ない。
「外でも、何か起きてるってことか?」
「かもね。そうか、外の声が聞こえないような魔法でもかけられているのか。救護班が来てくれないかもしれない可能性も考慮しておくべきでしょうね」
「最悪だな」
さっさと外に出たいのだが、壁を破壊することも叶わない。
このダンジョンは最古のダンジョンである。他のダンジョンと違って、世界でもっとも硬い塔と言われているのだ。傷つけることすら容易ではない。
「そもそも、この箱は何なのよ?」
と、勇者はロングソードの剣先で、箱を突いていた。
「オレもわからん。強化術をかけて、マグロに斬ってもらったが、傷ひとつつかなかった」
「あんたの強化術でもってしても、傷つかないなんて、相当ね。そんなシロモノこの世界に、あんまりないわよ」
「え? 今なんて言った?」
「そんなシロモノこの世界にないって言ったのよ」
「いや、もうちょい前」
「えっと……、そもそもこの箱は何なのよって、言ったけど。それがどうかしたかしら?」
と、勇者は不可解な表情で尋ねてきた。
「いや、もうちょい後」
「だから、こんなシロモノあんまりない――って言ったのよ」
「いや、もうちょい前に、もっと大事なこと言っただろッ」
「言ってないわよ!」
怒鳴ったら、怒鳴り返してきた。
あんたの強化術でもってしても傷つかないなんて。オレの耳が正常に働いているなら、たしかそう言っていた。
ふふっ。なんだかんだ言って、この勇者。オレのことを認めているのだ。
これは勇者が見せたほころびである。
いまなら押せるッ。
「話は変わるが勇者よ」
「なによ」
「そろそろ、オレにあのセリフを言うべきなんじゃないのかな?」
「あのセリフって何よ」
「だから、オレが抜けて勇者パーティは困ってるんだろ? 優れた強化術師が恋しくなってるんだろ? ん?」
戻ってきてください、と言え。
それを言ったときこそ、勇者の最期である。
オレはあのセリフを言ってやるのだ。『今さら戻ってきてくれと言われても、もう遅い!』と。ごめんなさい。追放した私が悪かったんです――と、むせび泣くが良い。
そしてオレは人生ではじめて、勇者に大きなマウントを取ってやるのだ。
そのセリフさえ言うことが出来れば、オレの冒険は終幕である。『魔塔祭典』の結果なんざ二の次だ。
さあ。世界よ。
オレにハッピーエンドを見せてくれ。
「あんたのほうこそ、勇者パーティに戻って来たいなら、素直にそう言えば良いじゃない。そんな迂遠な言い回しじゃわかんないわよ」
ん?
もしかしてこの勇者、オレがパーティに戻りたいと思ってるのか?
そう思っているなら、それは致命的な勘違いである。
まぁ、たしかにオレがいなくても勇者が無事にやっているのか、気にかかることはある。それは認めざるを得ない。しかしそこは心を鬼にしなければならない。
すべては『今さら戻ってきてくれと言われても、もう遅い』のためである。それにしてもこのセリフ、かなり長い。いちいち胸裏で呟くのもメンドウになるほどだ。
イザ口を開けて言うとなったら、口の中が乾燥して仕方がないことだろう。
「まったくいつまで意地張ってるんだか。パーティに戻らせてください、って頭を下げるなら、勝手に私のプリンを食べたことを許してあげても良いわよ」
「意地を張ってるのは、そっちだろうがッ」
「はぁ? 私はぜんぜん意地なんて張ってませんが!」
顔を突き合わせてにらみ合うことになった。
「あ、モンスターが出てきたのですよ」
とマグロが言う。
たしかに壁からゴブリンが生み出されていた。
「邪魔が入ったな」
「ええ。そうね。ぶっ殺すわよ」
オレの強化術を受けた勇者が、ゴブリンを瞬殺していった。
ふたりに強化術をかけた。
マグロはネニとデコポンのふたりを運んだ。勇者は《青薔薇騎士団》の3人と、カイトとウィザリアの5人をまとめて持ち上げた。
勇者が怪力女だということではなくて、オレの強化術がなせる技である。もう一度言うが、オレの強化術のおかげである。
こうして熟睡している7人の冒険者は、立方体の箱のある部屋へとかためられた。
箱のある部屋というか、本来なら階段があるはずの部屋である。
こうして一部屋に固めていれば、モンスターが出てきても守ることが出来るというわけだ。
「あとはここで待ってれば、救護班が来てくれるはずだな」
「まぁ、そうなんだけど……」
と、勇者は首をかしげた。
「何か問題が?」
「救護班が来たところで、この箱を除けられるのかしらね? 私たちでも除けれないものを、そう簡単に除けれないと思うわ」
「まぁな」
「それにさっきから外が、静かなのよ」
言われてはじめて気づいた。ダンジョンのなかにいても、外の喧騒はかすかに聞こえていたはずだ。実況の声も、さっきから聞こえて来ない。
「外でも、何か起きてるってことか?」
「かもね。そうか、外の声が聞こえないような魔法でもかけられているのか。救護班が来てくれないかもしれない可能性も考慮しておくべきでしょうね」
「最悪だな」
さっさと外に出たいのだが、壁を破壊することも叶わない。
このダンジョンは最古のダンジョンである。他のダンジョンと違って、世界でもっとも硬い塔と言われているのだ。傷つけることすら容易ではない。
「そもそも、この箱は何なのよ?」
と、勇者はロングソードの剣先で、箱を突いていた。
「オレもわからん。強化術をかけて、マグロに斬ってもらったが、傷ひとつつかなかった」
「あんたの強化術でもってしても、傷つかないなんて、相当ね。そんなシロモノこの世界に、あんまりないわよ」
「え? 今なんて言った?」
「そんなシロモノこの世界にないって言ったのよ」
「いや、もうちょい前」
「えっと……、そもそもこの箱は何なのよって、言ったけど。それがどうかしたかしら?」
と、勇者は不可解な表情で尋ねてきた。
「いや、もうちょい後」
「だから、こんなシロモノあんまりない――って言ったのよ」
「いや、もうちょい前に、もっと大事なこと言っただろッ」
「言ってないわよ!」
怒鳴ったら、怒鳴り返してきた。
あんたの強化術でもってしても傷つかないなんて。オレの耳が正常に働いているなら、たしかそう言っていた。
ふふっ。なんだかんだ言って、この勇者。オレのことを認めているのだ。
これは勇者が見せたほころびである。
いまなら押せるッ。
「話は変わるが勇者よ」
「なによ」
「そろそろ、オレにあのセリフを言うべきなんじゃないのかな?」
「あのセリフって何よ」
「だから、オレが抜けて勇者パーティは困ってるんだろ? 優れた強化術師が恋しくなってるんだろ? ん?」
戻ってきてください、と言え。
それを言ったときこそ、勇者の最期である。
オレはあのセリフを言ってやるのだ。『今さら戻ってきてくれと言われても、もう遅い!』と。ごめんなさい。追放した私が悪かったんです――と、むせび泣くが良い。
そしてオレは人生ではじめて、勇者に大きなマウントを取ってやるのだ。
そのセリフさえ言うことが出来れば、オレの冒険は終幕である。『魔塔祭典』の結果なんざ二の次だ。
さあ。世界よ。
オレにハッピーエンドを見せてくれ。
「あんたのほうこそ、勇者パーティに戻って来たいなら、素直にそう言えば良いじゃない。そんな迂遠な言い回しじゃわかんないわよ」
ん?
もしかしてこの勇者、オレがパーティに戻りたいと思ってるのか?
そう思っているなら、それは致命的な勘違いである。
まぁ、たしかにオレがいなくても勇者が無事にやっているのか、気にかかることはある。それは認めざるを得ない。しかしそこは心を鬼にしなければならない。
すべては『今さら戻ってきてくれと言われても、もう遅い』のためである。それにしてもこのセリフ、かなり長い。いちいち胸裏で呟くのもメンドウになるほどだ。
イザ口を開けて言うとなったら、口の中が乾燥して仕方がないことだろう。
「まったくいつまで意地張ってるんだか。パーティに戻らせてください、って頭を下げるなら、勝手に私のプリンを食べたことを許してあげても良いわよ」
「意地を張ってるのは、そっちだろうがッ」
「はぁ? 私はぜんぜん意地なんて張ってませんが!」
顔を突き合わせてにらみ合うことになった。
「あ、モンスターが出てきたのですよ」
とマグロが言う。
たしかに壁からゴブリンが生み出されていた。
「邪魔が入ったな」
「ええ。そうね。ぶっ殺すわよ」
オレの強化術を受けた勇者が、ゴブリンを瞬殺していった。
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