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《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

13-3.この手甲が後々に活躍するんですか?

「さてさて、尋問――否、尋問では生温い。拷問のお時間といこうじゃないか」


「なにをする気だ?」


 ネニの魔法によって、蔓で縛られている男を、オレは見下ろした。覆面をはぎとってみると、意外と柔和な顔立ちの男だった。


 しかしまぁ、人を見た目で判断してはいけない。勇者だってあんなに美人なのに、性格は極悪である。


「深爪にしてやろうか。それとも乾燥した唇の皮をむしってやろうか。眉毛を変な感じに剃ってやろうか。やり方はいろいろとあるが?」


「それは拷問というのか?」
 と覆面男は、しわがれた声で返してきた。


 もう覆面を取っているから、正確にはただの、男、なのだが、もはやもう「覆面男」はニックネームみたいなもんだ。


「ああ。拷問だとも。深爪になると辛いぞ。指先がピリピリするぞ? 唇の皮なんか激痛だろうに。眉毛も変な感じに剃られたらしばらくは、表を歩けないことになる」


「あんまり痛くはなさそうだがな」


「そりゃあんまり痛くしすぎたら、見ているこっちまで痛々しい気持ちになるからな。しかし、オレの質問に素直に応えるのなら、拷問はやめておいてやろう」


「何が訊きたい?」


「お前たちは何者だ? どうしてブルベ王女さまの命を狙う?」


「オレたちは暗黒組合の者だ。雇われた身に過ぎない」


 暗黒組合。
 まさかその名を、こんな形で聞くことになるとは思わなかった。


「雇い主の名は?」


「それは言えん」
 と覆面男はソッポを向いた。


「なるほど。悪党にもプライドがあるということか。なら次の質問だ。その手甲はふつうじゃないな。いったいどこで手に入れたんだ?」


「ただの手甲だ」


「そんなわけないだろ。チョット寄越せ」


「あ、やめろ!」


 奪ってやった。


 覆面男は抵抗したが、ネニの発生させた蔓によって、覆面男の手足は縛られている。そのため簡単に奪うことが出来た。


 灰色がかった手甲だ。見た感じでは変わったところはないのだが、異様に頑丈である。ノックするように指で叩いてみると、カンカンと硬い感じの音がする。


「よし、この手甲はオレがもらっておいてやろう」


「なに? よせ! 勝手に奪うなんて、悪人のやることだぞ!」


「人聞きの悪いことを言うな。ただの手甲なら別にもらっても良いだろう。ってか、悪人はお前らだからな」


 自分の手にはめてみた。けっこうシックリくる。べつにオレは前線で戦うわけじゃないけど、あればカッコウ良い。


「くそぅ。この盗人め」


「この程度の手甲でわめくんじゃないよ。お前たちはもっと重要な物品を盗んだだろう。オレはそれについて聞き出したいのだ」


「重要な物品だと?」


「そうだ」
 と、オレは屈みこんだ。
 覆面男との顔の距離が近くなる。覆面男は鬼気迫った表情で、オレを見あげてきた。


「パンツだよ」


「なに?」


「ブルベ王女は、パンツが紛失したと言っておられた。お前たちが盗んだんだろ?」


「それは……」


「誰が持っているんだ? 持っているなら、すぐさまオレに渡してもらおうか? えぇ? どんな色でどんな柄のものだった? 洗った後の物だったのか? まさか洗う前の物じゃないだろうな?」


 おい、しゃべるなよ――と他の男たちが言った。
 オレは睨んで、それを黙らせた。


吐露ゲロっちまえよ。深爪にされたくはないだろ? 生えそろうまで苦しいぞ」


「雇い主さまの手元にあるはずだ。それ以上は言えん」
 とのことだった。


 チクショウ。


 どうやらこの雇われた男たちの手元には、ないようだ。
 あわよくばオレが貰い受けようと思っていたのに。


 ☆


 翌朝。
 王女を城まで送って、不審者たちを王国騎士団に突き出すことにした。あとは騎士団の尋問によって、雇い主の名は明かされることになるだろう。


 城。
 城門棟前。


 すでにブルベは多くの騎士に囲まれていた。姫さまが急に消えたということで、城のほうは大騒動だったようだ。


「どうもお世話になりました。私のことを守ってくださり、ありがとうございました」


「もう良いんですか? まだ安心はできませんよ。良ければまだオレたちが護衛しますけど」


 ここでブルベとお別れは、名残惜しい。もうチョットだけ、御一緒したい。


 ネグリジェ越しに押し付けられた、おっぱいの感触が、いまだ鮮明にオレの脳裏に焼き付いていた。


「明日には『魔塔祭典』が行われますし、そろそろ戻らねばなりません。それに捕えた者たちから、雇い主の名を聞き出せば、黒幕の正体も判明するはずですから」


「そうですか」


「報酬の魔結晶のほうは、冒険者ギルドのほうに振りこんでおきます。事件の顛末も、手紙でお伝えしますので」


 そうだ。
 きっと大量の魔結晶が手に入ることだろう。ようやっと《炊き立て新米》も、安泰の暮らしが出来そうだ。


 馬車ぐらいは買えるかもしれない。食べる量を控えるように、マグロに言っておかなければならない。


「お手紙、楽しみにしていますよ」


「あの……」
 と、ブルベは顔を伏せた。


「ん?」


 意を決したように面をあげると、その目には涙がたまっていた。目の下が赤く染まっている。


 はっとした。


 これがウワサに聞くところの、惚れたメスの顔、というヤツなのではないのか! ってことは求婚か! お別れしたくありません。結婚してください。そういう展開なんじゃないのか!


 ならばオスたるオレは、ただ悠然と待つのみである。
 目を閉ざし、両手を広げて、ブルベがこの手の中に跳びこんでくるのを待った。


 ふわっ。
 やわらかい風が、オレのカラダを包み込んだ。


 さあ、跳びこんでくるか! 思っていたのだが、なかなか跳びこんで来ない。


 あれ?
 薄く目を開けると、そこにブルベはいなかった。


「マグロさまの戦い、とっても素敵でしたわ」


 ブルベはオレを通り越して、マグロに抱きついているのである。マグロはブルベの頭をよしよしとナでていた。


「どうも。チョット照れ臭いです」
 と、マグロは顔を赤らめていた。


「それほどの大剣を振ることが出来るなんて、きっとマグロさまは偉大な冒険者さまになりますわね」


「そのつもりにはしているのでありますよ。マグロはこの《炊き立て新米》パーティのリーダーですから」


「たったの1日チョットでしたが、マグロさまたち冒険者との生活は、とってもたのしかったですわ。剣士のマグロさま、盾役のデコポンさま、魔術師のネニさま。えっと……」


「強化術師です」


「そうそう。強化術師のナナシさま。みんな良い人で良かったです」


 あれー。
 おっかしいなぁ。


 たしかに《炊き立て新米》のリーダーは、マグロだ。代表者としてマグロにお礼を言うのが筋なのかもしれない。が、ここはてっきりオレの胸元に跳び込んで来るものだと思っていた。


 オレけっこう活躍してたと思ったんだけどなぁ。オレの印象が、ブルベのなかで薄いような気がしてならない。


「ブルベリア第1王女さま。そろそろ」
 と、王国騎士たちによって、ブルベは保護されていた。


 跳びこんでくるであろうブルベを、抱き留めるように手を広げていたオレが、バカみたいである。不自然に見えないように、何気なく手をもとに戻しておいた。


 こうしてブルベは、城へ入って行った。


「いい王女さまでしたね」
 と、マグロが言う。


「うん。まぁ、そだね」


 これはもしや失恋というヤツかもしれない。
その日の午後には、冒険者ギルドを経由して、《炊き立て新米》には10万ポロムの魔結晶が送られることになった。


 手紙も受け取った。
 そこに事の顛末が記されていた。


 悪党どもの雇い主は、すぐに判明したそうだ。王女のパンツが物的証拠となったということだ。なら、間違いないだろう。パンツを盗むから、そんなことになるのだ。天罰である。ザマァみろ。


 どんなパンツだったのかが気になったのだが、そこは詳細には書かれていなかった。


『魔塔祭典』を中止にしようとした理由だが、どうやらモンスターに肩入れして、冒険者を敵視している組織があるのだそうだ。その組織の物による差し金だったらしい。


『魔物教』
 というのだそうだ。
 なんかの宗教団体だろうか。


 モンスターに肩入れするとか変な思想の連中もいるもんである。


『魔物教』には、マグロさまたちも、お気を付けください――と、ブルベからの手紙は結ばれていたのだった。


 ちなみに、オレへの個人的な愛のメッセージは、手紙には記されていなかった。


 脈無しかもしれん。残念である。


 落ち込んでいても仕方がない。
 気持ちを切り替えていこう。


『魔塔祭典』の前に、一波乱あったわけだが、しかしまぁ、これにて落着である。新しく手甲も獲得ゲットしたことだし、準備は万端。


 勇者も参加している『魔塔祭典』。そこでオレの実力を見せつけてやろうではないか。
 そこでオレは世間からの喝采を浴びることになるだろう。


(あの強化術師すごくないか? 人間のレベルではないぞ。神の領域だ。あれほどの強化術師を追放するなんて、勇者の目も節穴だな。ぜひうちのパーティに来てもらおう。いいや。オレのパーティに来てもらうんだ。ナナシさま、うちのパーティに来てくださいませ)
 となってしまう展開は、目に見えている。


 ブルベはオレへ求婚してくることだろうし、勇者は泣いて謝ってくることだろう。オレは勇者に「もう遅い」と言い放ってやるのだ。


 そしてオレの冒険譚は、ハッピーエンドを迎えるという運びである。


 ふふふ。
 想像するだけでニヤついてしまう。


 イザ。
『魔塔祭典』へ。

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