《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

13-2.悪党は難なく捕まえました!キリッ!

 あきらかに不審者が入り込んでいる。足音がするのだ。おそらく5人以上。


 パンツを盗んだ極悪非道なヤツらをボッコボコにしてやる意気込みだったのだが、イザ不審者を相手にするとなると、気持ちが怯む。


 とにかくブルベの身の安全が第一ということで、オレたちはブルベのいる隣室で待機することにした。


 ブルベはベッドに腰かけていた。


「あれ? ネニは?」


「ネニさまなら、こちらですよ」
 と、ブルベがベッドを指差した。
 天蓋つきのベッドで、熟睡していらした。


「ははぁ。ネニさまは眠っておられますか……じゃねェよッ。なんでお前が寝てるんだよ! ふつうは逆だろ! ブルベが寝てるならわかるが、お前が寝てどうするんだよ!」


「んあ。悪りぃ。寝てたわ」
 と、悪びれる様子なんて微塵もなく、それどころか口の端からヨダレを垂らして、ネニは気だるそうにベッドから抜け出てきた。


 不審者が来るかもしれないってのに、熟睡できる神経がすごい。人狼って、そういうものなんだろうか。


「そこまでだ!」


 バンッと荒々しくトビラが開けられて、覆面の男たちがなだれ込んできた。


 5人いた。


 マグロとデコポンが前衛。オレとネニが後衛。ダンジョンで戦うさいの配置フォーメーションにすぐさま移動した。


 腐っても冒険者であるから、戦闘への気持ちの切り替えは慣れたもんだ。


 ブルベがオレにしがみついてくる。ブルベは寝る前ということで、純白のネグリジェをまとっていた。


 そんな薄い服で抱き着いてくるものだから、おっぱいの感触がもう直である。ふわっふわっ、である。
 あぁ、生きてて良かった。
 もうここで死んでも悔いはない。ヒモになりたい。


「いつまでアホみたいな顔しているんですか。気持ちを切り替えてください」
 と、マグロに指摘された。


 はい。すみません。


「王女さましかいないと思ったんだがな。てめェらは何者だ?」


 覆面の男のなかのひとりが前に出てきて言った。


「オレたちは冒険者だ」


「なんだ、冒険者か。身辺警護に冒険者を雇うとは、相変わらず知恵のたりないお姫さまだぜ」


「おっと、ブルベの悪口はやめてもらおうか。一国の王女の悪口を言う不遜な輩は、このオレが成敗してやろう」


 カッコウのつけどころである。
 ここで鮮やかな悪人どもを退治してしまえば、ブルベはもはやオレにゾッコン。そしてめでたく結婚。


「やれ」
 覆面男はそう言った。


 それを合図に5人の男たちはいっせいにナイフを構えた。跳びかかってくる。


「びえぇぇっ」
 と、怪鳥もビックリな悲鳴をあげて、デコポンが盾をかぶった。


 このロリババア。盾役タンクになろうという気が、マッタク見受けられない。ただ自分の身を守るために、盾をかぶっているだけである。


 いつも、これなのだ。


 しかしまぁ、その情けのない怪音波と、盾をかぶるという奇行は、ゼッタイに人の目を引く。モンスターだってたいていギョッとした顔で、デコポンを見るのだ。


 案の定、覆面男たちはデコポンを前に狼狽えている様子だった。覆面なのでよくわからないけど、ビックリしている感じだ。


 その不意を突いて、マグロが大剣で切り込む。しかしマグロが剣を振れるのは、1日1度か2度が限界だ。


 最近は、体力がついてきたのか、2度振れる日も増えてきている。なににせよオレの強化術が必須である。


「悪魔の心臓。獰猛なる精神。破壊の筋力」


 強化術を付与していくことによって、マグロの大剣は真価を発揮する。


 いちおう相手は人間だ。殺すのはマズイ。あとで殺人の容疑でつかまりたくないし、人が死んでいるところは、あんまり見たくない。


 まぁ、斬り殺してしまうという心配はない。マグロの大剣は切れ味がおそろしく悪い。もはや扱いは鈍器である。マグロに限らず、大剣とはそういう傾向が強い。


「ふははっ。このまま叩き潰されたくなかったら、大人しく観念することだな。悪党どもめ」
 と、オレは挑発してやった。
 オレはみんなの後ろにいるだけだから、気持ちは強く保っていられる。


 マグロが大剣を振り下ろした。
 悪党のひとりが、手の甲でマグロの大剣を受け止めていた。


 受け切れるはずがない。骨がやられちゃったんじゃないかな。しかし悪党の手甲には傷ひとつ、ついていないようだった。


 マグロが後ろに跳びずさった。


「ナナシィ。強化術の手を抜かないでください」


「いや。手加減はしてないよ」


「しかし、あの手甲。傷ひとつつけることが出来ませんが」


「マグロのほうこそ、手を抜いてるんじゃないのか?」


「いえ。ブチ殺してやる勢いでしたが」


 怖いことを言う。
 そうは言っても、相手は人間である。チョットは手加減しているだろう……と思う。


 だが、それにしても、オレの強化術はダンジョンの壁面に穴を開けることすら出来るのだ。その強化術をもってしても、傷ひとつつけられないというのはオカシな話である。


 大剣の振り下ろしを受け止めておいて、平然としているのも妙だ。


「あの手甲、チョット特殊な感じのヤツなのかもな」


「どうしますか?」


 物理ダメージが通らないのならば、魔法の出番だ。


「ネニ!」
 大賢者の午睡。ドラゴンの息吹。
 魔力強化に関係する強化術を施した。


「はいよ」


 ネニは魔法を展開した。足元に草花が生い茂って、覆面男たちをとらえた。


 ネニに関しては、オレの助力なしでも、それなりの魔法を使える。四六時中眠っているという欠点さえなければ、優秀な魔術師なのだ。


 魔法相手には、手甲の頑丈さも意味をなさなかったようだ。ネニの発生させた草花によって、覆面男たちは完全にからめとられていた。


 これにて終幕。


 覆面男たちを、捕えることに見事成功したのだった。――さすがオレである。

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