《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
13-1.寝込みを襲う気なんてありませんよ?
夜。
オレたちは、王女さまの住まう屋敷の部屋を借りることになった。
なんと1人1部屋である。
『魔塔祭典』がはじまれば、王女さまも主催者のひとりとして出席する必要がある。祭典がはじまるまで、警護をして欲しいということだった。
脅迫文を送りつけた人物も『魔塔祭典』をやめさせることが目的のようなので、はじまってさえしまえば、狙われる心配も薄くなることだろう。
「さてさて」
深更のさなか、オレはコッソリと自室を抜け出した。
両手をすりすり、ヨダレをたらたら、向かう先は、王女さまの私室である。
何をしに行くつもりなのかって?
そりゃ警護に決まってるだろう。
決してヤマシイことはない。身辺警護を頼まれてるんだから、警護できる位置にいなければならない。
ブルベの部屋の前で張っておくか。あるいは同じ部屋で待機しておくべきだ。
もっと言うなら、同じベッドに入っておくことが望ましい。添い寝していれば、何かあったときに、すぐ対処できるというものだ。
『魔塔祭典』が行われるのは2日後だ。中止にしなければ殺す――という言葉をありのまま受け取るのならば、今日明日に襲撃して来てもオカシクはない。用心するに越したことはない。
相手は、王女のパンツを盗み出すような冷酷な輩である。人とは思えぬ外道だ。
もしここに押しかけてくるようなことがあれば、ボッコボコにしてやる所存だ。二度と立ち上がれなくなるぐらい痛めつけて、パンツを奪い取ってやるのだ。
そしてオレは、めでたくブルベを救った英雄となり、ブルベもオレにゾッコンというわけである。すばらしい筋書だ。
長い廊下である。
最奥の部屋。ブルベの寝室だ。トビラがある。窓からさしこむ月明かりを受けて、ドアノブが輝いていた。部屋の前、異常なし。
さりとてすでに中で、何か行われているかもしれない。確認しなければならない。ドアノブ、手をかける。トビラにカギはかかっていない。
室内。
足を踏み入れる。
明かりはついていない。が、夜に慣れたオレの目は、部屋をうっすらと見通せた。部屋の中央に天蓋つきのベッドが置かれている。フトンがこんもりと盛り上がっているから、ブルベが眠っているのだろう。
「うおりゃ」
部屋に忍び込もうとすると、すぐ近くから、気合いのこもった声が聞こえた。
頭に強い衝撃があった。よろめく。うつ伏せに倒れたオレの腹に、何か重たいものが、のしかかってきた。
もしや、不審者か。
すでに部屋に忍び込んでいたのだろうか。
不覚をとってしまった。
バチッ。
部屋の明かりがつけられた。
オレにのしかかっているのは、マグロだった。デコポンもいた。明かりをつけたのはデコポンのようだ。
「ぐへぇ。重てぇ」
「マグロは重たくないのでありますよ。女性にたいして、あまりに無神経な物言いであります」
「いや。無神経なのはそっちだからな。なんでイキナリのしかかってくるんだ。しかもオレの頭を殴っただろ」
「不審者がやって来たのではないかと思ったのですよ。もう不審者オーラがバリバリ出ておりましたので」
「なんだお前たちも、見張りに来てたってことかよ」
「すると、ナナシィも見張りに来たのでありましたか?」
「他に理由はないだろ」
「いえ。今晩ナナシィは、王女の寝込みを襲うのではないか――と、マグロは予測しておりましたが」
「ソンナコト、ゼンゼン、思ッテナイヨ」
「思っていたのでありますね。そういうこともあろうかと思って、ブルベ王女には事前に別室へ移ってもらっているのであります」
「なにっ? でもベッドがふくらんでるじゃないか」
「枕を仕込んでいるのであります」
「なんだ。そうだったか」
「どうせ警護するんだから、王女の部屋に行くべきだとか。添い寝してても、警護だから許されるだろうとか――そういうことを考えていたのでしょう」
「ぎくっ」
「あ、今、ぎくっ、って言いましたね?」
「言ってない、言ってない。清廉潔白でつつましいオレが、そんなこと考えるはずないだろ。ってか、いい加減にどいてくれませんかね」
「ぐりぐり」
と、オレの腹にお尻を押し付けてくる。
重たいとしか思わなかったのだが、意外にもマグロのお尻は肉感的だった。ふわふわしてる。なんだか新しい性癖が、こんにちは、してしまいそうだと思った瞬間に、マグロが立ち上がった。
「死ぬかと思った」
「まんざらでもない顔をしてましたが?」
してねぇ、と一蹴しおくことにした。
「それで当の王女さまは、無事なんだろうな? 別室に移したは良いが、そこで襲われてるなんてことないか?」
「となりの部屋ですから、何かあればすぐにわかります。それにネニも待機させておりますので」
「そうか。ネニがいるなら大丈夫だな。――とはならないよ? あいつ大丈夫だろうな? チャント起きてるかな?」
「夜ですし、大丈夫だとは思いますが」
ネニは人狼だ。魔術師のくせに人狼なのだ。夜のほうが目が冴える習性でもあるのかもしれない。
がたっ、1階のほうで物音がした。
「いまなんか下のほうで物音しなかったか?」
「ナナシィ。見に行ってください」
「いや。なんでオレなんだよ。マグロが見に行けよ」
「マグロはひとりで行くのが不安でありますから、ここは頼りがいがあって、たのもしいナナシィが身に行くべきかと思います」
「まぁ、そこまで言うのなら……行っても良いけどさ……」
オレだって不安だ。
「どうしてもって言うのならば、マグロも付いて行っても良いですが」
「まるで他人事みたいに言うけど、いちおうマグロも、ブルベを守るクエスト受けてる当人なんだよ? わかってる?」
マグロはオレの顔を見つめると、不思議そうな表情で首をかしげて見せた。いや。どういう意味の仕草だよ、それは。
大盾をかぶって震えているデコポンも放っておくわけにもいかないので、いっしょに連れて行くことにした。
オレたちは、王女さまの住まう屋敷の部屋を借りることになった。
なんと1人1部屋である。
『魔塔祭典』がはじまれば、王女さまも主催者のひとりとして出席する必要がある。祭典がはじまるまで、警護をして欲しいということだった。
脅迫文を送りつけた人物も『魔塔祭典』をやめさせることが目的のようなので、はじまってさえしまえば、狙われる心配も薄くなることだろう。
「さてさて」
深更のさなか、オレはコッソリと自室を抜け出した。
両手をすりすり、ヨダレをたらたら、向かう先は、王女さまの私室である。
何をしに行くつもりなのかって?
そりゃ警護に決まってるだろう。
決してヤマシイことはない。身辺警護を頼まれてるんだから、警護できる位置にいなければならない。
ブルベの部屋の前で張っておくか。あるいは同じ部屋で待機しておくべきだ。
もっと言うなら、同じベッドに入っておくことが望ましい。添い寝していれば、何かあったときに、すぐ対処できるというものだ。
『魔塔祭典』が行われるのは2日後だ。中止にしなければ殺す――という言葉をありのまま受け取るのならば、今日明日に襲撃して来てもオカシクはない。用心するに越したことはない。
相手は、王女のパンツを盗み出すような冷酷な輩である。人とは思えぬ外道だ。
もしここに押しかけてくるようなことがあれば、ボッコボコにしてやる所存だ。二度と立ち上がれなくなるぐらい痛めつけて、パンツを奪い取ってやるのだ。
そしてオレは、めでたくブルベを救った英雄となり、ブルベもオレにゾッコンというわけである。すばらしい筋書だ。
長い廊下である。
最奥の部屋。ブルベの寝室だ。トビラがある。窓からさしこむ月明かりを受けて、ドアノブが輝いていた。部屋の前、異常なし。
さりとてすでに中で、何か行われているかもしれない。確認しなければならない。ドアノブ、手をかける。トビラにカギはかかっていない。
室内。
足を踏み入れる。
明かりはついていない。が、夜に慣れたオレの目は、部屋をうっすらと見通せた。部屋の中央に天蓋つきのベッドが置かれている。フトンがこんもりと盛り上がっているから、ブルベが眠っているのだろう。
「うおりゃ」
部屋に忍び込もうとすると、すぐ近くから、気合いのこもった声が聞こえた。
頭に強い衝撃があった。よろめく。うつ伏せに倒れたオレの腹に、何か重たいものが、のしかかってきた。
もしや、不審者か。
すでに部屋に忍び込んでいたのだろうか。
不覚をとってしまった。
バチッ。
部屋の明かりがつけられた。
オレにのしかかっているのは、マグロだった。デコポンもいた。明かりをつけたのはデコポンのようだ。
「ぐへぇ。重てぇ」
「マグロは重たくないのでありますよ。女性にたいして、あまりに無神経な物言いであります」
「いや。無神経なのはそっちだからな。なんでイキナリのしかかってくるんだ。しかもオレの頭を殴っただろ」
「不審者がやって来たのではないかと思ったのですよ。もう不審者オーラがバリバリ出ておりましたので」
「なんだお前たちも、見張りに来てたってことかよ」
「すると、ナナシィも見張りに来たのでありましたか?」
「他に理由はないだろ」
「いえ。今晩ナナシィは、王女の寝込みを襲うのではないか――と、マグロは予測しておりましたが」
「ソンナコト、ゼンゼン、思ッテナイヨ」
「思っていたのでありますね。そういうこともあろうかと思って、ブルベ王女には事前に別室へ移ってもらっているのであります」
「なにっ? でもベッドがふくらんでるじゃないか」
「枕を仕込んでいるのであります」
「なんだ。そうだったか」
「どうせ警護するんだから、王女の部屋に行くべきだとか。添い寝してても、警護だから許されるだろうとか――そういうことを考えていたのでしょう」
「ぎくっ」
「あ、今、ぎくっ、って言いましたね?」
「言ってない、言ってない。清廉潔白でつつましいオレが、そんなこと考えるはずないだろ。ってか、いい加減にどいてくれませんかね」
「ぐりぐり」
と、オレの腹にお尻を押し付けてくる。
重たいとしか思わなかったのだが、意外にもマグロのお尻は肉感的だった。ふわふわしてる。なんだか新しい性癖が、こんにちは、してしまいそうだと思った瞬間に、マグロが立ち上がった。
「死ぬかと思った」
「まんざらでもない顔をしてましたが?」
してねぇ、と一蹴しおくことにした。
「それで当の王女さまは、無事なんだろうな? 別室に移したは良いが、そこで襲われてるなんてことないか?」
「となりの部屋ですから、何かあればすぐにわかります。それにネニも待機させておりますので」
「そうか。ネニがいるなら大丈夫だな。――とはならないよ? あいつ大丈夫だろうな? チャント起きてるかな?」
「夜ですし、大丈夫だとは思いますが」
ネニは人狼だ。魔術師のくせに人狼なのだ。夜のほうが目が冴える習性でもあるのかもしれない。
がたっ、1階のほうで物音がした。
「いまなんか下のほうで物音しなかったか?」
「ナナシィ。見に行ってください」
「いや。なんでオレなんだよ。マグロが見に行けよ」
「マグロはひとりで行くのが不安でありますから、ここは頼りがいがあって、たのもしいナナシィが身に行くべきかと思います」
「まぁ、そこまで言うのなら……行っても良いけどさ……」
オレだって不安だ。
「どうしてもって言うのならば、マグロも付いて行っても良いですが」
「まるで他人事みたいに言うけど、いちおうマグロも、ブルベを守るクエスト受けてる当人なんだよ? わかってる?」
マグロはオレの顔を見つめると、不思議そうな表情で首をかしげて見せた。いや。どういう意味の仕草だよ、それは。
大盾をかぶって震えているデコポンも放っておくわけにもいかないので、いっしょに連れて行くことにした。
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