《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
12-2.王女さまでしたか。……王女さまァ?
「んしゃんしゃッ」
「バクバク」
「んぐんぐッ」
屋敷の食堂。
長机のうえに、白いテーブルクロスが敷かれている。
そのうえにクッキーが並べられていた。
依頼主の女性が焼いてくれたのだ。
それを片っ端から、マグロたちは貪るように食っていた。礼儀知らずを通り越して、もはや節操がない。
同席しているオレまで同類だと思われてはかなわない。オレは2、3枚だけいただくことに留めておいた。
「みなさん、よく食べるのですね」
さいわいなことにドンビキされるようなことはなく、女性はむしろ嬉しそうに笑っていた。
笑うと頬がすこし赤くなるところも可憐だ。結婚しましょう、と切り出したい。しかしオレの備え盛った謙虚さが、それを邪魔してしまう。
「あ……えっと……その……」
上手く言葉が出て来ない。
「どうかされましたか?」
「あ、いえ。しかし庭の手入れだけで、3万ポロムだなんて、ずいぶんと破格ですね。何か事情があるのなら、お聞きしますよ」
「もしかして、足りませんでしたか? 相場がどれほどなのか、わからないもので」
「いえ。充分すぎるぐらいです」
少女の美しさに見とれて、つい率直な感想を述べてしまった。
相場がわからないのならば、もう少し吊り上げれば良かった。
こういう時に、持ち前の性格の好さが出てしまうのだ。まったくオレってヤツは。
「こうして見ているかぎり、あなたがたは悪い人ではなさそうですね」
「ええ。品行方正で、善良で有名なパーティですからね。まぁ、チョット取り乱してしまうところもあるみたいですが」
うめぇぇぇッ、と3人は焼き菓子を食べ続けている。
この3人には遠慮というものがないのだろうか。人間として、大切ななにかが欠落しているに違いない。すこしはオレを見習ってもらいたい。
「あなたがたは、どうして私の依頼を受けてくださったのですか?」
「あんた、そりゃ支払いが良い……ゲフッ」
対面に座っているネニが余計なことを言おうとしたので、机の下で脛を蹴っておいてやった。
「そりゃあ、オレたち冒険者は、困っている人がいたら放っておけないんですよ。人の役に立ちたいと常日頃から思っているんです」
「まぁ、ご立派なのですね」
「いえいえ。たいしたことではありませんよ」
耳を澄ませば、好感度の上がる音が聞こえてきそうだ。
「実は私、このナロン王国の第一王女をしております。ブルベリア・ナロンと申します」
「ああ。そうでしたか。王女さまですか……。って、王女さまァァッ」
マグロたちも咳き込んでいた。
なるほど。
このあふれ出る気品は、王女がゆえに発せられるものだったか。マグロが見たことがあると言っていたのも納得だ。
「申し訳ありません。驚かせてしまいましたね」 と、ブルベリア王女さまは、イタズラっぽく肩をすくめていた。
「ど、どうして王女さまが、こんなところに? っていうか、どうして冒険者なんかに庭の手入れを頼んだんです?」
謎だ。
人手なら、有り余ってることだろう。
「実は……身内から命を狙われているのです」
ブルベリア王女さまは暗澹とした表情で、そう切り出した。
ブルベリア王女は、何者かから命を狙われている。ここ数日、気も休まらない生活を送っていた、ということだった。
そこで人目をしのんで、こうして別宅で休養をとっているらしい。
誰を信用すれば良いのかわからないので、完全なる部外者である冒険者を雇おうと決めた、のだそうだ。
「それで、庭イジリの依頼をさせていただきました。その様子を見て、信用できる人か、確かめようとかと思いまして。ホントウは庭の手入れではなくて、私の身辺警護を頼みたいのです」
「じゃあ、オレたちは信用に値する、ということでしょうか?」
「荒れくれているわけではないですし、なにより私の命を狙うような人たちでは、なさそうですから」
さすが王女。
ちゃんとした教育を受けた人には、ヤッパリ立派な人間が見抜けるわけだ。
「身辺警護ですか。ええ。お任せください。ただチョット場合によっては、追加の魔結晶をいただくことになるとは思いますが」
王女の顔がパッと晴れた。
「わぁ。良い人たちで助かりました。魔結晶のことなら心配ありません。いくらでも出しますよ」
「バクバク」
「んぐんぐッ」
屋敷の食堂。
長机のうえに、白いテーブルクロスが敷かれている。
そのうえにクッキーが並べられていた。
依頼主の女性が焼いてくれたのだ。
それを片っ端から、マグロたちは貪るように食っていた。礼儀知らずを通り越して、もはや節操がない。
同席しているオレまで同類だと思われてはかなわない。オレは2、3枚だけいただくことに留めておいた。
「みなさん、よく食べるのですね」
さいわいなことにドンビキされるようなことはなく、女性はむしろ嬉しそうに笑っていた。
笑うと頬がすこし赤くなるところも可憐だ。結婚しましょう、と切り出したい。しかしオレの備え盛った謙虚さが、それを邪魔してしまう。
「あ……えっと……その……」
上手く言葉が出て来ない。
「どうかされましたか?」
「あ、いえ。しかし庭の手入れだけで、3万ポロムだなんて、ずいぶんと破格ですね。何か事情があるのなら、お聞きしますよ」
「もしかして、足りませんでしたか? 相場がどれほどなのか、わからないもので」
「いえ。充分すぎるぐらいです」
少女の美しさに見とれて、つい率直な感想を述べてしまった。
相場がわからないのならば、もう少し吊り上げれば良かった。
こういう時に、持ち前の性格の好さが出てしまうのだ。まったくオレってヤツは。
「こうして見ているかぎり、あなたがたは悪い人ではなさそうですね」
「ええ。品行方正で、善良で有名なパーティですからね。まぁ、チョット取り乱してしまうところもあるみたいですが」
うめぇぇぇッ、と3人は焼き菓子を食べ続けている。
この3人には遠慮というものがないのだろうか。人間として、大切ななにかが欠落しているに違いない。すこしはオレを見習ってもらいたい。
「あなたがたは、どうして私の依頼を受けてくださったのですか?」
「あんた、そりゃ支払いが良い……ゲフッ」
対面に座っているネニが余計なことを言おうとしたので、机の下で脛を蹴っておいてやった。
「そりゃあ、オレたち冒険者は、困っている人がいたら放っておけないんですよ。人の役に立ちたいと常日頃から思っているんです」
「まぁ、ご立派なのですね」
「いえいえ。たいしたことではありませんよ」
耳を澄ませば、好感度の上がる音が聞こえてきそうだ。
「実は私、このナロン王国の第一王女をしております。ブルベリア・ナロンと申します」
「ああ。そうでしたか。王女さまですか……。って、王女さまァァッ」
マグロたちも咳き込んでいた。
なるほど。
このあふれ出る気品は、王女がゆえに発せられるものだったか。マグロが見たことがあると言っていたのも納得だ。
「申し訳ありません。驚かせてしまいましたね」 と、ブルベリア王女さまは、イタズラっぽく肩をすくめていた。
「ど、どうして王女さまが、こんなところに? っていうか、どうして冒険者なんかに庭の手入れを頼んだんです?」
謎だ。
人手なら、有り余ってることだろう。
「実は……身内から命を狙われているのです」
ブルベリア王女さまは暗澹とした表情で、そう切り出した。
ブルベリア王女は、何者かから命を狙われている。ここ数日、気も休まらない生活を送っていた、ということだった。
そこで人目をしのんで、こうして別宅で休養をとっているらしい。
誰を信用すれば良いのかわからないので、完全なる部外者である冒険者を雇おうと決めた、のだそうだ。
「それで、庭イジリの依頼をさせていただきました。その様子を見て、信用できる人か、確かめようとかと思いまして。ホントウは庭の手入れではなくて、私の身辺警護を頼みたいのです」
「じゃあ、オレたちは信用に値する、ということでしょうか?」
「荒れくれているわけではないですし、なにより私の命を狙うような人たちでは、なさそうですから」
さすが王女。
ちゃんとした教育を受けた人には、ヤッパリ立派な人間が見抜けるわけだ。
「身辺警護ですか。ええ。お任せください。ただチョット場合によっては、追加の魔結晶をいただくことになるとは思いますが」
王女の顔がパッと晴れた。
「わぁ。良い人たちで助かりました。魔結晶のことなら心配ありません。いくらでも出しますよ」
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