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《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

12-1.さすがに蜘蛛食べたりはしないよね?

 ブチッ、ブチッ、ブチッ……。
 マグロが雑草を抜く音が、庭にひびいている。


 庭の手入れというクエストは、べつに怪しいところなどひとつもなかった。御屋敷の雑草を抜くだけの仕事である。


「すごい豪邸なのでありますよ」


「たしかにな。どこぞの貴族の屋敷か何かかな?」


「3万ポロムの魔結晶をくれるのですから、きっと大金持ちに違いないですよ」


 白亜の壁に、青い屋根。3階建てと思われる屋敷だった。
 それ相応に庭も広いのだが、べつに手入れが必要とは思えない。強いて言うならば、花壇周りの雑草が気になるぐらいだ。花壇には何やらよくわからない花が咲いている。


「これで魔結晶をもらえるなら、楽なもんだな。冒険者やっているのがバカらしくなってくるぜ」


 庭師にでも転職しようかしら。


「そう言うなら、ナナシィも手伝ってくださいよ」


「は?」


「ナナシィはさっきから座っているだけで、すこしも雑草を抜いていないのであります」


「だから、オレが強化術かけてやってるだろ。オレのおかげで、みんな疲れないんだからさ」


「この程度のことで強化術は必要ないので、手伝ってください」


「なにを言うかッ。このオレがもしも足腰を痛めでもしたら、どうするんだ。オレは強化術師だからな。体力もなければ筋力もないわけだ。適材適所と言うだろう。ここはマグロたちが抜いて、オレが強化術をかける。それが理想的だろう」


「そうですかねー」
 と、不服そうな顔をしながらも、マグロは手際よく雑草を抜いてくれている。


 汗をかいているようで、マグロの赤い髪がひたいに張り付いていた。


「そう言えばあの人、どこかで見たことがある気がするのでありますが……」


「あの人?」


「ほら、依頼主の女性ですよ」


 屋敷の窓辺にうつる女性を、マグロが指さした。


 マグロたちとそう年齢差はないように見える。肌は透き通るほどに白くて、髪は紫色のショートボブにしていた。
 そしてなにより胸が大きい。コタルディのうえからでもわかるぐらいの巨乳だ。手のひらにおさまりきらないぐらい、ありそうだ。
 勇者とどっちが大きいだろうか。


「知り合いなのか?」


「いえ。知人ではないのですが、どこで見たのか忘れてしまいました」


「ふぅん」


 屋敷のなかで紅茶か何かを飲んでいるようだ。ときおり、こっちを見て、小さく手を振ってくる。
 可愛い。
 なんて楚々たる美少女だろうか。近寄りがたい気品のようなものすら感じる。貴族独特の雰囲気というヤツだろうか。


 あれこそまさに、オレの求めていた少女である。


 このクエストのさいに、何かしらの事故で親しくならぬものだろうか。


 この屋敷に住まう少女ならば、貴族に違いない。庭イジるだけで、魔結晶をくれるんだから、たいそう裕福なのだろう。結婚すればオレも豊かな生活を送れる。


 ヒモになれるかもしれない。
 期待に胸がふくらむ。


「びゃぁぁッ」
 と、デコポンが悲鳴をあげた。


「どうした!」


 もしやモンスターでもまぎれ込んでいたのかと思った。モンスターがダンジョンから出てくることは滅多にない。が、庭イジリにしては、破格の値段である。トンデモナイ落とし穴があってもオカシクはない。


「あれ、あれっ」
 と、デコポンは盾を前方に構えて、アゴをしゃくって見せた。
 デコポンの視線の先には、しかし何もいない。


「なんかいたのかよ?」


「花壇のところを、よく見てみるのじゃ。ヤツがおるのじゃ」


「ヤツ?」


 言われた通り、花壇を注視してみると、1匹、小指の爪ぐらいのサイズの蜘蛛がいた。


「なんだ。ただの蜘蛛じゃないか」


「ワシは、虫が嫌いなのじゃ」
 と、デコポンは盾をかぶって、亀モードに移行してしまった。
 異常なほどのビビりである。


「厳密には、蜘蛛は虫じゃないけどな」


「似たようなもんじゃろうがッ」


「まぁ、そうだが、チャント言っておかないと、君たちにバカにされかねん。しかし、それでよく冒険者やってられるな」


 ダンジョンには、アラクネという、巨大な蜘蛛が出てくることもあるのだ。それを見たらデコポンは失神するんじゃなかろうか。


 このデコポンだって、いまはEランク冒険者である。オレのほうが格下なのは、どうも納得がいかない。
 ちなみに、ここまでの道中のダンジョン攻略で、ネニもEランクに昇格してしまっている。


 オレだけ置き去りである。世の中不公平である。
 こんな世界間違ってる――と声を大にして訴えたい。


「蜘蛛ですね」
 と、マグロが蜘蛛をつまみあげた。


 マグロのほうは、どうやら虫が苦手ではないらしい。マグロはつまみあげた蜘蛛を、ジッと凝視していた。


「お、おい。まさか食うんじゃないだろうな」


「は? マグロのことをなんだと思っているのでありますか? こんなの食べないのですよ」
 と、つまんでいた蜘蛛を放り投げた。


「そりゃ良かった。お前ならやりかねんと思ってな」


「蜘蛛はさすがに身が少なそうですからね」


「ああ。そうだな。蜘蛛は身が少なそうだからな」


 ん?
 そういう問題なの?


「みなさまお疲れさまです。すこし休憩にしませんか?」


 窓を開けて、依頼主の女性がそう呼びかけてきた。

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