《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

11-2.仲良くしたら、話が終わるんですが?

「それで、なんで私たちは王都に来ておるんじゃ?」
 と、デコポンが尋ねてきた。


 冒険者ギルド。エリンギみたいな外観をしているのは、王都も例に漏れない。


 さすが王都と言うべきか、大量の冒険者たちが、ギルドを出入りしていた。「そんなんで戦えんのかよ」と突っ込みたくなるような形状の露出の多い鎧をまとった者から、「なんで町中でそんな重装備なんだよ」と、苦笑してしまうような全身ガチガチに鎧で固めている者もいる。


 ノドの渇きは、都市にある給水泉ですでにうるおしている。


「そりゃ金のため――じゃなくて、『魔塔祭典』があるからに決まってんだろ」


「なんじゃそれは? なんだか怖ろしい響きじゃのぉ」
 と、デコポンは亀みたく、頭を引っ込めていた。


「ほら、見えるだろ。あそこ」


 大通りストリートの先に見える、巨大な塔を指差した。天まで届くかと思われるほど巨大な塔だ。灰色にくすんだ色をしている。


「そりゃ見えておるに決まっておるじゃろう。ここに来る道中に、すでに見えておったわ。ずいぶんとデカいダンジョンじゃなぁ」
 と、デコポンも見上げる。


 デコポンはひたいが広いから、陽光を受けて輝いていた。ペチッ、と叩いてみたくなる。きっと良い音がするだろう。


「最古のダンジョンとか言われてるヤツだ。この世界でイチバン古いダンジョンらしい」


 1000年前からあったと言う者もいる。もっと前よりあったと言う者もいる。人類が誕生する以前からあると言う者もいる。……。正確にはわからないが、とにかく古いダンジョンだ。


 古いくせに、この世界でもっとも硬い塔と言われている。ほかのダンジョンみたく壁に穴を開けたりすることが出来ないのだ。それどころか、傷ひとつつけられないと言われている。


「ほえぇ」


「『魔塔祭典』ってのは、あのダンジョンで冒険者たちが実力を競い合う祭典のことだ。近々、王都であるらしいからな」


 冒険者組合は王国には属さぬ独立した組織だが、王国と冒険者ギルドが結託して主催しているのだと聞いている。まぁ、権利関係のゴタゴタは、オレには関係のない話だ。


「なるほど。それに出場するつもりか。ガンバるのじゃぞ」


「なに他人事みたいに言ってンだよ。デコポンも行くんだよ」


「なにィ、ワシもあのダンジョンに行けと申すか!」


「なんでここまで来て、行かないつもりしてんだッ。ってか、今ワシって言った? ワシって言ったよね?」


 やっぱりロリババァなんじゃないか、とチョット期待してしまう。


「言っておらん。私って言ったんじゃ。この私をロリババァを見るような目で見るでないわ! ともかく、私は宿屋で留守番しておくから、他の者たちで行って来ればよかろう」
 と、デコポンは盾をかぶってしまった。


「ッたく」


 肝心なのはここからなのだ。
 賞金が出る。


 具体的な量は明かされていないが、それはもうトンデモナイ量の魔結晶がもらえるはずだ。ウハウハである。


 さらにその祭典には、勇者も参加する。古くから続く祭典で、歴代最高成績者として勇者の父親の名が残されている。その娘である勇者が出ないはずがない。
 じゃあもうオレたちだって、参加しない手はない。


「ふははっ、勇者を完膚亡きまでに叩きのめしてやるぜェ」
 と、オレの気分テンションは最高潮に達していた。


 魔結晶ももらえて、勇者にも泥を塗れるのだから、一石二鳥である。いや。「お荷物くん」とオレのことをバカにしていた連中を、見返すチャンスでもあるから、一石三鳥である。


今までさんざんオレのことをコケにしてきた世間さまめ、いまに見てろよ。


「誰を完膚亡きまでに叩きのめすって?」


 すぐ後ろ。
 振り返る。


 ブロンドの髪、碧眼、巨乳のトンデモナイ美少女がいたと思って虚を突かれたのだが、よくよく見てみると勇者だった。
 危ねェ。あやうくダマされるところだったぜ。


「出たな! 勇者」


「人をバケモノが出たみたいに言うンじゃないわよ。なんで王都に、あんたがいるのよ」


「『魔塔祭典』に出るからに決まってンだろうが。そっちもそのつもりで、王都に来てるんだろう」


「まあね。私たち冒険者パーティが優勝するのは恒例のことじゃない」
 と勇者、余裕の笑みを浮かべる。


「ところがどっこい、今年はいつもと違う。なぜなら、勇者パーティにはもっとも大事な戦力がいないからな」


「そんなヤツいたかしら?」
 と、勇者はあたりを見回していた。


「ここにいるだろーがッ。自分で追放しておいて、忘れたとか言わせねェーぞッ。今までいたのに、勇者パーティから抜けてるの、オレしかいないだろ!」


「冗談に決まってるでしょ」


 まったく酷い冗談を言うものだ。
 この女には、血が通っていないのかもしらん。まったくもって冷酷である。


「ここでオレが、この最弱パーティを率いて、『魔塔祭典』で優勝するわけだ。そしたら世間はどう思う? ああ強化術師がいなけりゃ、勇者はパーティも微妙なんだな――ってなる。勇者の評判には傷がつき、世間がオレを評価しなしてくれるって……おーいッ」


「お久しぶりなのじゃ、勇者どのーっ。魔結晶ゴーレムの件では、世話になったのじゃ」
「久しぶりだな。勇者さんよ」
「またお会いできて、マグロは光栄であります」


 3人そろって、勇者と楽しそうに話をしている。


「なにしてンだッ。《炊き立て新米》は勇者をギャフンと言わせるためのパーティだろうが。なにを和気藹々としてやがる。コンセプトを忘れるな。コンセプトを!」


 勇者と仲良くしてたら、オレの冒険の意義に関わってくる。憎き勇者にザマァをするためだけの冒険なのだ。


 ここでエンディング迎えちまうぞ!


「うっさいわね。そう怒鳴らないでよ。ナナシィ。あんたが世話になっているのだから、私のほうからも挨拶しておかなくちゃいけないでしょ」


「はぁぁ? お前はオレのお母さんか何かですかッ。そもそもお前まで、ナナシィって呼ぶな!」


「良い仇名じゃないの。ナナシィ」
 と、勇者はニマニマ笑っている。


 ゼッタイ小馬鹿にしてる。


「まあ良い。とにかく――だ。近々行われる『魔塔祭典』で、オレは優勝するからな。首を洗って待ってろよ」


「指を洗って待ってれば良いのかしら?」


「いや。首だつってンだろッ。指を洗ってどーすんだよ! 指洗うなら、手まで洗えや!」


「冗談はさておき、私だってここまでの連勝記録を止めるつもりはないのよ。そっちこそ首を洗って待ってるのね」


「負けるのはそっちだからな。オレは首なんか洗わねェよ」


「えぇっ。チャント洗わないと臭いわよ」


「言葉の例えだろーがっ。話しの流れ的に、そうだっただろ!」


 また痴話ゲンカしてるのじゃ。
 あのふたり仲良いよなぁ。
 マグロたちはお邪魔でしょうか?


 と、3人の声が聞こえてきた。


 どこをどう見れば、これが仲良く見えるというのか、不可解である。まぁ良い。言葉より、行動で示せば良いのだ。


 とにかく、『魔塔祭典』で優勝することが、今回の目的だ。

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