《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
9-1.え? もしかして人狼だったんです?
夕食時――。
3人はいつものように怒濤の食欲を見せていた。最初に見たときはビックリしたが、もはや見慣れた光景だった。何事も慣れるものである。慣れてしまった自分が恐ろしい。
オレは気にかかっていることがあって、あまり食が進まなかった。
まぁ、このスバレイ名物の肉まんじゅうは美味しかった。3つ食べた。3つも食べていれば、一般的には食が進まないとは言わないことに気づいて愕然とした。
ついついマグロたちの食欲を比べてしまっていたようだ。
マグロたちは何か超自然的能力によって太らないようだが、オレの場合はマグロたちと同じだけ食べたら肥満になってしまう。
感化されないように気を付けなければならない。
オレの体重の話はさておき、気にかかっていること――である。
なぜ。
今日オレのことを襲ってきた人狼は、勇者の声を聞いて逃げ出したのだろうか。
襲いたいのならば、2人とも襲えば良かったではないか。
勇者には勝てないとわかっていたから、逃げたんじゃないのか? ってことは、あの人狼は勇者の声を知っている人物ということになるのでは?
さすが名探偵ナナシである。オレさまの灰色の脳細胞は今日も冴えわたっている。
ネニの魔術師のローブに付着していた白銀の毛のことも気にかかっている。なんとなく人狼のものに似ていた気がする。
夜――。
みんなが眠りについた深夜のことだった。
マグロが「ぐおー」と、小熊の唸り声みたいな寝息をたてていた。オレはベッドに横になったまま、意識は保っていた。
深夜にネニがもぞもぞと動き出して、部屋を抜け出して行った。こんな夜更けに、どこへ行くつもりだろうか? トイレだろうか? 気になったので後をつけてみることにした。
ネニは眠ったフリと言っていたけれど、昼間にあれだけ寝ているのは、夜更けに何かしているからではないのか……。
ネニは宿から出て行った。オレも付いて出た。
先に言い訳させてもらうが、変質者をやっているわけではない。チョット気になっていることがあるのだ。これは名探偵の責務である。
夜風が心地良かった。生温かい空気がカラダを愛撫していった。空を見あげれば、月が3つ浮かんでいた。
この世界には、最大で6つの月が浮かぶ。今日は、それが、3つだ。月明かりが闇夜をうすくしてくれていた。おかげでネニを見失うことはなかった。
夜を歩くネニは、月光を受けて白銀の髪を輝かせていた。
ネニは人気のない裏路地へと歩いて行った。惨殺事件が起きているというのに、あまりに危険な行動だ。
止めようかと思ったが、オレが行動するよりも前に、ネニに異変があった。
服を脱ぎはじめたのだ。
「おおっ」
と、思わず声を漏らしてしまった。
魔術師のローブを脱いで、シャツも脱いで、下着だけになった。そしてネニは下着も脱ぎはじめた。
えぇい、クソ。薄暗闇のせいでよく見えない。もっとよく確認しなければいけない。変態ではないぞ。これもまた名探偵の責務なのだ。
あまりに透明感のある肌は、闇のなかでもネニのことをすこし光らせているようにも見えた。しかし、すぐに見惚れてはいられなくなった。
ネニの全身から、毛が生えはじめたのだ。カラダがめきめきと大きくなっていく。あれは――人狼だ。
人狼もとい、ネニは建物の屋根にむかって跳躍した。
おいおい。マジかよ。
なんってこった。
すると、昼のあいだにオレを襲ってきたのは、ネニだったのだろうか。たしかにあのときネニはウンコと言って、その場にはいなかった。
考えている場合じゃない。急いでネニを追いかけよう。
オレひとりでは何もできないかもしれない。だが、ネニが仮に人を襲うのならば、そこには被害者がいるはずである。
被害者に強化術を施すことが出来れば、助けることが出来る。
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