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《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

8-5.そろそろ覚醒してもよくないですか?

 絶体絶命のピンチ。


 オレは人狼ウェア・ウルフと対峙していた。その手からは、凶悪そうな鋭利な爪が伸びていた。惨殺事件の犯人。ゼッタイこいつだ。


 ど、どうする――。
 考えろ。


 IQ100万のオレなら、きっとこの窮地を脱する方法を見出せるはずである。


 真っ向から戦っても勝てる相手ではない。オレは強化術師だ。自分ひとりで倒せるのは、せいぜいスライムぐらいだ。勝機は0である。


 くそぅ。オレが無双系の星のもとに生まれていれば、ここで人狼を倒して万事解決だったのに。こんなときに夢を見ても仕方がない。


 逃げるしかない。逃げ切れるかが問題だ。いや。ムリだ。今までの人たちが惨殺事件の被害に遭っているのならば、オレだけ逃げきれるなんて都合の良いことが起きるはずがない。


 脚だって決して速いほうではないのだ。ってか、足腰が震えて上手く走れる自信もない。


 え?
 じゃあオレ、ここで死んじゃうわけ?


 いやいや。
 それはダメだ。


 まだオレは勇者に『今さら戻って来いと言われても、もう遅い』と言ってないのである。
 せめて目的を遂行するまでは、死ぬわけにはいかない。
 いやいや。目的を遂行したあとでも死ぬわけにはいかない。


 人狼が1歩、歩み寄ってくる。


 そうだ。
 きっと今こそ、オレの真のチカラが目覚めるに違いない。


 今まで役立たずと蔑まれてきた男が、窮地に陥ってチカラに目覚める。
 

 強化術が自分にも使えるようになって、オレは無双系として覚醒するに違いない。


「駿馬の奇跡、金剛鎧付与」


 ためしに強化術をとなえてみたが、ウンともスンとも言わない。


 違うのか。
 じゃあ、きっと前世の記憶が目覚めるはずだ。きっとオレは前世ですごい剣士だったのだ。あるいは魔術師だったとか。まぁ、すごければこのさい暗殺者とか死霊術師とかでも良い。目覚めよ、前世の記憶ッ。


 なんにも思い出さない。


 さらに1歩詰め寄ってくる。
 あーくそ。


 ネニさえ戻ってくれば、すべては解決するのだ。ネニに強化術を付与して、この人狼を倒せば一件落着である。


 まだウンコだろうか。キバってるのだろうか。オレが窮地に陥っているというのに、気楽にウンコとは良い度胸である。こっちは恐怖のあまり漏らしそうになっているというのに。


「ねぇー、どこ行ったのよーっ」
 という声が聞こえた。
 この声は、勇者の声だ。


 勇者の声に反応したようで、人狼はすぐさま逃げ去って行った。


「おや? どうした勇者」
 と、オレはブザマな姿をさらけ出さないように、すぐさま格好ポーズを決めることにした。


 勇者にだけは醜態を見せるわけにはいかない。仮に目撃されようものなら、今後10年はカラカわれるに決まっているのだ。
 壁際に軽くもたれかかって、中指を眉間に当てた。


「あんたが、なかなか裏路地から出て来ないから心配して来たんじゃないの。なんでこんな路地にいるのよ」


「はぁ? そっちこそ。なんで、こんなところにいるんだよ」


「ぐ、偶然よ、偶然。べつにあんたが心配だから、見張ってたとか、決してそんなことはないわよッ。だいたい惨殺事件が起きてるって言うのに、こんな裏路地に入るんじゃないわよッ」


「惨殺事件が起きているから、入ったんじゃないか。そして幸いにも犯人を見つけ出すことが出来た。あと1歩のところで捕えられたのだが、逃げられてしまったようだ」


 おそらく、あと数秒ほど待てば、オレの前世の記憶が覚醒するか、あるいは強化術師として覚醒したはずである。


「はぁ? 犯人に会ったの?」


「人狼だった」


 人狼というのは分類上は、モンスターということになっている。
 だが、通常のモンスターがダンジョンで生み出されるのと違って、人間から生まれてくる。狼になれる人間というだけだ。


 しかしまぁ、人を襲うならモンスターであろうがなかろうが危険な存在である。


「人狼ですって? あんたそんなのに会って戦えたわけ? ひとりだったんでしょ?」


「ま、まぁ」


 勇者が来たから、人狼が逃げたとは言えない。


「あんたは、さっさとこの都市から出て行きなさい」
 と勇者は、オレの胸元を人差し指で突いてそう言ってきた。


「なんで、そんなこと言われなくちゃならないんだ」
 と、その人差し指を払いのけた。


 こちとら「10万ポロム」を狙っているのだ。
そう簡単に出て行くわけにはいかない。今回は上手くいかなかったが、オレが強化できる対象さえいれば、人狼などチョチョイのチョイである。


「なんでって……それはその……。あんたがウロチョロしてたら、こっちが集中できないからでしょうが。私は勇者パーティとして、冒険者ギルドから依頼を受けて調査してるのよ。邪魔されたら、たまったもんじゃないわ」


「ははん。さてはオレに出し抜かれるのを怖れているのだな」


「そんなんじゃないわよ」


「オレが先にあの人狼を捕まえてやる。オレの優秀さを目の当たりにするが良い。せいぜいオレを追放したことを悔いることだな」


 IQ100億のオレにかかれば、人狼などすぐに見つけられる。


「なによ。まだそんなこと言ってるわけ? パーティに戻ってきたいなら、『戻らせてください』って、私に頭を下げれば良いだけでしょう」 と、勇者は腕組みをしてみせた。腕を組むとその大きな乳房が、たゆんと腕に乗っかるようなカッコウになる。


 おのれ、色気で誘惑しようたって、そう簡単にはなびかんぞ。


「誰がお前のパーティに戻りたいなんて言った! オレはただお前に、『戻って来てください』と一言いってもらえれば良いだけだ!」


「あんたのほうこそ、『戻らせてください』って、一言謝れば済む話でしょーがッ」


 グヌヌ。
 この意地っ張りの勇者め。


 なかなか『戻ってきてください』を言おうとしない。それを言ってくれなければ、『今さら戻って来てくれと言われても、もう遅い』が言えないではないか!


 幼きころより、マウントを取りまくってきた勇者を、一度で良いから屈服させてやりたい。そのためには『今さら戻って来てくれと言われても、もう遅い』という伝説のセリフが必要なのだ。


「おおーい」
 と、ネニが戻ってきた。


「人狼って、男だけじゃなくて、女性かもしれないんだからね。それを留意しておきなさいよ」
 と、言い残すと、勇者はその場から立ち去って行った。


 戻ってきたネニの魔術師のローブには、なぜか白銀の毛がいくつも付着していたのを、名探偵であるオレは見逃さなかった。

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