《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
7-1.後衛にたいして厳しくないですかね?
エリンギみたいなギルドの建物は、こうして森のなかにあると、よりいっそうのエリンギ味を増す。
「よーし、オッケー。あとはギルドの職員に任せるとしよう。おつかれー」
と、オレはねぎらいの言葉をかけてやった。
ほかの冒険者たちにも手伝わせて、大量の魔結晶をダンジョンから運び出したのである。騒ぎを聞きつけたようで、ギルドのなかから冒険者たちも顔を覗かせていた。
オレは鼻高々とギルドの中に入った。
魔結晶ゴーレムを倒したということもあって、注目の的である。
冒険者たちはオレが通ると道を開けた。
なんとも心地が良い。
ふはは。
オレを崇めるが良い。このオレこそが、魔結晶ゴーレムを倒したナナシさまだ。
「いらっしゃいませ。Fランク冒険者のナナシ・ゴンベさまですね。すでにウワサで聞いております。魔結晶ゴーレムを倒したとのことですね」
ギルドの受付嬢はなぜか、獣人族が多い。
この娘も、頭からネコ耳を生やしている。きっと冒険者ギルドの採用面接官は、獣人族が好きに違いない。おのれ自分の性癖で、採用しやがって。
「あの大きさの魔結晶を持ち歩くことは出来ませんので、濃度の高い魔結晶に交換してもらいたいんですけど」
「鑑定いたしますので、しばしお待ちください」
「はい」
ギルドは円形の大広間になっており、中央に受付があるというカッコウだ。用意してもらった木造スツールに腰かけて、しばし待たせてもらうことにした。
『あの男って、たしかお荷物くんだろ』
『そうそう。勇者パーティから追放されたって言う』
『だけど、魔結晶ゴーレムを倒すなんて、なかなかの実力だよな』
『これじゃあ、勇者パーティでの評価も不当なものだったのかもな』
と、周囲がオレのウワサでもちきりだった。
称賛の声は、なんと心地が良いのか。もっとホめたたえよ、と心地よくなっているところに、受付嬢が戻ってきた。
「ナナシさま。鑑定が終ったのですが、ひとつ問題がありまして」
「なんですか?」
「どうも魔結晶ゴーレムの傷口などを鑑定しても、強化術師のあなたが倒したようには見えません」
「ええ。それはオレの連れである、デコポンという盾役の娘がトドメをさしたからですね」
「そのデコポンさまは、どちらに?」
「いまは筋肉痛で宿で休んでます」
「あのぉ。討伐した本人がいらしてくれないと、取引はできないのですが……」
と、受付嬢は困惑したような笑みを浮かべている。
「いやいや。オレも討伐にくわわってるんですよ? なんならオレのチカラがあったから、魔結晶ゴーレムを討伐できたんですよ?」
「ですが、直接トドメをさしたのは、デコポンさまなのですよね?」
「それはそうですけど……」
「なら、デコポンさまご本人でないと、取引はしかねます」
一瞬にして、周囲の視線が冷たいものに代わってゆくのを感じた。
『なんだ、あいつが倒したんじゃないのか』『ヤッパリお荷物くんは、お荷物くんね』『あまつさえ、他人の功績を奪おうとするなんてな』……という案配である。
角度90度の急転直下である。なんか雲行きが怪しくなってきた。
「でもオレも《炊き立て新米》パーティの一員なんですよ。本人の代わりに来たってことで良いじゃないですか」
「いえ。倒した本人でないと、取引はできません」
キッパリである。
その態度に、オレもカチンと来てしまった。
前々から、ギルドにたいしては言いたいことがあったのだ。溜まっていたものが、ドカンである。
「あのですね。前々から思ってたんですけど、後衛にたいして厳しくないですかね? 討伐スコアで実力を測るのは、まぁ、わかりやすいんでしょうけど……。回復術師とか不遇じゃないですか?」
「討伐スコアによって、ランキングを作ることによって、冒険者たちの士気を高めているんです」
「そりゃまぁ、そうなんでしょうけど」
そのせいで後衛は、後衛だけに集中できない。回復術師だってポーションを投げたりする戦術をとる必要が出てくる。
「決まりですから。クレームなら別の担当の者がおりますので、そちらに代わります」
「いや、けっこうです」
カチンと来て、ドカンと爆発して、最後はショボンである。
クレームと思われるなんて心外だ。
くそぅ。
このギルドの決まりのせいで、強化術師としてのオレは陽の目を見ることが出来ないのだ。
他のヤツらに戦ってもらって、オレは後ろで楽しようという作戦も上手くいかないのである。
いや。オレが楽できないということは、実はなかなか良い制度なんだろうか?
いやいや。それではまるで強化術師が楽な職業と思われてしまうではないか!
強化術師だってガンバっているのである。
まぁ、今日のところは仕方がない。
「それでは後日、デコポンを連れてきますので、それまで魔結晶のほうを預かっていてもらえますかね? あれ運ぶの大変なんで」
「承知いたしました」
それは本人じゃなくても、良いんだね。思ったけど、口には出さない。余計にミジメになりそうだったし。
「よーし、オッケー。あとはギルドの職員に任せるとしよう。おつかれー」
と、オレはねぎらいの言葉をかけてやった。
ほかの冒険者たちにも手伝わせて、大量の魔結晶をダンジョンから運び出したのである。騒ぎを聞きつけたようで、ギルドのなかから冒険者たちも顔を覗かせていた。
オレは鼻高々とギルドの中に入った。
魔結晶ゴーレムを倒したということもあって、注目の的である。
冒険者たちはオレが通ると道を開けた。
なんとも心地が良い。
ふはは。
オレを崇めるが良い。このオレこそが、魔結晶ゴーレムを倒したナナシさまだ。
「いらっしゃいませ。Fランク冒険者のナナシ・ゴンベさまですね。すでにウワサで聞いております。魔結晶ゴーレムを倒したとのことですね」
ギルドの受付嬢はなぜか、獣人族が多い。
この娘も、頭からネコ耳を生やしている。きっと冒険者ギルドの採用面接官は、獣人族が好きに違いない。おのれ自分の性癖で、採用しやがって。
「あの大きさの魔結晶を持ち歩くことは出来ませんので、濃度の高い魔結晶に交換してもらいたいんですけど」
「鑑定いたしますので、しばしお待ちください」
「はい」
ギルドは円形の大広間になっており、中央に受付があるというカッコウだ。用意してもらった木造スツールに腰かけて、しばし待たせてもらうことにした。
『あの男って、たしかお荷物くんだろ』
『そうそう。勇者パーティから追放されたって言う』
『だけど、魔結晶ゴーレムを倒すなんて、なかなかの実力だよな』
『これじゃあ、勇者パーティでの評価も不当なものだったのかもな』
と、周囲がオレのウワサでもちきりだった。
称賛の声は、なんと心地が良いのか。もっとホめたたえよ、と心地よくなっているところに、受付嬢が戻ってきた。
「ナナシさま。鑑定が終ったのですが、ひとつ問題がありまして」
「なんですか?」
「どうも魔結晶ゴーレムの傷口などを鑑定しても、強化術師のあなたが倒したようには見えません」
「ええ。それはオレの連れである、デコポンという盾役の娘がトドメをさしたからですね」
「そのデコポンさまは、どちらに?」
「いまは筋肉痛で宿で休んでます」
「あのぉ。討伐した本人がいらしてくれないと、取引はできないのですが……」
と、受付嬢は困惑したような笑みを浮かべている。
「いやいや。オレも討伐にくわわってるんですよ? なんならオレのチカラがあったから、魔結晶ゴーレムを討伐できたんですよ?」
「ですが、直接トドメをさしたのは、デコポンさまなのですよね?」
「それはそうですけど……」
「なら、デコポンさまご本人でないと、取引はしかねます」
一瞬にして、周囲の視線が冷たいものに代わってゆくのを感じた。
『なんだ、あいつが倒したんじゃないのか』『ヤッパリお荷物くんは、お荷物くんね』『あまつさえ、他人の功績を奪おうとするなんてな』……という案配である。
角度90度の急転直下である。なんか雲行きが怪しくなってきた。
「でもオレも《炊き立て新米》パーティの一員なんですよ。本人の代わりに来たってことで良いじゃないですか」
「いえ。倒した本人でないと、取引はできません」
キッパリである。
その態度に、オレもカチンと来てしまった。
前々から、ギルドにたいしては言いたいことがあったのだ。溜まっていたものが、ドカンである。
「あのですね。前々から思ってたんですけど、後衛にたいして厳しくないですかね? 討伐スコアで実力を測るのは、まぁ、わかりやすいんでしょうけど……。回復術師とか不遇じゃないですか?」
「討伐スコアによって、ランキングを作ることによって、冒険者たちの士気を高めているんです」
「そりゃまぁ、そうなんでしょうけど」
そのせいで後衛は、後衛だけに集中できない。回復術師だってポーションを投げたりする戦術をとる必要が出てくる。
「決まりですから。クレームなら別の担当の者がおりますので、そちらに代わります」
「いや、けっこうです」
カチンと来て、ドカンと爆発して、最後はショボンである。
クレームと思われるなんて心外だ。
くそぅ。
このギルドの決まりのせいで、強化術師としてのオレは陽の目を見ることが出来ないのだ。
他のヤツらに戦ってもらって、オレは後ろで楽しようという作戦も上手くいかないのである。
いや。オレが楽できないということは、実はなかなか良い制度なんだろうか?
いやいや。それではまるで強化術師が楽な職業と思われてしまうではないか!
強化術師だってガンバっているのである。
まぁ、今日のところは仕方がない。
「それでは後日、デコポンを連れてきますので、それまで魔結晶のほうを預かっていてもらえますかね? あれ運ぶの大変なんで」
「承知いたしました」
それは本人じゃなくても、良いんだね。思ったけど、口には出さない。余計にミジメになりそうだったし。
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