《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

7-1.後衛にたいして厳しくないですかね?

 エリンギみたいなギルドの建物は、こうして森のなかにあると、よりいっそうのエリンギ味を増す。


「よーし、オッケー。あとはギルドの職員に任せるとしよう。おつかれー」
 と、オレはねぎらいの言葉をかけてやった。


 ほかの冒険者たちにも手伝わせて、大量の魔結晶をダンジョンから運び出したのである。騒ぎを聞きつけたようで、ギルドのなかから冒険者たちも顔を覗かせていた。


 オレは鼻高々とギルドの中に入った。


 魔結晶ゴーレムを倒したということもあって、注目の的である。
 冒険者たちはオレが通ると道を開けた。


 なんとも心地が良い。
 ふはは。
 オレを崇めるが良い。このオレこそが、魔結晶ゴーレムを倒したナナシさまだ。


「いらっしゃいませ。Fランク冒険者のナナシ・ゴンベさまですね。すでにウワサで聞いております。魔結晶ゴーレムを倒したとのことですね」


 ギルドの受付嬢はなぜか、獣人族が多い。


 この娘も、頭からネコ耳を生やしている。きっと冒険者ギルドの採用面接官は、獣人族が好きに違いない。おのれ自分の性癖で、採用しやがって。


「あの大きさの魔結晶を持ち歩くことは出来ませんので、濃度の高い魔結晶に交換してもらいたいんですけど」


「鑑定いたしますので、しばしお待ちください」


「はい」


 ギルドは円形の大広間になっており、中央に受付があるというカッコウだ。用意してもらった木造スツールに腰かけて、しばし待たせてもらうことにした。


『あの男って、たしかお荷物くんだろ』


『そうそう。勇者パーティから追放されたって言う』


『だけど、魔結晶ゴーレムを倒すなんて、なかなかの実力だよな』


『これじゃあ、勇者パーティでの評価も不当なものだったのかもな』
 と、周囲がオレのウワサでもちきりだった。


 称賛の声は、なんと心地が良いのか。もっとホめたたえよ、と心地よくなっているところに、受付嬢が戻ってきた。


「ナナシさま。鑑定が終ったのですが、ひとつ問題がありまして」


「なんですか?」


「どうも魔結晶ゴーレムの傷口などを鑑定しても、強化術師のあなたが倒したようには見えません」


「ええ。それはオレの連れである、デコポンという盾役の娘がトドメをさしたからですね」


「そのデコポンさまは、どちらに?」


「いまは筋肉痛で宿で休んでます」


「あのぉ。討伐した本人がいらしてくれないと、取引はできないのですが……」
 と、受付嬢は困惑したような笑みを浮かべている。


「いやいや。オレも討伐にくわわってるんですよ? なんならオレのチカラがあったから、魔結晶ゴーレムを討伐できたんですよ?」


「ですが、直接トドメをさしたのは、デコポンさまなのですよね?」


「それはそうですけど……」


「なら、デコポンさまご本人でないと、取引はしかねます」


 一瞬にして、周囲の視線が冷たいものに代わってゆくのを感じた。


『なんだ、あいつが倒したんじゃないのか』『ヤッパリお荷物くんは、お荷物くんね』『あまつさえ、他人の功績を奪おうとするなんてな』……という案配である。


 角度90度の急転直下である。なんか雲行きが怪しくなってきた。


「でもオレも《炊き立て新米》パーティの一員なんですよ。本人の代わりに来たってことで良いじゃないですか」


「いえ。倒した本人でないと、取引はできません」


 キッパリである。


 その態度に、オレもカチンと来てしまった。


 前々から、ギルドにたいしては言いたいことがあったのだ。溜まっていたものが、ドカンである。


「あのですね。前々から思ってたんですけど、後衛にたいして厳しくないですかね? 討伐スコアで実力を測るのは、まぁ、わかりやすいんでしょうけど……。回復術師とか不遇じゃないですか?」


「討伐スコアによって、ランキングを作ることによって、冒険者たちの士気を高めているんです」


「そりゃまぁ、そうなんでしょうけど」


 そのせいで後衛は、後衛だけに集中できない。回復術師だってポーションを投げたりする戦術をとる必要が出てくる。


「決まりですから。クレームなら別の担当の者がおりますので、そちらに代わります」


「いや、けっこうです」


 カチンと来て、ドカンと爆発して、最後はショボンである。


 クレームと思われるなんて心外だ。


 くそぅ。


 このギルドの決まりのせいで、強化術師としてのオレは陽の目を見ることが出来ないのだ。


 他のヤツらに戦ってもらって、オレは後ろで楽しようという作戦も上手くいかないのである。


 いや。オレが楽できないということは、実はなかなか良い制度なんだろうか?


 いやいや。それではまるで強化術師が楽な職業と思われてしまうではないか!
 強化術師だってガンバっているのである。


 まぁ、今日のところは仕方がない。


「それでは後日、デコポンを連れてきますので、それまで魔結晶のほうを預かっていてもらえますかね? あれ運ぶの大変なんで」


「承知いたしました」


 それは本人じゃなくても、良いんだね。思ったけど、口には出さない。余計にミジメになりそうだったし。

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