《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
3-3.まだ戻ってこいって言われてないよ?
筋肉痛で動けなくなったマグロを背負って、オレはダンジョンを後にすることにした。マグロは疲れたのか、オレの背中で眠りこけているようだ。この様子だとお尻を触ってもバレなさそうだ。
女の子のカラダっていうのは、マシュマロみたいにやわらかい。
丘陵のなかに伸びる街道を歩いて、都市ヴァレリカまで戻ることにした。
「マグロを助けてくれて、ありがとう」
と、ニワトリ男が礼を言ってきた。
真っ赤なトサカが、夕日を受けてますますトサカに見えた。
「テッキリ仲が悪いのかと思ってたよ」
「いや。オレはただマグロには冒険者になって欲しくなかったから、突き放したんだ。冒険者って死んだりしちゃうだろ」
ウソではないだろう。
ニワトリ男は身をていして、マグロのことをスケルトン・デスロードから助けようとしたのだ。
「本人は、置いて行かれたと思ってたみたいだぜ。チャント連れてってやれよ。マグロは良いヤツだ」
「ああ」
背負っていたマグロを、ニワトリに押し付けた。
あーあ。
手駒になってくれそうな人材だったのに、惜しいことをした。マグロは《羽毛より羊毛》パーティに戻るのかもしれない。
本人も戻りたいと言っていた。
じゃあ残されたネミとデコポンはどうするのだろうか。まぁ、べつにオレの考えるところではない。どうにかするんだろう。
都市。ギルドに戻る。
オレはスケルトン・デスロードの素材を回収できるだけ、回収してきた。そこのところ抜かりはない。
むろんニワトリ男にもマグロにも譲るつもりはない。
3000ポロムの魔結晶と交換してもらうことが出来た。コブシ大ほどの魔結晶が、30個ほどである。くわえて、スケルトン・デスロード自身が落とした魔結晶もある。
しばらくは生活していけそうだ。
スライムの粘液集めのほうは、ニワトリ男が達成することになったようだ。
それにしても、そろそろ勇者たちが、「ヤッパリ戻って来てくれ」と言ってくるはずなのだが、いまだにその気配はない。
オレがいないあのパーティが、上手いことやっていけるはずがない。ならばなぜ、再勧誘の気配がないのか。
ははん。
さては今頃、『ナナシに戻って来てもらうか?』『でも、追放したヤツに頭を下げるなんてゴメンだ』と懊悩しているに違いない。
こんなに優秀なオレを追放するなんて、あの愚か者たちめ。せいぜい悔やむと良いさ。ははは……。はは……。はぁ。
とりあえず、宿に戻ろう。
デコポンとネニにも、マグロのことを説明しなくちゃならないし、何よりあの女の子たちを、このまま手放してしまうのも惜しい。
マグロがいなくても、あの2人をオレの駒にできるかもしれない。
宿。
「うぉぉぉぉッ」
「バクバクバク、んぐんぐっ」
「むしゃむしゃむしゃ」
怒濤のような咀嚼音のお出迎え。メッチャ既視感!
デコポンとネニとマグロの3人組が、木造テーブルを陣取って、肉やら魚を食い散らかしていた。
「お前ら、メッチャ食うな! 特にそこの2人は、今日1日寝てただけだろうが!」
「んぐんぐんぐ」
「幸せそうだな。おい! で、マグロはなんでここにいるんだよ。《羽毛より羊毛》パーティに戻りたいって言ってたじゃないかよ」
「追い出されました」
「なんだ? また追放されたのかよ。あのニワトリ男、ぜんぜん反省してねェな。今度はどんな理由で追放されたんだ? オレが仲介に入ってやるよ」
デコポンとネニのふたりは木造スツールに腰かけていたが、マグロは長椅子だった。となりが空いていた。そこに腰かけることにした。
「これだけ食うヤツを、まかなう余裕は、《羽毛より羊毛》パーティには、ないということであります。もぐもぐ。酷いのでありますね。んぐんぐ」
と、マグロはサツマイモのハチミツ煮にかぶりついていた。
「いや、メッチャ正論だなッ」
「そういうわけで、マグロはこの《炊き立て新米》パーティでガンバっていくのでありますよ。マグロの作ったパーティですし、こっちの仲間も放ってはおけないのです」
「それは良い心がけだがな。今日の食費は大丈夫なんだろうな? なんか3人とも昨晩より食ってないか?」
この皿の山はなんだ? なにを注文しやがった? 20枚ほど重なっている。
「食費の心配はありません」
「払えるだけの魔結晶があるんだろうな?」
「はい。スケルトン・デスロードの素材と、ヤツの落とした魔結晶を、ナナシィが持ち帰ったと聞いておりますので」
「いや、あれは今後の生活のためにだな……」
「強化術のおかげとはいえ、マグロも働いたのです。全身の筋肉痛を治すためにも、イッパイ食べる必要があるのですよ」
おかわりッ、とさらに注文していた。
当初の予定では、新米冒険者たちにあがめられて、チヤホヤされてヒモみたいな生活をする予定だった。が、現実は非情である。
なんだかオレが生活費を稼いでるみたいになってない? まぁ、たしかにマグロの活躍があってこそなんだけどさ……。
「ナナシィ」
と口の周りに食べかすをイッパイつけたマグロが、オレのほうに向きなおってそう呼んできた。
「なんだ?」
「今日はありがとうございました。これからもよろしくなのですよ」
「お、おう。オレのほうこそな」
マグロは照れ臭かったのか、あわてたようにまた食事に戻っていた。まぁ、悪くない気分だ。
こうなりゃヤケだ。
オレも食事にありつくことにした。
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