《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。

執筆用bot E-021番 

2-4.ニワトリとマグロは、幼なじみです!

 ニワトリ男と言うと、雄ニワトリそのものを想像する人が多いかもしれない。あながち間違いではないのだが、すこし違う。


 ニワトリみたいな頭の男である。左右の頭髪を剃りあげており、真ん中だけ残している。それが赤いので、トサカにしか見えないのだ。いまにもコケコッコーとか言いだしそうな風貌である。


「あぁっ?」
 と、ニワトリが凄んできた。


「あ、すみません」
 と、オレは引き下がることにした。


 ニワトリみたいな髪型をしているヤツなんて、どうせロクなヤツじゃない。相手にしないほうが良い。


 臆病チキンだと思われるかもしれないが、誤解しないでもらいたい。チキンは相手のほうである。


 オレは、つつましい男なのだ。


 セッカク支払いの良さそうなクエストを見つけたが、他もまだあるだろうと楽観していた。
 が、しかし。


「なに横取りしてるんですか。それはマグロたちが先に見つけたクエストなのでありますよ」
 と、マグロが口を出した。


「あァ? なに言ってやがるんだ。このザコが。ザコ冒険者がダンジョンに行こうとするんじゃねェよ」


 そうだぞ。マグロ。
 身の程を弁えろよな。


 どう見ても相手の柄が悪いんだから、ケンカになったりしたら、最悪なんだからな。オレはマジでケンカに弱い。


 殴ったこともないし、殴られたこともない。余計なトラブルを起こす前に引き下がるのが吉……。


「何言ってるんですか。このニワトリ頭が。マグロはこれから優秀な冒険者になるのですよ」


 言っちゃったよー。
 ニワトリ頭って言っちゃったよーっ。


「ンだと、オレのことニワトリ頭って言うなって言ってるだろーがッ」
 と、男はマグロの胸ぐらをつかんでいた。


 この男、ニワトリみたいな頭は、わざとやってるんじゃないのかーっ。気にしてるのかよ。じゃあなんで、そういう髪型をしてるんだ? まさかハゲか? 前から来るタイプじゃなくて、左右から来るタイプなのか? ハゲは前か後ろから来るもんだと相場が決まってるもんだ。新種か?


 とにかく。
 胸ぐらをつかまれているマグロを助けてやる必要がある。


「あー、コホン。うちのマグロが失礼いたしました」


「はぁ? 他人が口出しすんじゃねェ」


「そうでありますよ。他人が口出しすんじゃねェ、です」


 ふたりからそう言われた。ニワトリ男から言われるならまだしも、マグロからも言われた。


 いやいや。
 オレはお前を助けようとしてるんだよ? じゃあなに? 放っておいても良いのかな?


 待てよ。
 思い出す。


 昨日、はじめてマグロを目撃したとき、そう言えばこのニワトリ男と何か口論をしている様子だった。


 じゃあなんだ?
 マグロとニワトリは知り合いなのか?


「てめェみたいなザコが、ダンジョンに行くんじゃねェよ。てめェはもっと別の仕事を探せ」
 と、ニワトリ。


「厭です。マグロは、これから1人前の冒険者になるのです」
 とマグロ。


「笑わせるな。お前みたいなザコが、1人前の冒険者なんかになれるものかよ」


「なれます」
「なれねェよ」


 えっと……。
 オレは完全に蚊帳の外である。なんだか2人だけの世界になってしまってる。


 部外者が口を出すなと言われるし、オレは黙っているしかない。暇だなー。


「では、こうするのでありますよ。マグロとニワトリ頭。ふたりとも同じクエストを受注するのです。先にクエストを達成できたほうの勝利ということにするのです」


「いいぜ。ただしてめェが負けたら、てめェは冒険者なんかやめろ。パーティも解散して、田舎に帰りやがれ。この糞メスが」


 なんて口の悪いヤツだ。やっぱり、ニワトリみたいな髪型をしているだけある。


「わかりました。代わりにマグロが勝てば、今日の夕食をおごってもらうことにするのですよ」


「なんだよ。それぐらい余裕だぜ」
 と、どうやら話はついたようだ。


 ニワトリ男は《羽毛より羊毛》というパーティのリーダーらしい。《炊き立て新米》と勝負ということになった。


「ダンジョンに行くのですよ。マグロは激怒なのです。スライムの粘液をさっさと1000ポロム集めるのです」


「それは良いけど、あれは何者なんだ?」


《羽毛より羊毛》パーティを率いてニワトリ男は、さきにギルドを出て行った。


「マグロの古くからの知り合いなのです。マグロは父子家庭で育てられました。父は冒険者で、よく孤児を拾っていました。ニワトリは父の拾った子供のひとりでした」


「ほお。じゃあ幼馴染か」


 まあ、そのようなものです――と、マグロはつづけた。


「父が死んで、マグロたちは自活の道が求められました。みんなで冒険者パーティを組もうということになったので、マグロもそこに属していたのです。でもマグロは追い出されてしまいました」


 そう言えば、マグロの背負っている大剣は、父から譲り受けた品だと聞いている。父の形見というわけだ。


「パーティを追い出された?」


「弱いし、よく食べるから、邪魔だって。場違いな難癖をつけて追い出されたのです」


「よく食べるのはホントウだよ?」


 そこはシッカリと自覚してもらわねば困る。


「だからマグロは、あのニワトリ男に負けるわけにはいかないのであります」


 父の拾ってきた子供たちとパーティを組んで、父の子であるマグロが追い出されたというのは、なんだか不憫な話である。


「そう言うことなら、チカラになろう。なんとしてもあのニワトリ男をギャフンと言わせてやろうじゃないか」


 まさかマグロも、パーティを追い出された身だとは知らなかった。このオレと同じ境遇である。親近感がわく。


 今度こそ、イザ。ダンジョン。

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