《完結》勇者パーティーから追放されたオレは、最低パーティーで成り上がる。いまさら戻って来いと言われても、もう遅い……と言いたい。
1-3.強化術師は戦わないので、よろしく!
12人だった。
奥地に進もうとしている、怖れ知らずな冒険者たちの数である。オレを数えれば、13人になる。
通路にて、チョットしたいさかいが起きていた。
「てめェは、付いてくるんじゃないよ。ザコのくせにムリするなって」
「ザコではありませんし、ムリもしておりません」
「生意気に口答えしやがって」
「マグロは真実を述べているまでです」
向かい合っているふたりの人物。ふたりとも赤い髪をしているが、男と女だ。
女のほうは前髪を切りそろえて、ショートボブにしている。けっこう、可愛い。
しかしそんなことより男の髪型である。左右を剃りあげて、真ん中だけ残している。完全にトサカである。しかも逆立っている。コケコッコーとかいまにも言いだしそうな様相である。
冒険者ないでいさかいが起こるのは、決して珍しい光景ではない。
冒険者も一枚岩ではない。っていうか、千枚岩ぐらいである。一枚岩になろうという気さえない。
国を守る騎士は団体戦だが、冒険者は個人競技みたいなところがある。
同業者は仲間というか、ライバルというか、いやもういっそのこと敵である。
自分と自分のパーティ以外の冒険者の腕がみんな折れてしまえば良いのに……。くそっ。ゲフン、ゲフン。本音駄々漏れである。
「ついて来るなよ。ザコ」
ニワトリ殿はそう言うと、奥地へ進んで行く。
置いて行かれた少女は、寂しげにその場にたたずんでいた。
はて、元気づけてやるべきか否か。しかしながら相手は少女である。異性間交流できるようなボキャブラリーがオレには備わっていない。
ギルド前では女子たちに声をかけていただろうと思われるかもしれないが、あれは一世一代の奮起だったのだ。
オレは、つつましいのである。
「まぁ、元気出せよ?」か。いやいや。もっと気の利いたことを言うべきか。「オレが付いてるぜ、キラン」か。さすがにキザすぎるか。いや、待てよ。いまこそ勧誘のチャンスなのではないか?
……なんて思案に耽っているあいだに、少女もまた足を進めてしまっていた。
ここから先は、通路が分岐している。たいはんの者が真っ直ぐ通路を進んで行った。赤毛の少女だけは左に折れた。
「あ、待て待てっ」
ストーカーのように、もとい、我が子を見守る保護者のように後ろからコソコソと付いて回っていたオレは、我知らずと声を発していた。
と、いうのも、少女が行った先は、スケルトン・ナイトと呼ばれるモンスターが出てくるのだ。通常のスケルトンの上位種であり、新米ではトウテイ太刀打ちできない相手と思われる。
ましてや少女ひとりでは、返り討ちにあうこと必至である。
しかし少女は、すでに奥地へと足を進めてしまっていた。
あわてて追いかける。
新米冒険者の命が摘まれるのは、オレの見ている前ではやめていただきたい。なにせ、心が痛む。血は見たくない。死ぬなら、オレの知らないところで逝ってもらいたい。臆病とか言うな。
3部屋目。
大部屋。
石造りの立方体の空間。
少女の姿が見当たらない。どこへ行ったのか。もしやスケルトン・ナイトまで倒したのだろうか。最近の新米は、そんなに強いのか。
「そこの人、後ろ」
「へ?」
少女。いた。部屋の隅に積まれていた木箱に、身をひそめていたらしい。
振り向く。
オレの2倍ぐらいある大きさのスケルトン。剣と盾を装備している。出た。スケルトン・ナイトだ。
「ぎゃぁぁッ」
剣が振り下ろされた、間一髪のところで避けた。まとっているローブの一部が割けた。
続いて、なぎ払い。屈んでかわす。そして突き――というより剣先で弄ぶかのように、ツンツンと剣を突き出してくる。
「ひっ、ほっ、はっ」
と、冷や汗駄々漏れ、華麗なステップでかわした。
「冒険者さん。反撃を!」
と、少女が言う。
「ンなもん出来るか! オレは強化術師なんだよ!」
攻撃の術を持ちあわせていない。出来ることと言えば、手に持っている木の杖で殴りつけるぐらいだが、たいした攻撃にはならない。
迂闊だった。
スライムやスケルトンなら、戦闘力皆無のオレでも、どうにか対処できるだろうと見積もっていた。
しかし、スケルトン・ナイトとなると、オレには手も足も出ない。出せるのは冷や汗と小便ぐらいだ。
「せやッ」
と、赤毛の少女がおどりでた。
赤毛の少女は身の丈ほどもある大剣を背負っていた。それで、スケルトン・ナイトの一撃を受け止めていた。
「ここはマグロが引き受けます。ゆえ、冒険者さんははやく逃げてください」
「助かる!」
スタコラサッサと逃げ出すことにした。助かることが、最優先だ。そう思ったのだが、いや、待てよ、と逃げる足をゆるめた。
ここでオレが逃げ出したら、さっきの少女はスケルトン・ナイトの餌食になることだろう。っていうか、助ける予定が、逆に助けられてしまっている。しかも新米に――である。これでは元勇者パーティの沽券にかかわるというものだ。
振り向く。
少女は大剣の剣先を、床につけていた。新米のくせに、カッコウをつけて大剣なんて使うから、すぐに体力がなくなるのだ。
スケルトン・ナイトが剣を振り上げている。
少女の脳天に振り下ろされた。
「金剛鎧」
と、オレは呪文をとなえた。
少女の輪郭を囲むようにして、青白い光が帯されていた。
少女の脳天が、スケルトン・ナイトの剣を弾き返していた。
「今のは?」
少女が不思議そうに自分の頭を、ナでていた。
「オレが強化術で、君の能力を上げている。いまの君なら、そのスケルトン・ナイトに勝てるはずだ」
「でも、剣が」
と、刀身の太い剣を、少女はガンバって持ち上げようとしていた。
重いのだろう。
「案ずることはない」
獰猛なる精神。
悪魔の心臓。
ふたつの強化術を使った。
少女はその大剣を片手で持ち上げた。そして、振り下ろす。
何気なく振り下ろされたかに見えた、その剣から衝撃波が放たれた。
空間を切り裂くような白い斬撃が、スケルトン・ナイトを一刀両断にした。
のみならずダンジョンの壁面に大穴を開けたのだった。
大穴から外の明かりがさしこんできた。
奥地に進もうとしている、怖れ知らずな冒険者たちの数である。オレを数えれば、13人になる。
通路にて、チョットしたいさかいが起きていた。
「てめェは、付いてくるんじゃないよ。ザコのくせにムリするなって」
「ザコではありませんし、ムリもしておりません」
「生意気に口答えしやがって」
「マグロは真実を述べているまでです」
向かい合っているふたりの人物。ふたりとも赤い髪をしているが、男と女だ。
女のほうは前髪を切りそろえて、ショートボブにしている。けっこう、可愛い。
しかしそんなことより男の髪型である。左右を剃りあげて、真ん中だけ残している。完全にトサカである。しかも逆立っている。コケコッコーとかいまにも言いだしそうな様相である。
冒険者ないでいさかいが起こるのは、決して珍しい光景ではない。
冒険者も一枚岩ではない。っていうか、千枚岩ぐらいである。一枚岩になろうという気さえない。
国を守る騎士は団体戦だが、冒険者は個人競技みたいなところがある。
同業者は仲間というか、ライバルというか、いやもういっそのこと敵である。
自分と自分のパーティ以外の冒険者の腕がみんな折れてしまえば良いのに……。くそっ。ゲフン、ゲフン。本音駄々漏れである。
「ついて来るなよ。ザコ」
ニワトリ殿はそう言うと、奥地へ進んで行く。
置いて行かれた少女は、寂しげにその場にたたずんでいた。
はて、元気づけてやるべきか否か。しかしながら相手は少女である。異性間交流できるようなボキャブラリーがオレには備わっていない。
ギルド前では女子たちに声をかけていただろうと思われるかもしれないが、あれは一世一代の奮起だったのだ。
オレは、つつましいのである。
「まぁ、元気出せよ?」か。いやいや。もっと気の利いたことを言うべきか。「オレが付いてるぜ、キラン」か。さすがにキザすぎるか。いや、待てよ。いまこそ勧誘のチャンスなのではないか?
……なんて思案に耽っているあいだに、少女もまた足を進めてしまっていた。
ここから先は、通路が分岐している。たいはんの者が真っ直ぐ通路を進んで行った。赤毛の少女だけは左に折れた。
「あ、待て待てっ」
ストーカーのように、もとい、我が子を見守る保護者のように後ろからコソコソと付いて回っていたオレは、我知らずと声を発していた。
と、いうのも、少女が行った先は、スケルトン・ナイトと呼ばれるモンスターが出てくるのだ。通常のスケルトンの上位種であり、新米ではトウテイ太刀打ちできない相手と思われる。
ましてや少女ひとりでは、返り討ちにあうこと必至である。
しかし少女は、すでに奥地へと足を進めてしまっていた。
あわてて追いかける。
新米冒険者の命が摘まれるのは、オレの見ている前ではやめていただきたい。なにせ、心が痛む。血は見たくない。死ぬなら、オレの知らないところで逝ってもらいたい。臆病とか言うな。
3部屋目。
大部屋。
石造りの立方体の空間。
少女の姿が見当たらない。どこへ行ったのか。もしやスケルトン・ナイトまで倒したのだろうか。最近の新米は、そんなに強いのか。
「そこの人、後ろ」
「へ?」
少女。いた。部屋の隅に積まれていた木箱に、身をひそめていたらしい。
振り向く。
オレの2倍ぐらいある大きさのスケルトン。剣と盾を装備している。出た。スケルトン・ナイトだ。
「ぎゃぁぁッ」
剣が振り下ろされた、間一髪のところで避けた。まとっているローブの一部が割けた。
続いて、なぎ払い。屈んでかわす。そして突き――というより剣先で弄ぶかのように、ツンツンと剣を突き出してくる。
「ひっ、ほっ、はっ」
と、冷や汗駄々漏れ、華麗なステップでかわした。
「冒険者さん。反撃を!」
と、少女が言う。
「ンなもん出来るか! オレは強化術師なんだよ!」
攻撃の術を持ちあわせていない。出来ることと言えば、手に持っている木の杖で殴りつけるぐらいだが、たいした攻撃にはならない。
迂闊だった。
スライムやスケルトンなら、戦闘力皆無のオレでも、どうにか対処できるだろうと見積もっていた。
しかし、スケルトン・ナイトとなると、オレには手も足も出ない。出せるのは冷や汗と小便ぐらいだ。
「せやッ」
と、赤毛の少女がおどりでた。
赤毛の少女は身の丈ほどもある大剣を背負っていた。それで、スケルトン・ナイトの一撃を受け止めていた。
「ここはマグロが引き受けます。ゆえ、冒険者さんははやく逃げてください」
「助かる!」
スタコラサッサと逃げ出すことにした。助かることが、最優先だ。そう思ったのだが、いや、待てよ、と逃げる足をゆるめた。
ここでオレが逃げ出したら、さっきの少女はスケルトン・ナイトの餌食になることだろう。っていうか、助ける予定が、逆に助けられてしまっている。しかも新米に――である。これでは元勇者パーティの沽券にかかわるというものだ。
振り向く。
少女は大剣の剣先を、床につけていた。新米のくせに、カッコウをつけて大剣なんて使うから、すぐに体力がなくなるのだ。
スケルトン・ナイトが剣を振り上げている。
少女の脳天に振り下ろされた。
「金剛鎧」
と、オレは呪文をとなえた。
少女の輪郭を囲むようにして、青白い光が帯されていた。
少女の脳天が、スケルトン・ナイトの剣を弾き返していた。
「今のは?」
少女が不思議そうに自分の頭を、ナでていた。
「オレが強化術で、君の能力を上げている。いまの君なら、そのスケルトン・ナイトに勝てるはずだ」
「でも、剣が」
と、刀身の太い剣を、少女はガンバって持ち上げようとしていた。
重いのだろう。
「案ずることはない」
獰猛なる精神。
悪魔の心臓。
ふたつの強化術を使った。
少女はその大剣を片手で持ち上げた。そして、振り下ろす。
何気なく振り下ろされたかに見えた、その剣から衝撃波が放たれた。
空間を切り裂くような白い斬撃が、スケルトン・ナイトを一刀両断にした。
のみならずダンジョンの壁面に大穴を開けたのだった。
大穴から外の明かりがさしこんできた。
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