ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜
90話 ドラゴニックフォーム
「アマ…テラス様…?!」
突然の声にゼンは驚きを隠せなかった。
太陽神アマテラス。
自分たち竜種の生みの親である御方。
普段は接点もほとんどなく、話すらできない崇高なる御方。
そんな高貴極まる方がなぜ自分に話しかけてきたのか。
ゼンは少しだけそう考えたが、矮小な自分が詮索するのは失礼だと思い、すぐに切り替える。
とはいえ…
体中がボロボロで、あと一歩でも踏み出そうものならその場に倒れ込んでしまうほどにゼンの体は限界だった。
跪き、頭を下げようとするがうまく体が動かせない。
それを察したアマテラスが声をかける。
「そのままで良い。」
「も…申し訳ございません。」
少し間を開けてアマテラスが再び話し出す。
「それよりもゼン。お前は真に気づいたようだな…竜種としての在り方に。」
「竜種としての…在り方…でございますか?私はただ…仲間を…」
「良い…それでいい。お前の中にはすでに"それ"が生まれていることは妾も感じておる。」
「私の中に…ですか?いったい何が…」
声だけで姿は見えないアマテラスだが、その声色はどこか嬉しそうでもある。
「それはそのうちわかるであろう。そんなことより、今回お前には良い話と悪い話を持ってきてやった。どちらから先に聞きたい?選ぶがよい。」
「良い話と悪い話…ですか。しかし、アマテラス様。今は悠長に話をしている場合では…」
「たわけ!オロチのことなら気にするでない。今回は妾が直々に時間を止めてやったのだ。それをこのバカが破れるものか!いらぬ心配はいいから…さぁ、どっちから聞く?」
「し…失礼しました!では…そうですね。」
ゼンの言葉に少し声を荒げたが、やはりアマテラスは楽しそうに話している気がする。
ここは黙って指示の通りにしておくことが最善だと考え、ゼンは二択のうちの一つを選択した。
「ならば、悪い話からで…」
「よかろう!単刀直入に言うぞ?ゼン、お主は覚醒体になる条件を満たしたぞ!」
「なっ!?」
突然の言葉に驚くゼン。
それのどこが悪い話なのか…ゼンはそう思わずにはいられなかった。
念願だった覚醒体。
ウォタに追いつくために必死で求め続けた覚醒体。
それになれることは、ゼンにとって本懐でなのである。
しかし、冷静になって考えてみればアマテラスは"悪い話"と言っていた…
その真意はなんなのか…
「アッ…アマテラス様、恐れながら…それは悪いことなのでしょうか。私にとって…いや、それは全ての竜種が目指していることであり、覚醒体になることこそ竜種の本懐…」
「まぁ、そうだろうな。妾もそのためにお前たちを創り出したのだ。しかしな、話はまだ続くのだ。」
「と、言いますと…」
ゼンの問いに、アマテラスは再び間を置いた。
姿、表情が見えないゆえに、アマテラスが今、いったいどんなことを考えているのかゼンには想像もつかない。
訪れた沈黙に自然と生唾を飲み込むゼン。
すると、咳払いが聞こえて、アマテラスが口を開いた。
「…誠に言いにくいのだがな。お前は覚醒体にはなれんのだよ。」
「えっ!?それはどういう…」
「言葉の通りだ。その理由を今から話すから、落ち着いて聞け。」
「は…はぁ…わかりました。」
ゼンは混乱したを
覚醒体になれると言ったり、なれないと言ったり…
アマテラスは何が言いたいのだろうか。
確かに覚醒体になれないのはゼンにとって悪い話だ。
しかし、アマテラスは覚醒体になる条件は満たしたと…
条件は満たしている…?
(条件は満たしているが覚醒体にはなれない…その理由があるということか。)
その考えが頭をよぎった瞬間、ゼンはなんとなくアマテラスが何を言いたいのか察することができた。
そして、それを感じ取ったようにアマテラスも再び話し始める。
「お前は他の竜種とは違い、この世界特有の魔法に選ばれた竜種だ…」
「特有の魔法に…それはプレイヤーが使うガチャ魔法のことですね。」
「お前は頭が良くて助かるよ。その通りだ…ガチャ魔法に選ばれ、お前は今、プレイヤーに属した状態となっている。それゆえに、本来なれるはずの覚醒体にはなれんのだ。詳しい仕様はあまり話せんが、それが悪い話だな。」
「そうですか…」
そこまで聞いたゼンは俯いた。
確かにミコトに召喚された時から、その不安が心のどこかにあったのは確かだ。
だが、それを認めることはできずに、今まで心の奥底に隠し続けていた。
現実を突きつけられたゼン。
現実と向き合うことは、こうも苦しいものかとゼンは改めて感じる。
これまでたくさんの人間たちに会い、夢に敗れていく者たちを多く見てきた。
それを見て、自分もそうなるのではないかという不安に心を支配されたことも多々あった。
しかし、自分はそうはならないと自らを鼓舞してここまできたのだ。
しかし…現実は残酷だった。
「…おい、ゼン。まだ良い話が残っとるが…聞かんのか?」
落ち込むゼンに対して、少し悪びれたように声をかけるアマテラス。
ゼンも、アマテラスの貴重な時間を無駄にしていることに気づいて頭を上げた。
「そう…ですね。落ち込むのはその話を聞いてからにします。」
「まぁ、良い話を聞けばその懸念もなくなると思うがな…」
意味ありげにクスリと笑うアマテラスに、ゼンは疑問を浮かべつつ話の続きを待った。
「良い話というのはだな。お前は覚醒体になれるということだ。」
その瞬間、ゼンの頭の上には再び疑問符が浮かんだ。
「アマテラス様、私を…からかっておいでですか?」
「なに!?からかってなどおらんぞ!妾は真面目に話しておる!」
「しかし…先ほど覚醒体になれないと言ったのはアマテラス様で…」
ゼンがそこまで言ったところで、突然聞いたことのない声が聞こえてきた。
「アマテラス、君の説明は本当にくどいな!!」
「本当です。一回でパパパッと説明できないのですか?煩わしい。」
「な!父上、母上!何故ここに…!?」
(父…母…アマテラス様の父君と母君…!?)
ゼンは驚いた…生みの親であるアマテラスに父と母がいた。生きてきた中で一番衝撃的な事実だったのだ。
しかし、そんなゼンには構うことなく声だけの会話は続いていく。
「大体なんだい…『良い話と悪い話、どちらから聞きたい?』って!見てみなさい。ゼンくんが混乱しているじゃないか。」
「そうですよ。プレイヤーに属した竜種は通常の覚醒はできないけれど、特定のスキルを得ればプレイヤーとの竜合体(ドラゴニックフォーム)が可能になるって、普通に説明できないのですか?」
「あぁ…!!それ、私が言いたかったのに!!母上、何故先に言ってしまうのですか!!」
声だけでガヤガヤと騒ぐ親子たちの前で、ゼンは少し気まずそうに苦笑いする。
よくわからないアマテラスの説明で混乱していたのに、その母親らしき御方から結論をさらりと言われてしまったのだ。
崇高たる御方たちだから文句など言うはずもないが、ゼンはやり場のないもどかしさを感じていた。
「もう!二人はあっちに行っててよ!グスンッ…はぁ〜せっかく作った流れが台無しだ…」
「アマテラス…様?」
「あ〜ゼンか…そうだったな。父上母上に邪魔されてしまったが、話の通り、お前には特殊スキル『竜合体』を授けた。ウォタに授けた加護と同等のスキルだよ。それを使えばプレイヤーを媒体として覚醒体と同等の力を発揮できる。しかも、竜種の力とプレイヤーの力を掛け合わせる形になるからかなり強いぞ。」
「なんと…それは…」
「そろそろ時間を止めておくのも限界だから…妾が時間制御を解いたら、その娘がやられる前にすぐにスキルを使えよ。いいな、『竜合体(ドラゴニックフォーム)』だからな。」
「ド…ドラゴニック…フォーム…ですね。」
アマテラスは興を削がれたのだろう。
少し投げやりに説明すると、ため息をついて最後に一言だけ付け加えた。
「そのバカをさっさとぶっ飛ばして、目を覚ましてやってくれ。頼むぞ。」
「わかりました。そうだ、ア…アマテラス様!一つ伺いたいことが…!ウォタは…!?」
ゼンはそう叫んだが、すでに通信は途絶えたのか、アマテラスからの反応はなかった。
そして、時が動き始める。
「おんなぁぁぁ!!死ねぇぇぇぇ!!!」
再び八岐大蛇がミコトに襲いかかる様子を見て、質問どころではなくなったゼンが焦って声を上げる。
「い…いかん!ド…ドラゴニックフォーム!!」
その瞬間、ゼンとミコトの体が大きく輝き出したのだった。
突然の声にゼンは驚きを隠せなかった。
太陽神アマテラス。
自分たち竜種の生みの親である御方。
普段は接点もほとんどなく、話すらできない崇高なる御方。
そんな高貴極まる方がなぜ自分に話しかけてきたのか。
ゼンは少しだけそう考えたが、矮小な自分が詮索するのは失礼だと思い、すぐに切り替える。
とはいえ…
体中がボロボロで、あと一歩でも踏み出そうものならその場に倒れ込んでしまうほどにゼンの体は限界だった。
跪き、頭を下げようとするがうまく体が動かせない。
それを察したアマテラスが声をかける。
「そのままで良い。」
「も…申し訳ございません。」
少し間を開けてアマテラスが再び話し出す。
「それよりもゼン。お前は真に気づいたようだな…竜種としての在り方に。」
「竜種としての…在り方…でございますか?私はただ…仲間を…」
「良い…それでいい。お前の中にはすでに"それ"が生まれていることは妾も感じておる。」
「私の中に…ですか?いったい何が…」
声だけで姿は見えないアマテラスだが、その声色はどこか嬉しそうでもある。
「それはそのうちわかるであろう。そんなことより、今回お前には良い話と悪い話を持ってきてやった。どちらから先に聞きたい?選ぶがよい。」
「良い話と悪い話…ですか。しかし、アマテラス様。今は悠長に話をしている場合では…」
「たわけ!オロチのことなら気にするでない。今回は妾が直々に時間を止めてやったのだ。それをこのバカが破れるものか!いらぬ心配はいいから…さぁ、どっちから聞く?」
「し…失礼しました!では…そうですね。」
ゼンの言葉に少し声を荒げたが、やはりアマテラスは楽しそうに話している気がする。
ここは黙って指示の通りにしておくことが最善だと考え、ゼンは二択のうちの一つを選択した。
「ならば、悪い話からで…」
「よかろう!単刀直入に言うぞ?ゼン、お主は覚醒体になる条件を満たしたぞ!」
「なっ!?」
突然の言葉に驚くゼン。
それのどこが悪い話なのか…ゼンはそう思わずにはいられなかった。
念願だった覚醒体。
ウォタに追いつくために必死で求め続けた覚醒体。
それになれることは、ゼンにとって本懐でなのである。
しかし、冷静になって考えてみればアマテラスは"悪い話"と言っていた…
その真意はなんなのか…
「アッ…アマテラス様、恐れながら…それは悪いことなのでしょうか。私にとって…いや、それは全ての竜種が目指していることであり、覚醒体になることこそ竜種の本懐…」
「まぁ、そうだろうな。妾もそのためにお前たちを創り出したのだ。しかしな、話はまだ続くのだ。」
「と、言いますと…」
ゼンの問いに、アマテラスは再び間を置いた。
姿、表情が見えないゆえに、アマテラスが今、いったいどんなことを考えているのかゼンには想像もつかない。
訪れた沈黙に自然と生唾を飲み込むゼン。
すると、咳払いが聞こえて、アマテラスが口を開いた。
「…誠に言いにくいのだがな。お前は覚醒体にはなれんのだよ。」
「えっ!?それはどういう…」
「言葉の通りだ。その理由を今から話すから、落ち着いて聞け。」
「は…はぁ…わかりました。」
ゼンは混乱したを
覚醒体になれると言ったり、なれないと言ったり…
アマテラスは何が言いたいのだろうか。
確かに覚醒体になれないのはゼンにとって悪い話だ。
しかし、アマテラスは覚醒体になる条件は満たしたと…
条件は満たしている…?
(条件は満たしているが覚醒体にはなれない…その理由があるということか。)
その考えが頭をよぎった瞬間、ゼンはなんとなくアマテラスが何を言いたいのか察することができた。
そして、それを感じ取ったようにアマテラスも再び話し始める。
「お前は他の竜種とは違い、この世界特有の魔法に選ばれた竜種だ…」
「特有の魔法に…それはプレイヤーが使うガチャ魔法のことですね。」
「お前は頭が良くて助かるよ。その通りだ…ガチャ魔法に選ばれ、お前は今、プレイヤーに属した状態となっている。それゆえに、本来なれるはずの覚醒体にはなれんのだ。詳しい仕様はあまり話せんが、それが悪い話だな。」
「そうですか…」
そこまで聞いたゼンは俯いた。
確かにミコトに召喚された時から、その不安が心のどこかにあったのは確かだ。
だが、それを認めることはできずに、今まで心の奥底に隠し続けていた。
現実を突きつけられたゼン。
現実と向き合うことは、こうも苦しいものかとゼンは改めて感じる。
これまでたくさんの人間たちに会い、夢に敗れていく者たちを多く見てきた。
それを見て、自分もそうなるのではないかという不安に心を支配されたことも多々あった。
しかし、自分はそうはならないと自らを鼓舞してここまできたのだ。
しかし…現実は残酷だった。
「…おい、ゼン。まだ良い話が残っとるが…聞かんのか?」
落ち込むゼンに対して、少し悪びれたように声をかけるアマテラス。
ゼンも、アマテラスの貴重な時間を無駄にしていることに気づいて頭を上げた。
「そう…ですね。落ち込むのはその話を聞いてからにします。」
「まぁ、良い話を聞けばその懸念もなくなると思うがな…」
意味ありげにクスリと笑うアマテラスに、ゼンは疑問を浮かべつつ話の続きを待った。
「良い話というのはだな。お前は覚醒体になれるということだ。」
その瞬間、ゼンの頭の上には再び疑問符が浮かんだ。
「アマテラス様、私を…からかっておいでですか?」
「なに!?からかってなどおらんぞ!妾は真面目に話しておる!」
「しかし…先ほど覚醒体になれないと言ったのはアマテラス様で…」
ゼンがそこまで言ったところで、突然聞いたことのない声が聞こえてきた。
「アマテラス、君の説明は本当にくどいな!!」
「本当です。一回でパパパッと説明できないのですか?煩わしい。」
「な!父上、母上!何故ここに…!?」
(父…母…アマテラス様の父君と母君…!?)
ゼンは驚いた…生みの親であるアマテラスに父と母がいた。生きてきた中で一番衝撃的な事実だったのだ。
しかし、そんなゼンには構うことなく声だけの会話は続いていく。
「大体なんだい…『良い話と悪い話、どちらから聞きたい?』って!見てみなさい。ゼンくんが混乱しているじゃないか。」
「そうですよ。プレイヤーに属した竜種は通常の覚醒はできないけれど、特定のスキルを得ればプレイヤーとの竜合体(ドラゴニックフォーム)が可能になるって、普通に説明できないのですか?」
「あぁ…!!それ、私が言いたかったのに!!母上、何故先に言ってしまうのですか!!」
声だけでガヤガヤと騒ぐ親子たちの前で、ゼンは少し気まずそうに苦笑いする。
よくわからないアマテラスの説明で混乱していたのに、その母親らしき御方から結論をさらりと言われてしまったのだ。
崇高たる御方たちだから文句など言うはずもないが、ゼンはやり場のないもどかしさを感じていた。
「もう!二人はあっちに行っててよ!グスンッ…はぁ〜せっかく作った流れが台無しだ…」
「アマテラス…様?」
「あ〜ゼンか…そうだったな。父上母上に邪魔されてしまったが、話の通り、お前には特殊スキル『竜合体』を授けた。ウォタに授けた加護と同等のスキルだよ。それを使えばプレイヤーを媒体として覚醒体と同等の力を発揮できる。しかも、竜種の力とプレイヤーの力を掛け合わせる形になるからかなり強いぞ。」
「なんと…それは…」
「そろそろ時間を止めておくのも限界だから…妾が時間制御を解いたら、その娘がやられる前にすぐにスキルを使えよ。いいな、『竜合体(ドラゴニックフォーム)』だからな。」
「ド…ドラゴニック…フォーム…ですね。」
アマテラスは興を削がれたのだろう。
少し投げやりに説明すると、ため息をついて最後に一言だけ付け加えた。
「そのバカをさっさとぶっ飛ばして、目を覚ましてやってくれ。頼むぞ。」
「わかりました。そうだ、ア…アマテラス様!一つ伺いたいことが…!ウォタは…!?」
ゼンはそう叫んだが、すでに通信は途絶えたのか、アマテラスからの反応はなかった。
そして、時が動き始める。
「おんなぁぁぁ!!死ねぇぇぇぇ!!!」
再び八岐大蛇がミコトに襲いかかる様子を見て、質問どころではなくなったゼンが焦って声を上げる。
「い…いかん!ド…ドラゴニックフォーム!!」
その瞬間、ゼンとミコトの体が大きく輝き出したのだった。
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