ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜
51話 作戦決行
「さっさと歩け!この罪人ども!」
手を縄で縛られたまま、兵士に引かれて、エレナとトヌスは王城の前の広場に姿を現した。
多くの人が罪人の顔を一目見ようと、集まっており、二人の姿が見えるや否や、罵詈雑言が投げつけられる。
バラバラだった喧騒は、今や二人に向けられており、巨大な声の集合体が、エレナたちの体をビリビリと震わせる。
「公開処刑ってのは、本当に残酷だな…みんな、普段は良い人なのに。」
「人ってのは自分が関係ないと思えば、いくらでも残酷になれるのよ。しかし、こんな状況で"良い人"なんて単語、よく出せるわね。」
キョロキョロと人々を見回すトヌスに対して、エレナはジッと前を見据えながら、ちょっとした毒を吐いた。
そのまま、広場の中央に用意された絞首台へと登ると、横に並ぶよう兵士から指示を受ける。
真上には2箇所にロープが吊るされていて、自分たちの首にかけられるものと容易に想像できた。
足元の床には一本の線が見えるが、これはおそらく、ロープがかけられた後に、誰かの合図で足場が開く仕組みにでもなっていると思われる。
エレナは前を見る。
自分たちがいる場所よりも高く設置された見物台。
綺麗に装飾され、赤い絨毯が敷かれたそれは、おそらくは王が自分たちの処刑を見下ろす場所なのだろう。
横に立つ兵士に視線を移す。
「ちょっと…そこの兵士さん?」
「なんだ!勝手に喋るな!」
「ごめんなさい…悪いことをしたから罰を受けるのは仕方ないんだけど…街の人たちの声があまりに大きすぎて…死ぬ前の懺悔に集中できないの…もし許してもらえるなら、あたしのこのポッケに入った綿を両耳につけてもらえないかしら。」
涙目になり、まるで反省して悔い改めようとしているかのように兵士に声をかけるエレナ。
兵士は少し渋ったが、エレナのその態度に折れ、エレナの上着のポッケに手を入れる。
「彼も…かなり反省はしているようなの…彼にもお願いできない?」
「あっ…姉御…?」
訝しげに見ているトヌスを尻目に、エレナは兵士に、トヌスにもつけてやってくれと懇願した。
兵士もわかったわかったと言うように、エレナのポッケから取り出した丸めた綿をトヌスの耳にもつけてやる。
兵士が去ると、ほとんど音が聞こえなくなった。
目の前では民衆が声を上げる様子が見えるが、音は聞こえない。
動揺が隠しきれず、エレナを向くも、毅然としている彼女を見て、不思議と安心した気持ちが心を満たしていった。
二人にはほとんど聞こえないが、大きく整った音色の管楽器が響き渡ると、国のお偉方が姿を現し、見物台へと上がっていく。
もちろん、その中には財務庁長官であるオオクラの姿もあった。
トヌスは一瞬、エレナの顔が笑ったように見えた。
彼は聞こえないながらに、エレナへ声をかけようとした瞬間、民衆の声が大きくなったような雰囲気を感じとり、その方向に目を向ける。
そこには、立派なひげを携え、高貴な衣装に身を包んだ中肉中背の男が現れたのだ。
手を上げ、歓声に応えながら見物台へと上がる男。
彼こそがこのジパン国の国王、ホニン=パンジャその人である。
・
ロドは民衆に紛れ、広場の中央に目を向けていた。
少し離れた先には、大観衆の声に応えながら、ゆっくりと見物台を登っていく男が見える。
登り終えた彼が手を挙げると、再び大きな歓声が上がった。
歓喜の声は、空気を震わせる。
先ほど、トヌスたちに向けられていたブーイングとは桁違いの声量を前に、ロドは彼の王の人気さを再認識させられた。
ジパン国の国王ホニン=パンジャ。
かつて戦乱と呼ばれたこの国を統一し、まとめ上げた英雄は、戦場から退いた今もこの国で暮らす人々にとって、いつまでも英雄たるのであろう。
歓声の最中、周りを見渡すロド。
見えはしないが、この群衆の中に仲間たちが紛れ込んでいる。
ロドは周りに悟られないよう、皆に合わせて声を上げる。
あとはイノチの指示に従って動くだけだ。
彼の言う"合図"を待ち、合図が出たら行動を起こすのだ。
ロドがそれを考えていると、響いていた管楽器の音色が止まった。
それを機に、民衆も静かになっていき、最後には広場に静寂が訪れる。
ホニンは見物台の先端に立ち、エレナたちを見下ろすと、その口を開いた。
「我が国にこのような罪人がいようとは…誠に残念だ。早速ではあるが、処刑の準備を始めよ!」
その瞬間、再び管楽器が鳴り響き、三人の兵士が絞首台へ登ってくる。耳栓をつけてくれた兵士は、二人に悲しげな表情を向けると、そのまま去っていった。
一人の兵士が、回転式のレバーを回していく。
キリキリと音がして、真上にかかるロープがゆっくりと下がってくる。
降りてきたロープを手に取ると二人の兵士は、それぞれがエレナとトヌスの首にそのロープを掛けた。
掛け終わったことを確認すると、再び回転式のレバーをゆっくり兵士が回していく。
ロープがゆっくりと上がっていき、その弛みがなくなる頃には、首にかけられた輪が二人の首を少しだけひっぱりあげた。
トヌスはエレナを見る。
彼女は目をつむり、表情一つ変えずにいる。
観衆のボルテージは最大にまで達している。
聞こえないが、巨大な声の波が何度も体を打ちつけ、ビリビリと震わせているのがわかる。
トヌスは半分あきらめたように目を閉じた。
仲間たちの顔がまぶたの裏に浮かぶ。
ロドやボウ、他の仲間たち…
自分を慕ってくれていたみんなは、今無事にいるだろうか。
無意識に涙が頬を伝って、足元の床を濡らした。
執行役の兵士は、準備が完了したことをホニンへ伝える。
それを確認して、ホニンは再び民衆へと声を上げた。
「皆のもの、準備は整った!今から二人の罪人に裁きを執行する!彼らに神の赦しがあらんことを!」
「「「「「あらんことを!!!」」」」」
王の言葉に、民衆は声を合わせて皆一斉に口を開き、各々で目を閉じ、祈りの動作を行なっている。
広場には少しの沈黙が訪れた。
・
イノチはボウと一緒に広場が見下ろせる場所にいた。
目の前にはウィンドウとキーボードが発現している。
ボウに案内されてきたのは、近くにあった時計台。
大きな鐘の音を鳴らし、トウトの人々に時間を知らせる街のシンボルだ。
見下ろす眼下には、豪勢な見物台があり、国の幹部たちがゆっくりと登り、自席へと腰を下ろしていく。
その中の一人。
眼鏡をかけた人物を、イノチはジッと見据えていた。
「あいつがオオクラか…」
いやらしい笑みを浮かべ、ゆっくりと階段を登る様子は、誰が見ても嫌な奴と感じられる。
イスに腰かけ、偉そうに足を組むオオクラを睨みつけていると、歓声が一際大きくなったことにいのは気づいた。
民衆が顔を向ける方に視線を移せば、そこには立派なひげを携えた中肉中背の男がいる。
「あれ…王様…」
「ふ〜ん、あれがね。」
確かにロドから聞いた通り、誠実な感じは伺える。
民衆の熱意はあまり参考にはならないが、イノチの中でジパン国王の第一印象は悪くなかった。
管楽器の音が止み、王が口上を述べた。
そして、絞首台にいる兵士へ合図を送ると、兵士らは執行の準備を始める。
「始まったな…」
エレナたちの首に縄がかけられ、ギリギリとその縄が引き上げられる。
準備ができたことを兵士から確認した王は、大きくうなずくと片手を大きく上げた。
「んじゃ、いってみよぉー!」
イノチはその瞬間、手元にあったキーボードの『エンターキー』を押下した。
手を縄で縛られたまま、兵士に引かれて、エレナとトヌスは王城の前の広場に姿を現した。
多くの人が罪人の顔を一目見ようと、集まっており、二人の姿が見えるや否や、罵詈雑言が投げつけられる。
バラバラだった喧騒は、今や二人に向けられており、巨大な声の集合体が、エレナたちの体をビリビリと震わせる。
「公開処刑ってのは、本当に残酷だな…みんな、普段は良い人なのに。」
「人ってのは自分が関係ないと思えば、いくらでも残酷になれるのよ。しかし、こんな状況で"良い人"なんて単語、よく出せるわね。」
キョロキョロと人々を見回すトヌスに対して、エレナはジッと前を見据えながら、ちょっとした毒を吐いた。
そのまま、広場の中央に用意された絞首台へと登ると、横に並ぶよう兵士から指示を受ける。
真上には2箇所にロープが吊るされていて、自分たちの首にかけられるものと容易に想像できた。
足元の床には一本の線が見えるが、これはおそらく、ロープがかけられた後に、誰かの合図で足場が開く仕組みにでもなっていると思われる。
エレナは前を見る。
自分たちがいる場所よりも高く設置された見物台。
綺麗に装飾され、赤い絨毯が敷かれたそれは、おそらくは王が自分たちの処刑を見下ろす場所なのだろう。
横に立つ兵士に視線を移す。
「ちょっと…そこの兵士さん?」
「なんだ!勝手に喋るな!」
「ごめんなさい…悪いことをしたから罰を受けるのは仕方ないんだけど…街の人たちの声があまりに大きすぎて…死ぬ前の懺悔に集中できないの…もし許してもらえるなら、あたしのこのポッケに入った綿を両耳につけてもらえないかしら。」
涙目になり、まるで反省して悔い改めようとしているかのように兵士に声をかけるエレナ。
兵士は少し渋ったが、エレナのその態度に折れ、エレナの上着のポッケに手を入れる。
「彼も…かなり反省はしているようなの…彼にもお願いできない?」
「あっ…姉御…?」
訝しげに見ているトヌスを尻目に、エレナは兵士に、トヌスにもつけてやってくれと懇願した。
兵士もわかったわかったと言うように、エレナのポッケから取り出した丸めた綿をトヌスの耳にもつけてやる。
兵士が去ると、ほとんど音が聞こえなくなった。
目の前では民衆が声を上げる様子が見えるが、音は聞こえない。
動揺が隠しきれず、エレナを向くも、毅然としている彼女を見て、不思議と安心した気持ちが心を満たしていった。
二人にはほとんど聞こえないが、大きく整った音色の管楽器が響き渡ると、国のお偉方が姿を現し、見物台へと上がっていく。
もちろん、その中には財務庁長官であるオオクラの姿もあった。
トヌスは一瞬、エレナの顔が笑ったように見えた。
彼は聞こえないながらに、エレナへ声をかけようとした瞬間、民衆の声が大きくなったような雰囲気を感じとり、その方向に目を向ける。
そこには、立派なひげを携え、高貴な衣装に身を包んだ中肉中背の男が現れたのだ。
手を上げ、歓声に応えながら見物台へと上がる男。
彼こそがこのジパン国の国王、ホニン=パンジャその人である。
・
ロドは民衆に紛れ、広場の中央に目を向けていた。
少し離れた先には、大観衆の声に応えながら、ゆっくりと見物台を登っていく男が見える。
登り終えた彼が手を挙げると、再び大きな歓声が上がった。
歓喜の声は、空気を震わせる。
先ほど、トヌスたちに向けられていたブーイングとは桁違いの声量を前に、ロドは彼の王の人気さを再認識させられた。
ジパン国の国王ホニン=パンジャ。
かつて戦乱と呼ばれたこの国を統一し、まとめ上げた英雄は、戦場から退いた今もこの国で暮らす人々にとって、いつまでも英雄たるのであろう。
歓声の最中、周りを見渡すロド。
見えはしないが、この群衆の中に仲間たちが紛れ込んでいる。
ロドは周りに悟られないよう、皆に合わせて声を上げる。
あとはイノチの指示に従って動くだけだ。
彼の言う"合図"を待ち、合図が出たら行動を起こすのだ。
ロドがそれを考えていると、響いていた管楽器の音色が止まった。
それを機に、民衆も静かになっていき、最後には広場に静寂が訪れる。
ホニンは見物台の先端に立ち、エレナたちを見下ろすと、その口を開いた。
「我が国にこのような罪人がいようとは…誠に残念だ。早速ではあるが、処刑の準備を始めよ!」
その瞬間、再び管楽器が鳴り響き、三人の兵士が絞首台へ登ってくる。耳栓をつけてくれた兵士は、二人に悲しげな表情を向けると、そのまま去っていった。
一人の兵士が、回転式のレバーを回していく。
キリキリと音がして、真上にかかるロープがゆっくりと下がってくる。
降りてきたロープを手に取ると二人の兵士は、それぞれがエレナとトヌスの首にそのロープを掛けた。
掛け終わったことを確認すると、再び回転式のレバーをゆっくり兵士が回していく。
ロープがゆっくりと上がっていき、その弛みがなくなる頃には、首にかけられた輪が二人の首を少しだけひっぱりあげた。
トヌスはエレナを見る。
彼女は目をつむり、表情一つ変えずにいる。
観衆のボルテージは最大にまで達している。
聞こえないが、巨大な声の波が何度も体を打ちつけ、ビリビリと震わせているのがわかる。
トヌスは半分あきらめたように目を閉じた。
仲間たちの顔がまぶたの裏に浮かぶ。
ロドやボウ、他の仲間たち…
自分を慕ってくれていたみんなは、今無事にいるだろうか。
無意識に涙が頬を伝って、足元の床を濡らした。
執行役の兵士は、準備が完了したことをホニンへ伝える。
それを確認して、ホニンは再び民衆へと声を上げた。
「皆のもの、準備は整った!今から二人の罪人に裁きを執行する!彼らに神の赦しがあらんことを!」
「「「「「あらんことを!!!」」」」」
王の言葉に、民衆は声を合わせて皆一斉に口を開き、各々で目を閉じ、祈りの動作を行なっている。
広場には少しの沈黙が訪れた。
・
イノチはボウと一緒に広場が見下ろせる場所にいた。
目の前にはウィンドウとキーボードが発現している。
ボウに案内されてきたのは、近くにあった時計台。
大きな鐘の音を鳴らし、トウトの人々に時間を知らせる街のシンボルだ。
見下ろす眼下には、豪勢な見物台があり、国の幹部たちがゆっくりと登り、自席へと腰を下ろしていく。
その中の一人。
眼鏡をかけた人物を、イノチはジッと見据えていた。
「あいつがオオクラか…」
いやらしい笑みを浮かべ、ゆっくりと階段を登る様子は、誰が見ても嫌な奴と感じられる。
イスに腰かけ、偉そうに足を組むオオクラを睨みつけていると、歓声が一際大きくなったことにいのは気づいた。
民衆が顔を向ける方に視線を移せば、そこには立派なひげを携えた中肉中背の男がいる。
「あれ…王様…」
「ふ〜ん、あれがね。」
確かにロドから聞いた通り、誠実な感じは伺える。
民衆の熱意はあまり参考にはならないが、イノチの中でジパン国王の第一印象は悪くなかった。
管楽器の音が止み、王が口上を述べた。
そして、絞首台にいる兵士へ合図を送ると、兵士らは執行の準備を始める。
「始まったな…」
エレナたちの首に縄がかけられ、ギリギリとその縄が引き上げられる。
準備ができたことを兵士から確認した王は、大きくうなずくと片手を大きく上げた。
「んじゃ、いってみよぉー!」
イノチはその瞬間、手元にあったキーボードの『エンターキー』を押下した。
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