ガチャガチャガチャ 〜職業「システムエンジニア」の僕は、ガチャで集めた仲間とガチャガチャやっていきます〜

noah太郎

32話 力の証明


「地響き…!?まさか!」

「エレナ、急ぐのですわ!」

「わわわわ!二人とも待って!!」


大きな地響きが聞こえ、ミコトたち三人はその発信地を目指して駆けて出した。


「ミコト!こっちであってる?!」

「うん!魔法の示す先はこのまま真っ直ぐ!!」


通路にはところどころに別の通路への入口があるが、ミコトの魔法は真っ直ぐを指し示している。


「砂けむり…ですわ!」

「たぶんあそこね!」


しばらく走れば、先の方に大きく舞った砂けむりが見えた。
その中から、見知ったモンスターの姿がゆっくりと現れる。

その前には、美しい紅い竜が尻尾を揺らして立っている。


「ゼンちゃん!!」

「ミコト!?」


大きく声を上げたミコトの声に、ゼンが反応する。
その隙をついて、『ウィングヘッド』が触手を伸ばしてきた。


「それで不意をついたつもりか!!」


無数に飛んでくる触手を尻尾で叩き落とすと、ゼンは広範囲に渡り、口から豪炎を吐き散らす。

体中が炎に包まれ、けたたましい悲鳴を発する『ウィングヘッド』だが、すぐに炎の勢いは小さくなっていく。


「ちぃぃぃ…ほんとに属性とは厄介なものだ…」

「ゼンちゃん!!無事だったんだね!!」


愚痴をこぼすゼンに向かって、声をかけるミコト。
その顔をチラリと見て、ゼンは内心でホッとする。


「ミコト!下がっていろ…こいつは私がやる!!」

「うっ…うん…」

「ゼンさま!わたくしもお手伝いしますわ!」

「だめだ!お前では…足手まといになるだけだ。」

「…くっ」


正論を言われ、悔しさを顔に出すフレデリカ。
ゼンは『ウィングヘッド』から視線を離さず、言葉を続ける。


「お前が倒すべきは、闇竜"ミヤ"であろうが。ここで死んでは意味がない。自分の力量を理解し、目的に向かって精進せよ。」

「…知って…いらしたのですね。わかりました、ですわ。」


フレデリカは悔しさを露わにして、エレナとミコトのもとへと下がる。
そんなフレデリカに対して、ゼンは最後に付け加えた。


「お前のBOSSとともに行けば、必ずミヤを倒せるだろう。それを私が今から証明してやる。」

「ゼンさま…それはどういう意味で…」

「グォォォォォォォォォォォォォ!!!」


フレデリカの言葉を遮るように、『ウィングヘッド』がこれまで以上におおきな咆哮を轟かせた。


「話はこいつを倒してからだ。それと…」


ゼンは壁際にいるウォタを一瞥する。


「あのじいさんを…イノチのところに連れて行ってやれ。」


そう言い残すと、ゼンは『ウィングヘッド』へと飛びかかった。

巨大な二匹の戦いを見ながら、エレナが口を開く。


「これは、あたしたちが入る隙間はないわ…」

「う…うん。そういえば、ゼンちゃんがウォタさんをイノチくんのところに連れてけって言ってたけど…」

「ゼンさまの言う通りにしましょう。BOSSが鍵を握っているようですわ。」

「鍵…?」


エレナの問いかけに、フレデリカは両手を上げて、自分もわからないといった素振りを見せる。


「とりあえず、ウォタさんを連れてイノチくんのところへ行こう!」






「イノチくん!無事だったんだね!!」

「やぁ…ミコト。それにエレナとフレデリカも…みんな無事でよかったよ。」


岩陰に隠れていた満身創痍なイノチを見て、エレナが少し驚いた表情を浮かべる。


「BOSS…どうしたの?かなり疲れてるみたい…それに鼻血も…」

「あぁ、これ?ゼンの『呪い』の解呪にちょっと無理したからね。」

「ポーションは使ったの?マジックポーションも…」

「使ったけど効かなかったんだよ。」

「そんなことあるのかしら…」

「う〜ん…なんでだろうね。」


イノチは目をつむり、首を横に振った。
エレナとミコトが首を傾げていると、ウォタを抱えたままフレデリカが口を開く。


「BOSS、『呪い』というのは…?どういうことなのです?」

「あれ…知らないのか?なら、みんなゼンとはどうやってはぐれたんだ?」


一同は簡単にだが、それぞれのことの経緯を確認し合った。


「なるほどですわ。ゼンさまもウォタさまも、その『呪い』で力がだせなかったのですわね。」

「あぁ、だから戦えるのは俺だけだし、『ウィングヘッド』には追いかけ回されるし、マジで大変だったよ。」

「生きていたのが奇跡に近いわね。」


エレナは腕を組んで大きくうなずいた。


「それに関しては否定しない…ほんとに奇跡だよな。実際、あいつ以外のモンスターには会うことなかったし…というより、あいつに追われていたから、他のモンスターが寄ってこなかったってのが正しいか。」

「で、BOSS…ウォタさまの解呪はどうするのですわ?」

「ん…?あぁ、したいのは山々なんだけど、ゼンの解呪でかなり体を酷使したみたいでさ。力がまったく入らないんだよ。」


イノチは上げることができず、プルプルと震える右手を見つめて言う。


「ポーションでもマジックポーションでも治らないんじゃ、どうしようもないね…。」

「自分に『ハンドコントローラー』を使えたらどんな状態か確認できるんだけど、それは無理なんだよなぁ…ほんともどかしい装備だよ。」

「生命力の低下でも、魔力の低下でもないならば、精神力の低下ではないか?」


突然、ウォタがそうこぼした。


「精神力…?そんなもんがあるのか?」

「あぁ、一般にはあまり知られてはいないが、精神力とは体や心を動かす原動力になるものだ。それを酷使すると体が言うことを効かんくなるのだ。」

「なるほどな、アクション系のゲームでよくあるスタミナみたいなもんか。」

「なんのことかよくわからんが…お主のそれは、脳や体を酷使し過ぎると起こる現象に近いからな。おそらくはそうであろう。」

「そうか…で、どうやったら治るんだ?」

「知らん。」


ウォタはすんなりと答える。


「はぁっ!?知らんって…そこからが重要なとこだろ!?なんで知らないんだよ!」

「なぜって…我ら竜種にはそんなこと起きんからだ。この知識だって昔の知人に聞いただけだからな。」

「くぅぅぅ!聞いとけよ、その先を!」


イノチがそう言うとウォタも反論し始め、弱々しくぐったりしていた二人は、元気よく言い合いを始めた。


「あんたたち、弱ってるくせに口だけは達者ね!ったく…しかしどうする?フレデリカ、ミコト。BOSSが動けないなら、ゼンに任せるしかないわよ。」


エレナは『ウィングヘッド』と戦い続けているゼンをチラリと見た。

現時点ではゼンが優っている。
しかし、攻めきれていないようにも感じられる。
それだけ『ウィングヘッド』が厄介であるということだ。

自分たちが加勢したとしても、攻撃が効かないのであまり戦力にはならない。

むしろ足手まといになりかねず、やられてしまえば事態はより深刻になるのが目に見えている。

そう考えながら悩むエレナの横で、ミコトが口を開いた。


「ねぇ…私、『気つけ薬』っていうのを持ってるんだけど…」

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