異世界で魔王の配下になった件

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

【天の書】

「あいつ、魔王様に変身したわよっ……!?」
魔王そっくりに変身したパンドラを見てアマナが声を上げた。


『……我に変身するとは命知らずめが。後悔させてやる』
「それはこっちのセリフだぜ」


魔王はパンドラに手を向けた。
『……疾風の遠雷』
パンドラもすかさず同じポーズをとる。
「疾風の遠雷!」
互いの魔術が空中でぶつかり合い相殺された。


「なんだとっ。魔王様と互角だと!?」
モレロは驚きを隠せない。


『……灼熱の爆炎』
魔王の魔術に、
「灼熱の爆炎!」
同じ魔術で対抗するパンドラ。


またしても相殺される。


「……どうやらあの魔術、魔王様そっくりに変身するだけじゃなくて能力も魔王様そのものになるようですね」
ゲッティが分析する。


「じゃあどうするのよ、勝てないじゃない!」
「よくて互角か……」
とアマナとモレロが言う。


『……埒が明かんな』
「お前におれは倒せないぜ」
パンドラは言うがそれはお前も同じじゃないのか。


すると魔王が俺に視線を向けた。
『……クルルよ、お主がこやつと戦うのだ』、
「……え」
『……お主なら勝てるだろう』
と魔王。


それはつまり魔王より俺の方が強いってことか?


いやいや、さすがにそれは……。
『……早く来い』
「あっ、はい」


俺は魔王に促されるままパンドラの前に立った。


『……では頼んだぞ』
魔王が離れていく。


「なんだ、部下に任せようってのか? どういうつもりだ魔王!」
『……そやつと戦えばわかる』
「けっ、ただのガキじゃねぇか。こんな奴殺してもなんのぐふっっ!?」
パンドラは隙だらけだったので腹にパンチをお見舞いしてやった。


腹を押さえよろけるパンドラ。
「くっ……な、なんだと。お、おれは今最強の体を手にしているんだぞ……」
パンドラは前に手をかざした。
「くらえっ、灼熱の爆炎!」
すさまじい勢いの炎が俺に向かってくる。


俺はすかさず防御する。
黄色く輝くオーラによって防ぎきると俺は反撃に出た。


「ちょっと熱かっただろうがっ!」
飛び込んでパンドラの顔を力一杯ぶん殴る。


「がはっ……!」
後ろに吹っ飛び、地面を転がり回るパンドラ。


膝を震わせながらそれでもなんとか立ち上がってくるパンドラ。
「ど、どういうことだ……? 魔王より強い奴が……こ、この世界にいるなんて……」
そこまで言うとこと切れたように前にどさっと倒れ込んだ。


俺はパンドラが地面に落とした【天の書】を拾い上げると魔王に渡す。
「これどうぞ。魔王……様っていうかヨミ?」
顔を覗き込んでみる。がよく見えない。
どう呼べばいいんだろう。


すると魔王は、
『……我は魔王だ。ヨミのことを頼んだぞ』
重く低い声で言い放つ。


その直後、突然魔王は気を失って俺に寄りかかってきた。
支える俺。


「ちょっとクルル、どうなったのよ?」
「魔王様は無事か!?」
「クルルさん」
アマナたちが駆け寄ってきた。


俺は何も答えられなかった。

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