異世界で魔王の配下になった件

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

エルザさんの死

「エルザが死んだですって!?」
アマナは驚きを隠せないでいた。


「うそよっ。エルザがそう簡単に死ぬわけないわ! あたしは信じないから!」
「姉さん……」


『……残念だが本当だ。エルザの遺体はそこの棺桶の中だ』


俺たちは棺桶に近付きエルザさんの遺体を確認する。
まるで眠っているように安らかな顔をしているが脈を測ると確かに止まっている。


「っ……」
アマナは部屋を飛び出していってしまった。


「申し訳ありません、魔王様。アマナを連れ戻しましょうか?」
モレロが訊く。
『……構わん。好きにさせろ』


ここは魔王の部屋。
夜中寝ていたところ幹部全員に話があるということで急遽俺たちは魔王に集められたのだ。


「魔王様、エルザさんはなぜ死んだのですか?」
顔を上げるゲッティ。


『……ヨミが調べたところによるとどうやら毒殺のようだ』
「毒殺!? 殺されたって言うのですか!?」
ゲッティが声を上げる。


『……死因になった毒は自然界には存在しないものだ。何者かが調合したのかあるいは何者かの能力か』
エルザさんが殺された?
誰にだ?


「エルザさんは誰に殺されたのですか?」
『……わからん。だが心当たりならある』
ゲッティの問いに魔王が静かに答える。
『……エルザには我が直々に命じていたことがあるのだ』
「魔王様、続きはこのモレロめがお話します」
モレロが一歩前に出た。


俺とゲッティを見ながら、
「エルザは遠方への任務ということになっていたが実は違う。ある者の監視をしていたのだ。そのある者とは最近魔王様の配下になったヤドクという魔族だ。こいつはこの魔王城の宝物庫に忍び込み禁断の魔術書を盗んだ疑いがあったのだ」
「ではそのヤドクという者がエルザさんを殺したと……?」
「魔王様とオレはそう考えている」
とモレロが説明する。


その時、
「じゃあそのヤドクって奴が犯人なのね」
後方からアマナの声がした。


振り向くとアマナが扉に寄りかかっている。モレロとゲッティの会話を聞いていたらしい。
「アマナお前、出ていったんじゃなかったのか」
「姉さんっ」


「モレロ、そのヤドクって奴はどこにいるの?」
「今は自分の部屋で寝ているはずだが……どうするつもりだ」


アマナは冷たい視線でモレロを見返した。


「もちろん殺すわ」

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