異世界で魔王の配下になった件
深い森
翌朝。
俺とゲッティとアマナとエルザさんは魔王城の中庭に集まっていた。
「それで、カザフ村にはどうやって行くんだ? またグランに乗っていくのか?」
俺はゲッティに訊く。
グランとはゲッティが飼っているペットのグランドラゴンのことで前にもそいつに乗って移動したことがある。
「いえ、カザフ村は近いので歩いて行こうかと思っています」
「え、そうなの? あたし歩くの面倒くさいんだけど」
「姉さんは運動不足だから少しくらい歩いたほうがいいよ」
「あたしは余計な筋肉をつけたくないのよっ」
朝から言い争いをしている姉弟の横でエルザさんが口を押さえて「ふぁ~あ」とあくびをする。
「寝不足ですか? エルザさん」
「ふふっ、そうなの。私みんなで旅行できるって思ったら嬉しくなっちゃってちゃんと眠れなかったの」
「へ~、どこでも眠れちゃうエルザにしては珍しいわね」
アマナが言う。
「それだけアマナちゃんとの旅行が楽しみだったってことよ~」
「わっちょっと、いちいち抱きつかないでよ。頭撫でるなっ」
「ふふっ。可愛い~アマナちゃん」
エルザさんのふくよかな胸に包まれ苦しそうなアマナ。
なぜだろう。目が離せない。
「クルルさん、早速カザフ村に向かいましょうか?」
冷静なゲッティ。
「ん、おう。そうだな」
俺はゲッティの後をついていく。
「ちょっと待ちなさいよ二人ともっ。あたしたちを置いていくんじゃないわよっ」
「ああん、待って~、アマナちゃん」
アマナとエルザさんも後を追ってきた。
十五分程歩いた頃、
「ここがカザフ村への入り口です」
ゲッティが口を開いた。
「もう着いたのか?」
「っていうかただの森じゃない」
「そうね。森ね~」
ゲッティに案内された場所は大きな森の真ん前だった。
俺たちは森を見上げる。
「ゲッティ、あんたこれのどこが村なのよ」
「ここは村への入り口だってば、姉さん。僕の言ったことちゃんと聞いてた?」
「だからただの森じゃないの」
「はいはい。いいから入るよ」
そう言うとゲッティはうっそうと木々が生い茂る森の中へと足を踏み入れていった。
アマナは怪訝な顔をしながらも弟の後に続いた。
エルザさんもうきうきした様子で続いていく。
俺はそんなエルザさんを見ながら最後尾をついていった。
森の中は大きな木が密集しているところもあれば全く木が生えていないところもあって、まるで天然の迷路のようだった。
俺たちはゲッティが木々をかきわけ歩く道順をその通りに真似して進んだ。
「ねえ、あんた道わかってるんでしょうね」
アマナがゲッティに問いかける。
「こんなところで迷子なんて嫌よ」
「大丈夫だよ。伊達に書物を読み漁ってないからね」
振り向いたゲッティの顔は夏の晴れた日の空のように爽やかだった。
「エルザさん、大丈夫ですか?」
俺の前を歩くエルザさんは天使の羽を木の枝に当たらないように折りたたんでいる。
「ええ、大丈夫よ。これはこれで楽しいわ」
「どこがよっ」
エルザさんの言葉にアマナが振り返る。
「こんなのちっともご褒美じゃないわ。罰ゲームを受けてる気分よっ」
アマナじゃないが俺もそんな気になってきていた。
もうかれこれ一時間は深い森の中を歩いてきただろう。
さすがに疲れてきた。
いっそトリプルアクセルを発動して無敵状態のまま森の中を突っ切るという手もあるんじゃないか……などと考え始めた頃、
「見えてきましたよ。あれがカザフ村です」
ゲッティが前方を指差した。
ゲッティの指差す先には光が見えた。
俺たちは自然と足取り軽く早足になる。
段々と光が大きくなっていき、そして視界が開けた。
「おおー!」
眼前に広がる光景に思わず声が出る。
俺たちはカザフ村にやっと到着したのだった。
俺とゲッティとアマナとエルザさんは魔王城の中庭に集まっていた。
「それで、カザフ村にはどうやって行くんだ? またグランに乗っていくのか?」
俺はゲッティに訊く。
グランとはゲッティが飼っているペットのグランドラゴンのことで前にもそいつに乗って移動したことがある。
「いえ、カザフ村は近いので歩いて行こうかと思っています」
「え、そうなの? あたし歩くの面倒くさいんだけど」
「姉さんは運動不足だから少しくらい歩いたほうがいいよ」
「あたしは余計な筋肉をつけたくないのよっ」
朝から言い争いをしている姉弟の横でエルザさんが口を押さえて「ふぁ~あ」とあくびをする。
「寝不足ですか? エルザさん」
「ふふっ、そうなの。私みんなで旅行できるって思ったら嬉しくなっちゃってちゃんと眠れなかったの」
「へ~、どこでも眠れちゃうエルザにしては珍しいわね」
アマナが言う。
「それだけアマナちゃんとの旅行が楽しみだったってことよ~」
「わっちょっと、いちいち抱きつかないでよ。頭撫でるなっ」
「ふふっ。可愛い~アマナちゃん」
エルザさんのふくよかな胸に包まれ苦しそうなアマナ。
なぜだろう。目が離せない。
「クルルさん、早速カザフ村に向かいましょうか?」
冷静なゲッティ。
「ん、おう。そうだな」
俺はゲッティの後をついていく。
「ちょっと待ちなさいよ二人ともっ。あたしたちを置いていくんじゃないわよっ」
「ああん、待って~、アマナちゃん」
アマナとエルザさんも後を追ってきた。
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ゲッティが口を開いた。
「もう着いたのか?」
「っていうかただの森じゃない」
「そうね。森ね~」
ゲッティに案内された場所は大きな森の真ん前だった。
俺たちは森を見上げる。
「ゲッティ、あんたこれのどこが村なのよ」
「ここは村への入り口だってば、姉さん。僕の言ったことちゃんと聞いてた?」
「だからただの森じゃないの」
「はいはい。いいから入るよ」
そう言うとゲッティはうっそうと木々が生い茂る森の中へと足を踏み入れていった。
アマナは怪訝な顔をしながらも弟の後に続いた。
エルザさんもうきうきした様子で続いていく。
俺はそんなエルザさんを見ながら最後尾をついていった。
森の中は大きな木が密集しているところもあれば全く木が生えていないところもあって、まるで天然の迷路のようだった。
俺たちはゲッティが木々をかきわけ歩く道順をその通りに真似して進んだ。
「ねえ、あんた道わかってるんでしょうね」
アマナがゲッティに問いかける。
「こんなところで迷子なんて嫌よ」
「大丈夫だよ。伊達に書物を読み漁ってないからね」
振り向いたゲッティの顔は夏の晴れた日の空のように爽やかだった。
「エルザさん、大丈夫ですか?」
俺の前を歩くエルザさんは天使の羽を木の枝に当たらないように折りたたんでいる。
「ええ、大丈夫よ。これはこれで楽しいわ」
「どこがよっ」
エルザさんの言葉にアマナが振り返る。
「こんなのちっともご褒美じゃないわ。罰ゲームを受けてる気分よっ」
アマナじゃないが俺もそんな気になってきていた。
もうかれこれ一時間は深い森の中を歩いてきただろう。
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