異世界で魔王の配下になった件

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

ドラゴンを呼ぶ角笛

和平会談が行われるグラバニャ城は魔王城から南に遠く離れた地にある。


「どうやって行くんだ? 馬車とかか? まさか歩きじゃないよな」
「あんたバカなの? 歩いていったら一ヵ月はかかるわよ」
「クルルさん、大丈夫ですよ。移動手段はちゃんと考えてありますから」
そう言うとゲッティはポケットから角笛を取り出した。


「なんだそれは?」
「まあ見ていてください」
ゲッティは唇に角笛を当てそっと吹いた。


……。


するとミケが突然、
「ニャニャ!? いい音色ですニャ~。初めてこんなきれいな音を聴きましたニャ~」
うっとりした顔で遠くをみつめた。


「……なんだ? 何も聞こえないが」
「あんたには聞こえてないのこれ? 結構な音よ」
と言いながらアマナが耳を塞ぐ。


角笛を吹き終えたゲッティが、
「人間には聞こえないんですよ。僕たち魔族には大音量に聞こえているんですけどね」
「そうなのか。ミケはどうしたんだ?」
「ミケさんにはマタタビのような効果があるのかもしれないですね。すみません、僕にもよくわかりません」
苦笑する。


「それでそいつを吹いたらどうなるっていうんだ?」
「ふふっ、それはですね――」
その時、バサッと翼を羽ばたかせる音がしたと思ったら一瞬にして辺りが暗くなった。


「なんだ……うおっ!?」
俺は空を見上げて思わず声を上げた。


なぜなら俺たちの頭上を大きなドラゴンが舞っていたからだ。


ドラゴンはそのまま地面に下り立つと大きな翼を閉じた。


「おい、これってドラゴンだよな。お前が呼んだのか? そいつで」
「はい。このグランドラゴンは僕たち姉弟のペットなんです」
見るとアマナが「よく来たわね、グラン」とドラゴンの前足をぽんぽんと叩いている。


「ドラゴンがペットね……もう何が来ても驚かないつもりでいたんだけどな」
こいつは反則だ。
ペットと口では簡単に言うが、三階建ての家くらいの大きさがあるぞ。


「ではみなさん、グランに乗ってください」


ゲッティに促され俺たちはグランという名のドラゴンの背中に乗った。


「グラン、グラバニャ城まで頼むよ」
「全速力でお願いね」
「グオオォォー!」


グランは雄たけびを上げると俺たちを背中に乗せたまま大空に飛び立った。

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