最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第308話 A級昇格

金貨五十枚を受け取った俺とブライドさんはそれを半分に分け合った。
その結果俺の所持金は金貨三十八枚と銀貨二枚になった。


「っつうことでおれはまだE級の冒険者として地道にやっていくからよ、サクラお前はビアンキたちと協力してやってってくれ。まあ、お前の実力ならS級に上がるのも時間の問題だろうが出来ればビアンキたちとずっと一緒にいてやってくれるとありがてぇな」
ブライドさんは「じゃあなっ」と一度振り返ってから冒険者ギルドを出ていった。




☆ ☆ ☆




晴れてA級の冒険者になった俺はというとギルド内にいたほかの冒険者たちに囲まれて自分たちのチームに入らないかと誘いを受けていた。


どうやらA級の実力者を自分たちのチームに引き入れてチームの箔をつけたいと考えていたり、楽して報酬の高い依頼を成功させたいと考えての行動のようだった。


「どうですか? うちのチームに入ればサクラさんはリーダーですよ」
「我々のチームは今急成長をしているチームですから入っておいて損はないと思いますよ」
「オレのチームに入ってくれたら報酬の半分はあんたにやるぜっ」
「わたしたちのチームに入ったら楽しい毎日が待っているわよっ」


あの手この手で誘ってくるが俺はかたくなに断った。


「すいませんけど俺もう約束しているチームがあるので」


もちろん約束しているチームとはローレル、ビアンキ、エライザのことだ。
正直このチーム編成に乗り気なのはおそらくビアンキだけなのだろうが仕方がない、この三人を無視したらローレルがあることないこと言いふらして俺を社会的に潰そうとしてくるはずだからな。




俺は全員の誘いを断ってから冒険者ギルドを出る。
そして合計六時間歩いたこともあって疲れていたのでそうそうに宿屋へと戻ると布団に寝そべった。


「ふぅ~……今頃ビアンキたちは何してるんだろうな……」
そんなことをつぶやきながら天井をみつめているうちに俺は深い眠りに落ちていた。




☆ ☆ ☆




『マスター、マスター』


白くて小さなドラゴンが俺を見てマスターと呼んでいる。


なんだこの小さいのは……?
魔物か? ……ずいぶん可愛らしい姿をしているが……。


『マスター、おいらキューンだよっ。思い出してよ』


キューン……?
なんか聞き覚えがあるような……。


『マスターは邪神バアラを倒すためにそっちの世界に行ったんだよ。思い出してっ』


邪神バアラ……?
それってなんだったっけ……?


『おいらマスターに会いたいよ~』




あれ?
どこ行くんだ?


白い小さなドラゴンが叫びながら遠ざかっていく。


『マスターっ、マスターっ』


キューン……?


『マスターっ!』




☆ ☆ ☆




目が覚めた俺は気付くと目に涙が溜まっていた。
まったく憶えていないが悲しい夢でも見たのだろうか。


部屋の中は暗く窓の外を見ると夜のネオンがきらめいていた。


ぎゅるるるる~。


「あー、そういえば晩ご飯食べてないや……食べに行くか」


お腹の虫に急かされるようにして俺は猫猫亭へと足を運ぶ。




☆ ☆ ☆




「いらっしゃいませ~っ」


にぎやかな店内に入るとお客さんでいっぱいだった。
俺はカウンター席に着くと猫耳をつけた店員さんに声をかける。


「すいません、野菜炒めセットください」
「はい、かしこまりました~」
「それとブドウ酒も一つ」
「は~い」


俺が何歳かはわからないしお酒を何歳で飲んでいいのかもわからないがローレルがビールを飲んでいたことを考えると多分問題ないのだろう。
店員さんも特に気にしていない様子だったしな。




しばらくして運ばれてきた料理とお酒を一人で楽しんでいると両隣に男性と女性が同時に腰を下ろした。


「サクラさんですよね」
右隣に座った男性が話しかけてくる。


「ん? ええ、そうですけどぉ……」
ほろ酔い気分で答えるとその男性は嬉しそうに、
「やっぱりっ。一度話してみたかったんですよ、サクラさんと」
満面の笑みを浮かべた。


「俺とですかぁ……?」
「はい。この前冒険者になったばかりなのにもうA級になったって有名ですよっ」
すると左隣に座った女性も続く。
「わたしもサクラさんとお話ししたかったんです。ご一緒出来てラッキーっ」
「ああ、それはどうもぉ……」


酔っ払っているのか視界が少々ぼやけている。
そんなぼんやりとした視界の中で俺の隣に座る男性も女性も楽しそうににこにこと俺に笑いかけていた。
なんだかこっちまで楽しくなってくる。


「サクラさんてたしかA級冒険者の女性たちとチームを組んでいるんですよね?」
男性が訊ねてきた。


「なんで知ってるんですかぁ……でもそうですよぉ……」
「オレA級の冒険者には目をつけてるんですよ」
「へ~、そうなんですかぁ……」


なんか眠くなってきたなぁ。
俺ってあまりお酒に強くない体質なのかも……。


「ねえサクラさん、単刀直入に言いますけどオレたちとチーム組みませんか?」
「チームぅ……? オレたちって誰ですかぁ……?」
「わたしです」
左隣の女性が手を上げる。


「あー、なんだお二人って仲間だったんですねぇ……」
「はい、そうです。それでどうですか? オレたちと組みませんか?」
「でもさっきも言ったようにA級の冒険者のローレルとエライザとビアンキって奴らと約束してるんでぇ……」
「あんながさつな女たちよりわたしの方がいいと思いませんか~?」
女性は妖艶な笑みを浮かべつつ俺の太ももに手を滑らせた。


「まあ、がさつはがさつですよねぇ……」
「でしょう」
男性は自分の口元に手をやって内緒話をするように話し出す。
「ローレルってチビは幼い頃に父親に捨てられた孤児だそうですし、エライザって大女は男を目の敵にしている男になれなかった出来損ないですし、ビアンキってのは今時神を信仰してるヤバい奴なんですからサクラさんには不釣り合いですよ」


「ん~……スキル、峰打ち」
「だからサクラさん、オレたちと――ぐはあぁっ……!」


俺は自分でもよくわからないが男性の話を聞いているうちにふつふつと怒りがわいてきて気付けば男性を殴り飛ばしていた。


「な、何するのよっ!?」
床にうずくまる男性を見て女性が声を震わせる。


「いや、なんかムカついたからつい……」
「イカレてんじゃないのあんたっ!? やっぱりあんたら四人はお似合いよっ! 誰があんたなんかとチームなんか組むかっていうのよっ!」
そう声を荒らげると女性は倒れていた男性を引きずって店を出ていってしまった。


「なんだったんだ……?」
俺は店を出ていく女性を眺めていたところ酔いが回って後ろに倒れそうになる。
「おっと……」
だが筋肉質な太い腕に支えられた。


「すいません……ってエライザじゃないか!?」
振り返り顔を見ると俺を片手で軽々と支えていたのはエライザだった。


「あたしたちもいるわよっ」
「こんばんは、勇者様」
「うおっ!? ローレルとビアンキもいたのかっ!?」
エライザの横にはローレルとビアンキも立っていた。
三人とも心なしかいつもより表情が穏やかな気がする。


「あんた、酒場で喧嘩なんかしたらまた警備隊に捕まって牢屋に入れられるわよ」
「そうだけど……っていうかあんたらいつからいたんだ? 声かけてくれてもいいだろ、仲間なんだから」
「ふんっ、わたしはお前と仲間になった覚えはないぞ」
「あたしもー」
「私は仲間ではなく勇者様の従者ですから」


エライザとローレルとビアンキはそう言うと店を出ていこうとする。


「あれ? 飲んでいかないのか?」
訊くと三人は顔を見合わせてから、
「明日は朝から依頼だ。お前もさっさと宿屋に戻って寝ろ」
エライザが俺に言葉をぶつけた。


「え、それってどういう……?」
「勇者様、A級昇格おめでとうございます。これで明日から一緒に冒険が出来ますね」
「明日の朝八時にあたしたちの泊まってる旅館に来なさい。遅れたらおいてくからねっ」
ビアンキとローレルはそれだけ言い残してエライザとともに店を出ていってしまった。


「あいつら、何しに来たんだ……?」


俺は三人の背中を眺めながら「ひっく」としゃっくりを一つだけするのだった。

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