最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第70話 新たな門出

「佐倉さん、どうもありがとうございました」


目を覚ました神代は用意のいいことに持ってきていた薬草を上着のポケットから二つ三つ取り出して食べると何事もなかったかのようにすくっと立ち上がり俺に頭を下げたのだった。
俺も神代から薬草を一つもらい苦いので噛まずにそのまま飲み込んだ。


「もう大丈夫なのか?」
「はい、おかげさまで」
服についた砂利をはたき落しながら神代が返す。


「途中お前が泡になって消滅したのはなんだったんだ?」
俺は勝負の最中気になっていたことを訊いてみた。


「あれは分身魔法で作り出した僕の分身です。佐倉さんがここに到着する前からすでに分身と入れ替わっていて僕本人は透明になって息をひそめていたんです」
と神代。


「そういうことだったのか……じゃあ俺を空高く吹っ飛ばしたやつは? あれも魔法か?」
「はい。でも佐倉さんが空を飛べるなんて予想外でした」
「お前たちの前では使ったことないからな」
もし飛翔魔法がなかったら俺は地面に激突していたはずだ。
その結果がどうだったかはわからないが。


「それにしてもやはりまったく歯が立ちませんでした。完敗です」
「でも催眠魔法だっけ? あれにはまいったよ。もう少しで眠るところだった」
「まあ佐倉さん相手では実際は眠らせたところでどうしようもなかったんですけどね」
と神代は肩をすくめてみせた。


「結局かなり手加減されてしまったようですし大口を叩いていた自分が恥ずかしいですよ」
俺が地面を殴りつけて出来たクレーターのような大きな穴を見下ろしながら言う神代。
「いや、手加減というか……」
そういえば本気で戦わなかったら俺の秘密をばらすと言っていたが……。


「あのさ神代、それでなんだが……俺のレベルについては黙っててくれるのか?」


すると神代は涼しげな顔で、
「はい、約束ですからね。僕たちだけの秘密です」
前髪をかき上げる。


「そっか。それならよかった」
「では寒くなってきましたしそろそろ帰りましょうか」
「ああ、そうだな」


俺たちはいつの間にか降り始めていた雪を眺めつつ帰宅の途についたのだった。




☆ ☆ ☆




それからしばらく経って一月一日。
俺は朝からリビングで年賀状と年賀メールの返信に追われていた。


メールは中学の頃の友達数人と神代たちから。
年賀状は今現在ロシアにいるというマリアからだった。
それぞれ新年の挨拶と簡単な近況報告、それと思い思いの写真を載せていた。


俺は彼らに年賀メールを出していなかったことに気付き急いで返信の文章を書き上げ送信していく。


そして年賀状を送ってきたマリアには――
「義母さん、年賀はがきってまだある?」
「あるわよ。誰に送るの?」
「ロシアにいる知り合い」
義母さんから年賀はがきをもらって返信することにした。


「真琴くんてロシアに知り合いがいるの? 年賀はがきって海外に送れる?」
「うん。七十円切手を貼ればこのまま送れるんだよ」
ついさっきネット上で仕入れたばかりの知識を義母さんにひけらかすと俺は年賀はがきに近況報告を書き込んでいく。


[マリアへ。
明けましておめでとう。
俺はマリアやマヤさんのおかげで両親と無事打ち解けることが出来た。
そのことをとても感謝しているしマリアに強く当たってしまったことを今も後悔している。あの時は本当に悪かった、そしてありがとう。
俺の近況だが結局今さら高校に再入学する気にはなれずプレイヤーとして主にダンジョンで生活している。
マリアとの日々は刺激的でなかなか楽しかった。もしまた機会があったら一緒にダンジョン探索でもしような。
佐倉真琴より]


「こんなもんでいいだろ」
「なんだ真琴、もう書き終わったのか?」
隣でやはり年賀状の返事を書く作業に追われていた父さんがうらやましそうに俺を見る。


「うん。じゃあ俺ちょっと出しに行ってくるよ」
そう言うと俺は一枚の年賀はがきを持って家を飛び出した。


見上げると雲一つない空にきれいな朝日が俺の行く末を明るく照らすように燦々と輝いていたのだった。

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