最強で最速の無限レベルアップ ~スキル【経験値1000倍】と【レベルフリー】でレベル上限の枷が外れた俺は無双する~

シオヤマ琴@『最強最速』10月2日発売

第8話 買い取り

「へぇ~、こりゃあ懐かしい顔だな」


四人の中のリーダー格の大男が近寄ってくる。


ぐっと顔を近付け、
「八か月ぶりか? 佐倉。久しぶり~」
挑発するような目つきで話しかけてきた。


「あ、ああ」


まいった……面倒な奴らに出遭ってしまった。


「そういやお前サクちゃんのこと殴ったくせにまだ謝ってなかったよな」
「そうだぜ。今謝れよ」
「土下座だ、土下座」
後ろからぞろぞろと金魚のフンみたいに残りの連中がやってきて俺に言葉を浴びせてくる。
相変わらずみんないけ好かない顔をしている。


ちなみにサクちゃんというのはリーダー格の大男のことだ。
名字が桜庭だからサクちゃん。安直なあだ名だ。


「別にいいさ。オレは気にしてないしな」
と桜庭。
それに合わせて他の連中が「サクちゃん、大人~」とか「かっこいいぜ」とか言っている。


早いとこ俺の順番が回ってこないかな。
どうにも居心地が悪い。


「つうかこんなチビのパンチなんて何発くらっても効かねぇし」
桜庭は俺を見下ろしながら自分のあごをさすった。


たしかに俺は背が低いが百六十六センチはある。
いうほどチビではない、百九十近い桜庭がでかすぎるのだ。


それより俺の順番はまだか?
声が大きいこいつらのせいで周りの人たちの視線が俺たちに集まっている。
目立つのは好きじゃないのに。
もういっそ殴りかかったこと謝ってしまおうか。そうすればいなくなってくれるだろうか。


頭の中で考えを巡らせていると、
「佐倉、お前プレイヤーやってんのか?」
桜庭が訊いてきた。


「うん、まあ」
「一人でか?」
「そうだけど」


すると後ろの連中がまたも、
「マジかこいつ。友達いねぇんじゃねぇか」
「かわいそ~!」
「みなさ~ん、誰かこいつとチーム組んでやって~」
馬鹿みたいに騒ぎ立てる。


さすがにちょっとだけムカついてきたので、
「俺は一人が好きなんだよ。もう俺に構うな」
強い口調で言ってやった。


「ああん? なんだてめぇ」
「誰に言ってんだっ」
「また前みたいにぶっ飛ばしちゃうぞ、こら」
名前も憶えていない桜庭以外の三人が反応を示す。


特にその中の一人の坊主頭が俺の肩を強く掴んできた。
ちょうどその時――


「次にお待ちの方、どうぞー」


タイミングよくカウンターに座る女性に呼ばれた俺は何か文句を言いたげだった坊主頭たちを残して前へと進んだのだった。




☆ ☆ ☆




「ではお売りになりたいアイテムを出していただけますか?」
「はい、ちょっと待ってください」
そう言うと俺は不思議な袋をカウンターに置いた。


「この袋ですか?」
「あ、いえ違いますっ。この中に入っているものですっ」
俺は慌てて否定する。
この不思議な袋はいくら大金を積まれても今のところは売るつもりはない。


「えーっと……これと、これと、これと、これをお願いします」
俺は不思議な袋の中から魔石とポーション二本とエリクサー一本を取り出す。


「え、え……?」
その様子を見て動揺を隠せないでいる女性。
それもそのはず、出したものより袋の方が明らかに小さいのだ。
普通に考えれば物理的におかしいのは言うまでもない。


「すみません。その袋、はなんですか……?」
ダンジョンセンターの職員でさえ見たことがないらしい。
女性は俺の持つ不思議な袋を指差し訊ねた。


「これですか? これは不思議な袋といっていくらでもものを入れることができるんです」
「へ、へ~。そんな便利なアイテムがあるんですか……恥ずかしながら初めて聞きました」
「ランクQのダンジョンで手に入れたんです」
「そうでしたか……あっすみません、では買い取りを行いますね。鑑定をいたしますので少々お待ちください」
「はい」


魔石とポーションとエリクサーを持って後ろの部屋へと入っていく女性。
その後ろ姿を眺めながらやっぱりこれはレアアイテムだったんだな、と不思議な袋をなでつける。




しばらくして、
「お待たせいたしました」
と女性が札束を持って戻ってきた。


「ではまず、ポーションが二つとそれからエリクサーが一つとそれから魔石が一つですね。そうしますと合計で十六万円になりますがよろしいでしょうか?」
「はい、もちろん」
「ではこちらをどうぞ」


俺は女性から十六万円を受け取る。
いつもながらいい感触だ。


札束を不思議な袋に入れると、
「ありがとうございました。またお越しくださいませ」
「はい、こちらこそありがとうございました」
俺はカウンターを離れてダンジョンセンターをあとにした。




この時の俺は気付いていなかった。
カウンターでの俺と女性とのやり取りを桜庭たちが後ろの方でずっと見ていたことを。

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