《完結》転生魔王「人類支配しろなんて言ってないよね?」魔族「申し訳ありませんでした!」
10.魔族外交官
いったいどこで何をしていたのだ――と親から叱られた。が、事情説明のためにオレと同行していたフルバスが説明してくれたので丸くおさまった。
「どうも、おたくの息子さんは、外交官としての才能があるようですね。ガハハ」
と、フルバスは言っていた。
最後のひとりであるユイブとの交渉には、オレが不可欠。もう少し息子さんのチカラをお借りしたいというフルバスの懇願によって、オレは引き続き魔族との外交官として動くことが許された。
両親はあまり乗り気ではなかったようだが、フルバスから頼まれれば致し方あるまいといったところだろう。
翌朝。
オレはフルバスとともに、登城した。
城は騒ぎになっていた。
魔族の大群が、この王都に向けて進軍してきているとのことだった。
会議室に、オレも招集された。
先日にも訪れた会議室にて、オレとフィリズマとアルノルトは再会した。会議室には勇者もいたし、ロウとフルバスもいた。
「さて、どうしたものかな」
と、国王が切り出した。
「もはや戦うという選択肢は無意味でしょう。魔族長が2人も平和条約に前向きなのですから、この2人とエドガーに停戦してもらうということで、よろしいのではありませんか?」
と、フルバスが提案した。
「私も異議はありません」
と、ロウがうなずいた。
勇者だけが、
「いいや。人間はいまこそ奮起して、魔族を追い返すときだ。勇者であるオレならそれが出来る!」
と、訴えていた。
「あれれ? 先日、私にボコボコにされて、泣いて帰ってた人じゃない?」
と、アルノルトが言った。
「うるせぇ。あのときは手加減していたんだ。魔族風情が、偉そうなクチを聞くな!」
「ずいぶんと生意気なのね。私なら、もう一度相手してやっても良いんだけど」
と、アルノルトが殺気を放ちはじめたので、オレはアルノルトを制した。
コホン、とフルバスが咳払いをした。
「1度魔族に負かされた者が、なにを言っても説得力はありませんよ。勇者殿」
「なにを軍務執政官が偉そうに。てめェだって、タメーリク砦の戦いのときは、捕虜になってたじゃねェか」
「ええ。ですから、魔族と戦うべきではないと実感しましてね。私はエドガーくんに助けられたから良かったものの、もしエドガーくんが来ていなかったら、まだ捕虜になっていたでしょう」
「捕虜になって生き恥をさらすぐらいなら、舌を噛み切って死ね!」
と、勇者はフルバスに言い放った。
フルバスは髭面の奥でムッとしたような表情をしていたが、すぐに和やかな笑みを見せていた。
「まぁ、幸いにも舌を噛み切る前に、エドガーくんが助けに来てくれましたから」
「はぁ? だいたいなんだよ。エドガーくん、エドガーくんって。こんなザコ貴族の息子なんかに頼ってて、それで良いのかよ」
と、勇者は立ち上がると、オレを指差してそう言った。
「たしかにエドガー・ロドリゲスは、一介の貴族の子息であり、特別な権限を有しているわけでもなく、また特殊な立場にいる者でもありません」 と、ロウが言う。
「だろう」
と、勇者が勝ち誇ったように、オレを見下ろしてくる。ちくいち表情が下品だ。
しかし、とロウが続けた。
「こうして魔族との外交のさいに、実績を出しているのは確か。はたしてどういった手法を取っているのかはわかりませんが、奴隷にされていた者たちを救出して、あげくタメーリク砦の捕虜を解放したのです。私は、肩書きよりも実績を優先するべきかと思います」
「うっ」
ロウに見放されて、勇者は言葉に窮している様子だった。
「それでは、大軍を率いてこちらに攻め入ろうとしているユイブとの交渉に、オレがあたる――ということで、よろしいでしょうか?」
「いいや。もう一度、オレに行かせてくれ。オレなら大軍を打ち破って見せる。そして今度こそはネミ姫さまをいただく」
と、勇者が張り合ってきた。
この勇者は、どうにか戦績を残して、姫さまを貰いうけたいだけなのかもしれない。
「これから平和条約を結び直そうという相手に、刃を向けるというのは、いかがなものかと思いますがな」
と、フルバスが苦言を呈していた。
コホン、と国王が言う。
「フルバスの言うとおり。エドガーに任せていれば間違いなかろう。王の権限で、エドガー・ロドリゲスを、魔族外交官に任命することにする。よろしく頼むぞ」
と、国王は禿頭に乗っかっている王冠を気にしながらそう言った。
勇者は歯ぎしりしながら、物凄い形相でオレを睨んでいた。
「どうも、おたくの息子さんは、外交官としての才能があるようですね。ガハハ」
と、フルバスは言っていた。
最後のひとりであるユイブとの交渉には、オレが不可欠。もう少し息子さんのチカラをお借りしたいというフルバスの懇願によって、オレは引き続き魔族との外交官として動くことが許された。
両親はあまり乗り気ではなかったようだが、フルバスから頼まれれば致し方あるまいといったところだろう。
翌朝。
オレはフルバスとともに、登城した。
城は騒ぎになっていた。
魔族の大群が、この王都に向けて進軍してきているとのことだった。
会議室に、オレも招集された。
先日にも訪れた会議室にて、オレとフィリズマとアルノルトは再会した。会議室には勇者もいたし、ロウとフルバスもいた。
「さて、どうしたものかな」
と、国王が切り出した。
「もはや戦うという選択肢は無意味でしょう。魔族長が2人も平和条約に前向きなのですから、この2人とエドガーに停戦してもらうということで、よろしいのではありませんか?」
と、フルバスが提案した。
「私も異議はありません」
と、ロウがうなずいた。
勇者だけが、
「いいや。人間はいまこそ奮起して、魔族を追い返すときだ。勇者であるオレならそれが出来る!」
と、訴えていた。
「あれれ? 先日、私にボコボコにされて、泣いて帰ってた人じゃない?」
と、アルノルトが言った。
「うるせぇ。あのときは手加減していたんだ。魔族風情が、偉そうなクチを聞くな!」
「ずいぶんと生意気なのね。私なら、もう一度相手してやっても良いんだけど」
と、アルノルトが殺気を放ちはじめたので、オレはアルノルトを制した。
コホン、とフルバスが咳払いをした。
「1度魔族に負かされた者が、なにを言っても説得力はありませんよ。勇者殿」
「なにを軍務執政官が偉そうに。てめェだって、タメーリク砦の戦いのときは、捕虜になってたじゃねェか」
「ええ。ですから、魔族と戦うべきではないと実感しましてね。私はエドガーくんに助けられたから良かったものの、もしエドガーくんが来ていなかったら、まだ捕虜になっていたでしょう」
「捕虜になって生き恥をさらすぐらいなら、舌を噛み切って死ね!」
と、勇者はフルバスに言い放った。
フルバスは髭面の奥でムッとしたような表情をしていたが、すぐに和やかな笑みを見せていた。
「まぁ、幸いにも舌を噛み切る前に、エドガーくんが助けに来てくれましたから」
「はぁ? だいたいなんだよ。エドガーくん、エドガーくんって。こんなザコ貴族の息子なんかに頼ってて、それで良いのかよ」
と、勇者は立ち上がると、オレを指差してそう言った。
「たしかにエドガー・ロドリゲスは、一介の貴族の子息であり、特別な権限を有しているわけでもなく、また特殊な立場にいる者でもありません」 と、ロウが言う。
「だろう」
と、勇者が勝ち誇ったように、オレを見下ろしてくる。ちくいち表情が下品だ。
しかし、とロウが続けた。
「こうして魔族との外交のさいに、実績を出しているのは確か。はたしてどういった手法を取っているのかはわかりませんが、奴隷にされていた者たちを救出して、あげくタメーリク砦の捕虜を解放したのです。私は、肩書きよりも実績を優先するべきかと思います」
「うっ」
ロウに見放されて、勇者は言葉に窮している様子だった。
「それでは、大軍を率いてこちらに攻め入ろうとしているユイブとの交渉に、オレがあたる――ということで、よろしいでしょうか?」
「いいや。もう一度、オレに行かせてくれ。オレなら大軍を打ち破って見せる。そして今度こそはネミ姫さまをいただく」
と、勇者が張り合ってきた。
この勇者は、どうにか戦績を残して、姫さまを貰いうけたいだけなのかもしれない。
「これから平和条約を結び直そうという相手に、刃を向けるというのは、いかがなものかと思いますがな」
と、フルバスが苦言を呈していた。
コホン、と国王が言う。
「フルバスの言うとおり。エドガーに任せていれば間違いなかろう。王の権限で、エドガー・ロドリゲスを、魔族外交官に任命することにする。よろしく頼むぞ」
と、国王は禿頭に乗っかっている王冠を気にしながらそう言った。
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