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《完結》転生魔王「人類支配しろなんて言ってないよね?」魔族「申し訳ありませんでした!」

執筆用bot E-021番 

7.魔王さまじゃないもん

 翌朝。


 案の定、勇者は負けたらしい。タメーリク砦が陥落したという話は、オレの耳にもすぐに届いた。


 逃げ帰ってきた騎士の話を聞くことが出来た。魔族の指揮を執っていたのは、紫色の髪をした少女だったということだ。間違いなく、アルノルトだった。


 ゴブリンどもが跋扈しているタメーリク砦を前に、オレは思案していた。


「さて、どうやってアルノルトと会うかが問題なんだが、ふつうに人間の使者として会いに行くべきだろうな」


「私は、ここでお待ちしております」


「いっしょに来ないのか?」


「私の顔を見られてしまうと、エドガーさまが、魔王さまであるとバレてしまいかねますから」


「たしかに、それはそうだが」


「くれぐれも油断してはいけませんよ。アルノルトが、生前の魔王さまを殺した犯人かもしれないのですから」


「わかっているさ」


 アルノルトは子供の風体をしているが、それでももう600歳である。殺意を宿してもオカシクはない年頃である。


 ゴブリンの跋扈する砦の正面から、オレは向かった。使者としてやってきた証拠として白い光の魔法を空に放って見せた。これが使者の合図だ。


 しかし。


「来たぞーっ。お前らやっちまえーっ」


 砦の入口に立っている前衛塔バービカンから、アルノルトが顔を出して、号令を発していた。
 それを受けたゴブリンやらスライムが、オレめがけて跳びかかってきた。


「なッ。こっちは使者だぞ。おい」


「うるせぇ。使者のフリをしてダマそうだって、そうはいかないぞ。私の首を狙ってくる黒髪に黒目の男がいるって、すでに耳にしてるんだよ」


「なに?」


 そんなことを吹きこんだのは、どこのどいつだろうか。勇者か? しかし勇者の言葉を、アルノルトが真に受けるとも思えない。勇者もそこまでズルいヤツとは思えない。


 跳びかかってきたゴブリンを、《獄魔刀》の峰で叩き伏せた。


 魔王の身としては、たとえゴブリンでも傷つけたくはない。


 第5階層魔法。睡魔スリープ


 紫色の瘴気があたりに発せられた。吸った者たちが次々に眠り落ちていった。前衛塔バービカンである円柱の建物の足元に迫った。


 塔の上からアルノルトが、見下ろしている。


「げッ。第五階層魔法を使うなんて、なかなかやるねー」


「オレはホントウに話し合いのために来ただけだ。すでに魔族長のひとりであるフィリズマは、平和条約に前向きな意見だぞ」


「うるさーい。ダマされるもんか。フィリズマの使者から聞いてるもんね。黒髪に黒目の男に気を付けろって」


「なに? フィリズマの使者が?」


「死んじゃえーっ」
 と、前衛塔バービカンの上から、火球ファイア・ボールを連射してきた。


 《獄魔刀》で、それを切り伏せた。


 魔王であることを隠しておく予定だったが、こうなったら仕方がない。バラしてしまおう。


「この剣が見えないのか」


「それは死んだ魔王さまが大切にしていた《獄魔刀》だよ。フィリズマが勝手に持ち出したんだけど、人間に奪われたって聞いてるわ。よくも奪ってくれたわね」


「……どうなってやがる」


 たしかに人の姿で「オレは魔王だ」なんて言っても、説得力がないのは理解できる。が、どうやらアルノルトは、事前になにか妙なことを吹きこまれているようだ。


 しかもそれをフィリズマの使者から聞いたと言っている。いまから引き返してフィリズマを連れて来るべきか迷った。


 さすがにフィリズマを同行させれば、オレの素性を信じてくれるはずだ。


「死んじゃえー。魔王さまのいないこの世界に意味なんてないんだ。人間なんて、みんな死んじゃえー」
 と、アルノルトは両手を宙に向けた。


 アルノルトの頭上――というか、砦を覆うほどの大きさの赤い魔法陣が展開された。赤黒いカタマリが造り上げられていた。
 

 これはマズイ。第5階層魔法。隕石メテオだ。


 この砦ごと吹き飛ばすつもりだ。あたりにはゴブリンやスライムもいる。人間の負傷者もいる。


「おいおい、チョットは落ちついてくれ」


「どりゃーっ」
 と、アルノルトは両手を振り下ろした。それを合図に隕石メテオが落ちてくる。


 オレも魔法陣を展開することにした。第8階層魔法。空間転移門ディメンジョン・ゲート


 何もない空間に紫色の穴が開いた。隕石がその穴に吸い込まれてゆく。隕石を丸ごと呑みこむと、門は閉じた。


「ッたく、すこしは話を聞いてくれ。オレは魔王だ」


「違うもん。魔王さまはそんな姿をしてないもん」


「転生したんだよ。その証拠に第8階層魔法を使って見せただろ」


「うーっ」
 と、アルノルトはうなった。


 そこまでよ、アルノルト――と、声が割り込んだ。フィリズマである。


「この御方は、ホントウに魔王さまなのよ。人間に転生したの。あなたは魔王さまに、なんてことをしているのですか!」


「え……え? えぇぇ?」
 と、前衛塔バービカンから身を乗り出したアルノルトは、そのまま落下してきた。


 オレが受け止めた。

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