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《完結》転生魔王「人類支配しろなんて言ってないよね?」魔族「申し訳ありませんでした!」

執筆用bot E-021番 

1.フィリズマ

 鉱山。


 周囲は高い山に囲まれていた。大鍋の底にいるような心地になる。山と言っても荒涼としたもので、草木は1本たりとも生えていない。


 人はみんな足首に重石をつなげられている。壁面に向かってピッケルを叩きつけていた。


 カツーン、カツーン。


 金属音が響いている。
 そこには女もいれば子供もいる。


 もしすこしでも休むようなものなら、ゴブリンがこん棒で叩きつけてくる。すでに血まみれの女もいた。


 行われているのは、採掘だけではない。採掘した鉱石を焙焼している者たちがいる。そして洗鉱している。
 焼きあがってまだ赤くなっている鉱石を、手づかみで握らされている者たちがおり、肉の焼ける音と悲鳴が入りみだされていた。


 物見櫓がある。
 木造の背の高い建物だが、外敵の警戒というよりかは、作業の見張りをするためのもののようだ。


「休んだら殺すわよ。シッカリ働きなさい」
 と、物見櫓の上で、命令を飛ばしているのは、1人のサキュバスだった。


 ブロンドのショートボブに碧眼。コタルディと言われる真っ赤なドレスを着ている。胸元が開いており、豊満な乳房の谷間が見えていた。
 そこまでは美人なお姉さんと言っても支障はない。が、何と言っても特徴的なのは、その頭部――ブロンドの髪をかきわけて生えている、立派な巻き角だ。
 白い巻き角は、それだけで人を畏怖させるに充分な見た目をしている。


「ゴブリンたちを従えて、人間を働かさせているというわけか。まぁ、たしかに鉱石はいろいろと使えるからな」
 と、オレは言った。


「あら、人間風情が、こんなところまで上ってくるなんて。あなたはどこの担当かしら? 採掘? 運搬? なににせよ。サボりには違いないわね」


「しかし、これは妙だ。人間と魔族は20年前に、平和条約を結んだはずだ。お互いの領域には侵入せず、アーロッタ大陸を二分するという約束だったはずだが」


「条約は、互角である場合にのみ有用なのよ。弱者を虐げるのに条約なんて守る意味はないでしょう」


「そうかな、フィリズマ」


 オレがそう言うと、フィリズマは右の眉をピクリと跳ねあがらせた。


「あらら? どうして私の名前を知っているのかしら?」


「淫惑のフィリズマ。有名な名前だからな」


「あらあら。わかったわ。あなたは、ここの人間たちを解放しようと王国から使わされて来た冒険者ね。そうでしょ」


「いや。そうじゃない」


「ウソを吐いてもムダよ。人間はね。みんな使い潰して、殺すと決めてるのよ」


「ずいぶんと過激な思想じゃないか」


「人間は、我らが魔王さまを殺したのよ。その報いを受けさせなくちゃいけないわ」


 フィリズマはそう言うと、腰に佩していた剣を抜きはらった。
 黒い刀身をしている。


「また厄介なものを持ち出したな」


「あら、この剣も知っているのね。この剣は死んだ魔王さまが愛用していた剣よ。《獄魔刀》と言われるものでね。あらゆる物を貫く魔力が込められているの。そして柄には魔王さまの身分証明にもなる、魔王紋が刻まれているのよ」
 と、フィリズマは刀身に舌をはわせた。
 真っ赤な舌が、刀身を濡らしていく。


「ああ。よく知っているとも。その剣は使い手や、殺した相手を記憶することも出来る剣だ」


「あなたは魔族のことに詳しいみたいね。どこでその情報を知ったのかしら。それは魔族長クラスの者しか知らないことですのよ。あなたの素性も含めて、教えていただきたいわ」
 と、剣先を向けてきた。


「その話をするつもりで来たんだ」


「安心してちょうだい。あなたが口を割る必要はないのよ。拷問で割らせてあげるんだから」


「痛いのはカンベンしてもらいたい」


「そういうわけにも、いかないわよ!」


 フィリズマはそう言うと切りかかってきた。初撃。なぎ払い。かがんでかわす。次手。大上段からの振り下ろし、転がってかわした。


 振り下ろされた刀身は物見櫓の床を粉砕していた。木っ端がはじけとんでいる。


「話をしに来ただけと言ってるだろ。そんなに暴れないでもらいたい。っていうか、殺したら拷問もできないだろうが」


 あきらかに殺すつもりで切りかかってきている。


「うっせェ、ぶっ殺すぞ、ゴラァ」
 と、怒鳴ってきた。


「怒ると性格が激化するのも相変わらずだな」


「知ったような口を聞くんじゃねェ!」


 ブロンドのショートボブが逆立っている。全身から魔力があふれ出ているのだ。ふたたび斬りかかってきた。また大上段からの振り下ろしだ。剣を使っているが、べつに剣術に秀でているわけではないのだ。


 オレは跳ね上がって、いっきにフィリズマに接近した。振り上げたその手首をつかんだ。これで剣を振り下ろせない。


「すこし話をしたいだけだと言ってるだろ」


「シャラくせぇ。こちとら人間と話なんかしたくねェんだよ。よくも魔王さまを殺しやがったな。糞人間どもが! ゲロみたいに臭い息を吐き散らしてんじゃねェぞ。ブチ殺してやっから、そこでジッとしてろやァ」


 フィリズマが蹴り上げてきた。まさか赤いコタルディからの蹴りが来るとは思わなかった。その動きは目では見えていた。しかしカラダが追い付かなかった。見事に股の間を蹴りあげられた。


「痛っ」


 人間のカラダというのは、どうしてこんな弱点を股の間にぶら下げているのか。


「そのまま死にさらせや。糞人間! 魔王さまを殺した、てめェらなんて生きてる価値ねェんだよ」
 と、フィリズマは魔法陣を展開していた。


 赤い魔法陣。第1階層魔法。火球ファイア・ボールの魔法だ。火球ファイア・ボールは基礎的な魔法だが、使い手によってその威力は変わる。
 ただのパンチでも、筋肉のある者とそうでない者に差があるのと同様だ。


 オレのカラダを呑みこむほどの大きさの火球ファイア・ボールが射出された。


「ちッ」


 右手を前に突き出した。迫ってくる火球ファイア・ボールを握りつぶした。火の粉がはじけて、物見櫓に燃え移っていた。


「わ、私の火球ファイア・ボールを片手で握りつぶすとは、なかなかの手際ではありませんか」


「口調が穏やかになったということは、すこしは冷静になったということかな。フィリズマ」


「ええ。次は確実に仕留めてあげますわ」
 と、フィリズマは《獄魔刀》を構え直していた。


「《獄魔刀》」
 と、その剣の名をオレは呼んだ。


《獄魔刀》はフィリズマの手のなかで小刻みにふるえると、空中に浮かび上がった。そしてオレの手元に飛来してきた。


「なッ、どういうことですの? 《獄魔刀》に認められるなんて……」


「まずは自己紹介させてもらおう。オレは、魔王だ」


「なにをフザケたことを言っていますの? あなたが魔王さまのはずありませんわ。魔王さまはそもそも人の姿なんかしておりませんのよ」


 目を細めて、薄く笑って、フィリズマはそう言った。


「どうやら、人間として生まれ変わったらしい。転生というのかな」


「さては、私のことを惑わすつもりですわね。人間が何を言っても、説得力なんてありませんのよ。魔王さまは……魔王さまは……勇者に殺されてしまったんですもの。下劣な人間どもの手によって……ッ」


 物見櫓に燃え移った火が大きくなっていた。


「まぁ、たしかに人の姿で、オレは魔王だと言われても説得力はないかもしれん。だが、《獄魔刀》はオレを覚えてくれていたようだがな」


「それはっ……」
 と、フィリズマの目が泳いでいた。


 混乱しているのだろう。ムリもない。


「これが証拠になるかは、わからないが、ひとつ魔法を見せよう。オレの魔力を見れば、魔王であると確信するかもしれない」


 第8階層魔法。驟雨。青い魔法陣を展開して、物見櫓だけに雨を降らせた。燃え上がっていた物見櫓が、すぐに鎮火した。


「第8階層魔法……まさか、そんな……」


「ああ。魔王にしか許されないと世界を震撼させたレベルの魔法だ。これでオレが魔王だと認めてくれたかな?」


「では、私の年齢は?」


「850歳」


「魔王さまに仕えていた者たちの名は?」


「アルノルト。ユイブ。それからフィリズマ。その3人を重臣として用いていた」


「で、では、私の恥ずかしいと思っているホクロの位置は?」


「いや、さすがにそれはわからんが……」


 見た覚えもないし、聞いた覚えもなかった。


「では、ホントウに魔王さまなのですか?」


「《獄魔刀》が認めてくれている。それがなによりの証だろう。さっきも言ったが、この剣は使い手と殺した相手を記憶するのだ」


 フィリズマはヒザから崩れ落ちていた。

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