俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第52話 朝のスピーチを受けて

 本部に帰還したときにはすでに夕方になっていた。

 リッチとの戦いに勝利し、【形態変化フォルムチェンジ】という新しい力を手に入れた俺たちは、その疲労も相まってまずは各々自室に戻り休憩をとることとなり、今回の報告は俺が夜の会議で言うということになっている。

 本部に着いて分かれた俺たちはそのまま各々の自室へと帰還した。あと少しで夕食の時間なので、手短に体などを拭き、さっぱりしてから夕食の会場まで行く。

 そこにはすでに田中さんと青山さんがいて、夕食を食べていたので俺も一緒に座らしてもらって、食事をとった。

「この後会議ですよね?」

 と田中さんが効いてきたので、

「うんそうだね。大体あと40分後くらいに開始するって聞いてるよ」

 と答えると、真剣な面持ちで、

「今日のことは明らかな異常事態でした、自分たちも証人として呼ばれる準備をしておきますので、頑張ってください」

 といってくれた。もちろん俺の言う意見が疑われるだろうということを言っているのではなく、それだけの重大事件だったのでもし証人として聞かれた場合もちゃんと準備しておきますよという意味だ、なのでその好意をありがたく受け取り、感謝を伝えてから会議の場へと向かった。

 会議の場所は昨日と同じで、入ったらすでに半分ぐらいの人が座っていた。俺も昨日と同じ席に座ると、すでにいた叔父さんが話しかけてきた。

「よう、どうだった個々の魔物は。お前さんがいたところのゴブリンと比べて手ごわかったか?」

 と聞かれたので、

「そうだね、あとで会議の時に報告するけど結構なイレギュラーが起きたんだよね。かなり手ごわかったよ。でもそうだな、大体スケルトン、ゾンビあたりはゴブリンよりも若干強力だったね。」

「イレギュラー?大丈夫だったのか?」

「うん、何とかね。正直死ぬかと思ったよ。でもそれも含めて今回は話さないといけない情報があったから、あとでまとめて話すね。」

 そういうと、叔父さんは真剣な表情で「わかった」といい、そのまま静かに腕を組んで会議の開始を待つ姿勢に入った。

 しばらくすると、父さんたちも入ってきて、時間となったので会議が始まった。

「じゃあ、時間となったので今日のミーティングを開始する。まずは今日避難民の方たちに私たちのギルドに入らないか聞いた件について、石川報告を頼む。」

 そういわれて、サブマスターの経理担当責任者である石川さんが資料を見ながら答えた。

「はい、今回今朝の演説後に我々のギルド所属となって働きたいといってくれた方たちは、全部で235人に上ります。そのほとんどが比較的若い男女に当たり、避難民の中でもバイタリティにあふれる方たちでした。まだまだ様子見の方が多いですが、この調子だと最終的には皆さんのギルド所属体制も見えてくるかと」

「なるほど、初日でその人数は上々だろう。問題などは特になかったか?」

「はい今のところは。まだまだ雇用条件なども決まっておらず、最初は仮契約として一日ごとにspを渡すという方式なので。
 今後物価など計算しながら労働の対価としての価値がどのくらいなのかなど割り出しをしていきます。
 さらに弁護士や簿記など様々な専門職の方たちも所属してくれたので、現状可能なところから手を付けていき、少しずつ態勢を整えていくつもりです。」

 この内容、もちろん父さんはあらかじめ聞いていて、すでに動いているのだが、会議という名目で進めるので、俺たちみんなに伝えるためにこのようなやり取りをしている。

 ギルドのルールで法律の代用を行い、今後の治安維持をしていくという目的の第一歩なので、このやり取りはとても重要な話し合いだ。もちろん録音、記録など行っていて、今後文明が滅びなかったら歴史の教科書に載ってもおかしくない内容だ。

 そのあと、いくつか決まったことや、現状の給金。そしてギルドの財政情報などを大雑把に説明してもらい。石川さんの報告は終わった。

「石川ありがとう。とりあえず今後の方針などは今話した通りだ。当面の目標はギルド全体での黒字化と、治安維持の枠組みの構築だ。
 こんだけのことをやるんだから今まで政治家連中ができなかったいろいろなところの合理化や会社としての不採算部門の切り捨てなどガンガンにやって、企業として国の再生を行ってやろう。
 もちろん別に国を名乗るつもりもないが、商人として利益を追求する枠組みを構築し、法律の代わりに制定するルールも、ただ今までの法律をなぞるのではなく、一から作るのだからよりいいものにするつもりでやる。
 そうなるとおのずと、個人の意見で進めるとどこかしらでゆがみが生じるものだ。なのでできるだけ人選には気を使いつつも人員を増やし、誰かの利益になるのではなく皆の利益になるようなルール作りを意識していきたい。
 これはこのギルドの一大プロジェクトだ。長い時間をかけてやっていくことだが、皆よろしく頼む」

 そういって、話はまとまった。これはもう実質小さいながらも国を作り運営するのと同じ規模だ。国という枠組みの中で会社をやっているのとはわけが違うが、父さんならできるだろうという信頼があるし、俺も父さんからの信頼に応えるべく、俺のできることをしないといけないな。

「次に、鷹人。警備の方に集まった人員はどのくらいだ?」

「わかった。今回色人がやってくれたスピーチとデモンストレーションで警備として参加したいと申し出てくれた人は、先ほどの235人中48人だ。これはかなり集まった方じゃないか。
 この中のほとんどが10代、20代の若者で、男女比は2対8で男の方が多かった。まあこれは予想通りだな。
 戦闘職につけるとしても皆が戦闘職につくわけでもないし、ましてや命がけで戦うという性質上なかなか手を上げてくれない。そんな中ここまで集まったのは色人のお陰だと思う。
 今後も少しずつだが増えると思うし、この中でも警察のように警備や治安維持にあたるものと、今後の状況次第だが魔物を倒し、その死体やボーナスポイントなどで生計を立てるものなどと別れていくことを想定している。
 現状野蛮ではあるが、このギルドを支えている収入源が魔物討伐である以上こうしていくのが妥当だと思う」

 と叔父さんは話した。なるほどいわゆる異世界物で言う冒険者的な立ち位置か。俺もその辺は好きで漫画など読んでいたからなじみやすいな。でもその場合治安の悪化は否めないんじゃないかな……

 そう疑問を感じたが、おそらくその辺も考えられた居るのだろう。そうすると父さんが話し出した。

「なるほど、結構な人数集まってくれたようだね。現状魔物という脅威がある以上、戦力の増強は必須だ。それに人というものは儲かるところに集まるものだ。
 治安の悪化などはルール作りとこちら側がしっかりと戦力を保持することで対応するとして、その方向で進めよう。
 命の危険を冒して戦ってもらうのだから、それ相応のリターンも必要だろう」

 そうして、警備要員についての話は、そのあとに叔父さんが新人に稽古をつけたり、組織に組み込むためにいろいろやりだしたという報告を受け、終わった。

 どちらの話も、一日やそこらで結果が出るものではないから、これから育てる必要がある。しかし確実に復興と新しい基盤づくりが始まったと思う。

 ここまではほとんどの人が流れを理解してここに座っており、最終確認かつ記録のためにここで話されている内容がほとんどだった。そしてやっとほかに何か話すも物はいないかと父さんがみんなに聞いたので俺が話し出した。

「じゃあ俺から一つだけ。今日の午後警備部の田中さんと青山さんの三人で、支配領域の外まで出て魔物の討伐を行ったんだけど、そこで二人も聞いたことがないような異常事態にあった。これは共有するべきだと思ったし、正直俺も死ぬかと思った。」

 そういうと、さっき軽く話した叔父さんは真剣な表情で、そしてそれ以外の初めて聞いた人たちは驚いたような表情でこちらを見ている。

 ついに報告するときが来たな。これについては警備隊のみんなはしっかりと話し合って対策をとる必要がある。

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