俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第22話 宝箱

俺を先頭に、内海さん、一ノ瀬さん、ケビンの順番で一列になって迷宮の中を進んでいく。

 カツカツと靴が石畳に当たる音が反響している音だけが響き渡り、まだ魔物の姿は見当たらない。

「色人坊ちゃん、前はどんな感じですか?」

 そう聞いてきたのは後ろの内海さんだ。内海さんはすでに取り出している槍を構えており、いつでも戦闘可能な状態だ。

「そうだね、今のところまだ何も見えないかな、同じ道が続いているだけって感じ。」

「そうですか、ここに出てくる魔物ってどのレベルなんですかね。正直まだゴブリンしか相手にしたことないので…」

 そう内海さんと話していると、奥の方から声が聞こえてきた。恐らく俺たちより先に人が来ているとは思えないから、この声は魔物だろう。

 声が聞こえてきたことによって、皆警戒しながら奥をうかがうと、通路の奥から現れたのはもう見慣れた顔のゴブリンだ。

「なんだ、警戒して損したよ。ダンジョンの中だからといって、いきなり強い魔物が出てきたりとかはないみたいだね。」

 森の中を歩くよりは出会うのが早かったが、出てきたのがゴブリンだったこともあって、皆の気持ちは軽い。もうゴブリンごときに手間取る俺たちじゃない。

 ダンジョン内の通路は横幅が5,6mくらいで高さも4,5mくらいはある。4人が一斉に横並びになることは出来なくはないなくらいの狭さではあるがそこまで気になるようなものではない。

 奥から出てきたゴブリンたちも4匹と対応可能な数だったので、サクッと倒してしまおう。

「俺がまず出て行って、奥のやつから先に倒していくから、後ろのみんなは前から順にお願い」

 そういうとすぐに飛びだしていき、先頭のゴブリンの横を通り過ぎ、一番後ろのゴブリンの横まで行き、止まると同時に最後尾のゴブリンの首を切り裂く。

 何度も戦っていると自分の戦い方の癖みたいなものが出てくるが、俺は次の動きにつなげるために相手が複数の時は首を切り裂くことが多く、最後のとどめの時なんかに心臓や顔を突き刺すことが多い気がする。

 俺が最後尾のゴブリンの相手をしているときには、俺につづいて飛び出してきていた内海さんと一ノ瀬さんで、前方から戦っている。

 ケビンは今回の戦闘に関しては、見学に回るつもりなのか、少し距離を離したところで止まっている。

 相手がゴブリンだったこともあって、戦闘はすぐに終わり、こちらの被害も特になかった。

「ちょっと見させてもらったけど、ゴブリン程度だとなんも問題はないですね。でも森と違って障害物もなく、逃げ場もないことから考えて、ホブゴブリンレベルの敵が表れたとき、そいつを足止めすることが必要ですね、そうなると一番いいのが俺が相手をするか、次点で坊ちゃんが相手しないとほかの敵と戦えないですね。」

「確かに、ホブゴブリンクラスの敵はケビンが攻撃を受け止めるか、俺が回避しながら足止めしないと、戦闘自体が難しいかもしれない。」

 ケビンの指摘で、ちょっとでも強い敵が表れると、このダンジョンの中だと逃げることすら難しいということが考えられた。そうなると、早めに内海さんや一ノ瀬さんがホブゴブリンクラスを足止めできるだけの力を手にする必要がある。

 ダンジョン探索の新たな問題点に気づいた後も、探索は続く。しばらく歩くと分かれ道が表れた。

「分かれ道か、いよいよ迷路みたいになっている可能性が高くなったな。どっちに曲がる?」

 そうみんなに聞くと、一ノ瀬さんが。

「とりあえず、初めての曲がり角なので、こういう時に曲がる方向を決めときましょう。マッピング次第で考えることはできますが、何の情報もないときに決まった方向に曲がることにしておけば、何かあったときに迷う可能性を減らすことができます。」

 といってくれたので、その意見を採用して、取り敢えずこういう時は右から曲がることにする。

 右に曲がってちょっとすると、ゴブリンが5匹表れたが、今回はケビンも参加して一瞬で倒し進んでいく。

 また少し進むと、今度は三方向に道が分かれていた。先ほど右からと決めたので一番右の通路を進むと、行き止まりの奥に台座があり、それを守るかのようにゴブリンたちが並んでいた。

 台座には何も乗っていないが、ゴブリンの数が過去最大の8匹で、何かある気がしたのでゴブリンを倒すことにする。

 8匹は少しばかり数が多いので、俺とケビンでゴブリンたちを瞬殺していく。そして内海さん、一ノ瀬さんも加わって、全員を倒すのに数分で済んだ。段々戦うことに対して効率化が進んでいる気がする。

「ゴブリンの数がかなり多かったんだけど、何だったんだろうな…」

 そういってゴブリンたちをいつものようにポイントに変換しようとすると、何も乗っていなかった台座が光り、台座の上にひかりが集まっていき、ひかりが消えた後には一振りの剣が乗っかていた。

「うおっ、なんだこれは!」

 あまりに急な出来事に、思わず驚いてしまった。周りを見ると驚いているのは俺だけじゃなくみんな驚いていた。

「なんなんですかね今のは、いきなり光ったと思ったら、何もなかったところに剣が現れましたぜ…」

「わからない、でもこんな時のためにスキル鑑定を買ったんだ、ちょっと使ってみるよ」

 そういってケビンの疑問にこたえるべく、現れた剣にスキルを使う。

「【物品鑑定】」

 剣を調べてみると、特に何の変哲もない普通の剣だった。

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無骨な剣(低級):何も装飾の施されていない無骨な剣、強度もそこまで高くない

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 剣自体は何もおかしなところはなかった、おかしいのはいきなり現れたただ一点のみ。どういうことだろうと思い、今度は台座を調べた見た。

「【物品鑑定】」

 そうすると、やはりおかしいのはこちらの方だったみたいだ、台座の鑑定結果がこれだ。

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ダンジョンアイテムポイント:ダンジョン内に設置されてあるアイテムを出現させるための台座、これは台座を守護する魔物が倒されたときにアイテムを出現させる。守護する魔物が強いほど強力なアイテムや希少なアイテムが出現する。またまれに魔物のレベルと釣り合わないようなアイテムが出現することもある。
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 とこのように、今剣が出てきたのこの台座を守護していたゴブリンたちを倒したため、ダンジョンアイテムポイントが作動して、アイテムが出現したということなのだろう。

「調べた結果だと、この台座がダンジョンアイテムポイントというものらしく、守っている魔物を倒すと、アイテムが現れるらしい。アイテムの価値も魔物の強さに比例するみたいだ。」

 とそういって、試しに剣を買い取りにかけると5pにしかならなかった。5pならゴブリン退治ですぐに稼げるので、今回この剣は予備として保管しておくことにしよう。

「なるほど、そんなものもあるんですね。なんだかゲームの宝箱に近いものがありますね。」

 そういったのは一ノ瀬さんだ、確かに言われてみれば、ダンジョンを探索して、アイテムが出てくる。まさに宝箱みたいだな。正直ダンジョンアイテムポイントって長すぎるし、通称宝箱でいいか。

 そういって、ダンジョンアイテムポイント(宝箱)を後にする。

 先ほどの十字路に戻ってきて、同じように先ほど曲がった道、つまり今戻ってきた道の右側に曲がることにする。そうやって十字路のすべてを曲がったが、すべて行き止まりで、奥にゴブリンたちが待ち構えていた。

 しかし宝箱があったのは最初の道の行き止まりだけで、ほかにはゴブリンのみだったので、新たなアイテムは手に入らなかった。

 すべての道が行き止まりだったので、一番最初の曲がり角は左が正解の様だ。なので来た道を引き返す。

 道中リポップなのか、一度ゴブリンを倒したところでも戦闘が発生したが、相手はゴブリンなので大した問題もなく、初めの曲がり角に戻ってきたのだった。

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