俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第20話 作戦会議

「なんだ、あれは…」

 あまりの光景に言葉を失ってしまった。先ほど見た空間の裂け目も奇妙だったが、こちらは規模が桁違いだ。

 まず空が線を引いたようにあるところを境に紫色という時点で、今までだとありえない光景だ。そのうえ遠目に見るだけでもホブゴブリンなんかをはるかに上回る化け物たちがみられる。これらが出てくるとなると今の俺たちでは手も足も出ないだろう。それだけでも恐怖を思える。

「ケビン、あれ見えているよな…」

「ええ、空が割れていますし、あの魔物たち、今の俺らじゃ手も足も出ないですぜ」

「一体一体も強力だろうし、何しろ数が多すぎる。これが神の言っていた新しく与えられた地形ってやつなのか?」

 正直言葉が出ない、今までもあり得ないようなことが起こっていたが、すぐに対応できたこともあって順応してきたつもりだった。でもそれは甘かったようだ。世界は俺の想像をはるかに超える次元で変革を起こし、それに対応することは一日二日できるほど、やわなもんじゃないみたいだ。

 俺の好きな言葉で、「人の想像しうるすべての出来事は、実現可能な現実である。」というものがある。要するに可能性というものは何にでもあり、不可能なものは存在しない、存在したとしてもそれはそもそも想像すらできないという意味だと解釈している。

 しかし、ここまでの現実を俺は想像することができなかった、これからは起こっていることを受け入れて、より頭を柔らかくする必要がありそうだ。そうして自分の想像力以上のことに対しても順応していかないということだ。

 そんな世界の偉大さみたいなものに圧倒されながらも、止まっていた思考回路は徐々に現状を分析し始める。なぜこのような戦力があって昨日のうちに俺らの屋敷は滅ぼされなかったのか。考える選択肢はいくつかある。単純に見つからなかったのか、昨日の時点では兵力がここまでではなかったのか、この境界の外に出ることはできないのか、できたとしても何かしらの制約があるのかなど。

 どれが正解かわからないが、想像することによって対応が増え、不測の事態に対しても反応スピードが速くなる。みんなの命を預かっている俺にできることは、可能性を考え、今できる対応をすることだ。

 正直考えたところでできる対応はほとんどない、取り敢えずのレベル上げによる戦力増強、また外部と接触して仲間を増やすこともいいだろう。万が一の場合は屋敷を捨てて逃げることも考えなくてはいけない。

 屋敷には帰ってから話し合うことは多そうだ。そんな風に頭をフル回転させているとケビンが話しかけてきた。

「坊ちゃん、取り敢えず今日はここで引き返しましょうぜ、さすがに今できることはないでしょうし…」

「そうだな、でも待ってくれ、最後にこの割れ目を調べたい。勘なのだが鑑定できそうなんだ。」

 そういって、割れ目に向かって【物品鑑定】を行う、これは物品といっていいのかわからないが、やはり鑑定できた。

 鑑定結果には、今の現状に対するヒントにもなることや、対策を練らなきゃいけないことなどいくつも出てきたが、まとめるとこんな感じだ。

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【ダンジョン】:魔王が魔界の外に設置したダンジョン。周囲のMP(魔素)を吸収して成長する。成長限界になるとフラッド現象を起こし、内側の魔物たちがダンジョン外に放出される。成長限界に達したダンジョンは魔界まで広がっていき、魔界が拡張していく。現在の成長度は329/10000。
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 と出た、この文章だけでは確証はないが、言葉の意味合いから推測すると、目の前に広がっている不気味な空間が魔界で、目の前のこの裂け目がダンジョンというものらしい。ダンジョンとは迷宮みたいなものなのだが、漫画なんかでは中に魔物がいて、奥にあるコアみたいなのを破壊すると消滅するみたいなのがポピュラーだ、そしておそらくこれはそっちの意味だと思う。

 そして気になるのが成長限界、フラッド現象、魔界が拡張という単語だ。

 その鑑定結果からすると、このダンジョンを放っておくと、これから魔物たちがあふれ出し、この山の頂上まで魔界とやらに飲み込まれるということだ。

 かなりまずい現状ということと、まだ成長限界までにはかなり時間がありそうだということで、ケビンに戻る旨を伝え、屋敷まで帰ることに。

 屋敷に戻り、夕食を食べた後湯船につかって、体を休めた。その後みんなは寝るもの、警備に当たるもの、残っている仕事を終らすものと、電気は使えないが比較的自由な時間を過ごしている中。俺は何人かのメンバーを招集し、会議を開いた。

 集まってもらったメンバーは俺のほかに、ケビン、鈴木さん、慎太郎さん、七瀬さん、二子さんの合計六名だ。
 
 このメンバーは俺、ケビン、鈴木さんは幹部メンバーなのでもちろんのこと、現最高レベルになっている要の食料を担ってくれる慎太郎さん、警備隊の中でケビンの次に位置している七瀬さん、魔法部隊といっていいかわからないが、魔法職の中で現状一番の二子さんを集めた形だ、ここから後でみんなに伝えてもらおう。

 まず最初に俺とケビンがみたもの、そして俺が鑑定で得た情報を共有し、その後俺たちが出た後の屋敷の様子をうかがった。

「なるほど、屋敷は比較的平和に過ごせたみたいだね。魔物の襲撃もなく、警備の人で何とかなるくらいなのは朗報だ。ほかのみんなも順調にレベル上げが行われているようだし。
 あとは食糧問題なんだけど、現状俺とかが倒す魔物を変換することで、最低限のpの確保はできている状況だね。
 今はまだ消費が勝っているけど、今後もっと魔物を狩ることができたり、職人系職業の人が作ったものがpを稼げるようになるまでは、今ある貯蓄を切り崩せばなんとかなりそうだ。
 となるとやっぱり目下の問題は今日発見したダンジョンについてなんだけど、何か意見あるかな?」

 そういうと、皆一応に考え込んでしまう。その中で一番最初に発言したのは七瀬さんだ。

「まず現状として、順調にこの屋敷の戦力は強化されています。その中でダンジョンとやらの中に魔物たちがいるということなので、まずはダンジョン攻略を目標にするのがいいんではと思います。」

 確かに、これが一番か…、そう思っていると二子さんも発言した。

「そうですね。色人様の言うとおりならば、まだまだダンジョンが成長限界になるには時間がかかりそうですが、内部がどれほど広いのかわかりません。とするならば、攻略にかける時間は多いに越したことはありません。それにダンジョンが一つとも限らないですし」
 
 なるほど、どこかでこれ一つしかないように考えていたが、逆に一つしかないほうが不自然か…その考えはなかった。やはりみんなで話し合うと気づいていなかったことを気づける。

「確かに、二子さんの言うことももっともだね、そうしたらまずは今日見つけたダンジョンを攻略することを第一目標にしよう。屋敷内のことは引きつづき鈴木さんと慎太郎さん、よろしくお願いします。」

「お任せください」

 鈴木さんはそういって、丁寧なお辞儀をした。そして基本無口な慎太郎さんもペコっと頭を下げて了解の意を表してくれた。

「そうなると次に考えるのは、誰が攻略に当たって、誰が屋敷の警備にあたるのかなんだけど、どうかな?」

 その俺の疑問にケビンが、

「まずおそらく、ダンジョンを攻略するにあたって敵が強力なことが考えられる。そうなると俺と坊ちゃんは必須だな。」

 もしホブゴブリンやそれ以上の魔物が出てきた時、俺やケビンがいないとそれだけで危ないので、これに対しては反論はなかった。すると二子さんが、

「正直なところ魔法班はまだ戦闘能力が高くありません。スキルのアビリティは強力ですが、何度も打つことはできませんし、安全圏からの攻撃が精いっぱいなので、私たちは屋敷の警備でお願いします。」

 といってきたので、わかったとうなずく。すると続いて七瀬さんが、

「だとしたら警備班の中から何人か連れて行ってください。警備自体は魔法班と合同で、四人ほどいれば何とかなります。なので警備班から俺と加藤、そして小田、柳生を残して、内海と一ノ瀬を連れて行ってください。」

 といってくれた。ケビンを見ると、いいだろうといった感じにうなずいてので、了承して、明日俺とケビン、内海さんと一ノ瀬さんの4人でダンジョンに行くことにする。

 方針が決まったので、解散して、明日に備えて眠ることにする。

 昨日とは違って今日は安心して寝れそうだ。そんなことを考えながら目をつぶった。
 

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