俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第12話 ゴブリンたちとの死闘

 「ギャアアアー!」

 ゴブリン上位種(仮)の号令によって、五体のゴブリンが突撃してくる、今まで一度にゴブリン五体を相手にしたことはないし、今回のゴブリンたちは上位種の命令によって統率が取れていて、今までの意味もなくただ突っ込んでくるゴブリンとは違く、目の前で一体目のゴブリンが殺され、警戒して二体で連携をとってきたゴブリンたちの時と同じ感じを感じるが、それを踏まえてもあの一体の上位種を相手にする方が何倍も危険そうだ。

 その見解はケビンも同じだったようで。

「坊ちゃん、奥のあのでかいやつはやばい!、突っ込んできているゴブリンたちのことは任せていいか?おれがでかいのを相手する!」
「任せろ!」

 一瞬で意思の共有を済ませ、俺は向かってくるゴブリンたちを相手するため、その場にとどまり。ケビンは奥の上位種を相手にするために駆け出していく。

 ゴブリン側も考えは同じようで向かってくるゴブリンたちの横を通り過ぎるケビンのことは目もくれず。5匹のゴブリンは俺めがけて一心不乱に突っ込んでいく。

 ケビンと相対したゴブリン上位種が不敵な笑みを浮かべているのが気にはなるが、正直多少なりとも統率の取れているゴブリン5体相手の戦闘は、さすがに命の危険を感じるため俺もそっちに集中するしかない。

 走ってくるゴブリンたちを観察すると、皆装備品は一様でおなじみの棍棒と腰巻の原始人スタイルだ。

 統率は取れているといっても、ここは塀の外の森の中、あたりは木々が生い茂っており棍棒を振り回すには適しておらず。取り囲まれでもしない限り一度に相手にするのは多くて2体といったところだろう。

 弱点ともいえる急所は人体と同じ構造上、目や口、脳、首、心臓などだろう。うまいことここらに短剣を差し込みなるべく早く一体一体とどめを刺さないと、そのうち数の暴力で負けてしまう。

 戦闘の方針は決まった、一番はなるべく少ない工数で急所を突き、相手の数を減らしていくこと。次点で足や手の腱を切り裂き戦闘能力を削ること、これらに注目していこう。

 しかし、変わらずこちらの防御力に関しては一度でも棍棒の動きを食らえば戦闘に支障が出ることは間違いがなく、当たり所が悪ければ一発KO、あの世行きだ。

 ゴブリンたちの動きを見ながら、一か所にとどまらず木を利用しながら動き回ろう。

 そう決心し、見ると先頭のゴブリンが集団から少し離れていて、残りの4体はまとまっている。まずは先頭から処理しよう。

 先頭のゴブリンは走りながら棍棒を右手に持ち、全力疾走といった感じだ。どんどん近づいてきており、棍棒を振りぬくと当たる距離まで来ると、左下から右上に向かって棍棒を振りぬいた。

 しかしその間に位置を少し調整して、木の近くに立っていた俺は筋肉の収縮や目線の動き、最後は馬鹿正直に発した「ギャア」という掛け声、それらの情報から攻撃の始まりを予測し、攻撃とともにしゃがむことで棍棒の攻撃をかわし、先頭のゴブリンはこちらの予想通りに棍棒を、木の幹に思いっきり打ち付けその反動でのけぞった。

 そこですぐさま立ち上がり、心臓に狙いすましたひと突きを放ち、すぐさまその場を立ち去る。

 心臓を刺されてゆっくりと膝から崩れ落ちる先頭のゴブリンの後ろには、すでに4匹の集団が迫っていた。そこで俺は思いっきり右に向かって駆け出すことで、集団を揺さぶり集団を縦長の一列に変えた。

 ステータスの効果なのか、俺の速さはゴブリンよりも早く、思ったより距離ができてしまったので、今度は思い切って引き返し。一列となって走っているゴブリンの列に向かって突っ込んでいく。 

 急に反転した俺に対して驚いたのか、少しスピードを落とした先頭につられ、4匹のスピードが落ちたところをすれ違いざまに攻撃しようと思い近づく。

 持ってる棍棒を振り回すゴブリンの攻撃をかいくぐりながら、ゴブリンに対して切りかかるが、なかなか決定打は当てられないので、足の腱や腕なんかをすれ違いざまに切りつける。

 そんなことをしながら最後のゴブリンに切りつけて、通り過ぎた後に振り替えると手や足から血を流しながらも、どのゴブリンもまだまだ戦えそうだ。強いていえば傷口の周りは少し動きが遅いが、ほとんど変わらないだろう。

 しかし奴らの攻撃を受け止めることができない現状、このような動きを繰り返して行い。動きが鈍った隙を見て致命傷を与えるしかないのだ。
 
 立ち止まると囲まれてしまうので、サイドステップを踏みながら時計回りに、ゴブリンの周りをまわる。

 うまく木を障害物として使いながら奴らの攻撃をかわし、木に棍棒を打ち付けて反動を受けているところを下あごから脳天に一突きで一体、攻撃をかわしたときに隙ができたので後ろに回り込み、短剣で首を切り裂くことによってもう一体。合計二対の撃破に成功し、残るは二体。

 ここでうまく攻撃をさばけていたことで油断していたのか、あることについて考えていなかった。

 それとは魔物もスキルを使うことができるということだ。

 今までのゴブリンは使えなかったのか、それとも使う前にとどめを刺していたのか、本当のところは定かではないが、魔物のスキルの存在について考えていなかった。

 それはゴブリンの動きを誘導し、またしても棍棒の軌道上に木を持ってきて反撃に移ろうとした時のことだった。
 
 棍棒がうっすらと赤色に光るオーラに包まれ、「ギャア」とゴブリンが何かを発したことに意識を向けていなかったのだ。

 先ほどと同じように木に打ち付けた反動でのけぞると考えた俺は、奴が攻撃のモーションに入るときには反撃に向けて動き出していた。

 木によって見づらかったこともあるが、棍棒が赤く光っているのに気づいたときには、もう反撃のためにゴブリンに向かって重心が動いており。そこから離れようとしても間に合わなかった。

 ゴブリンの持っている棍棒の攻撃に、いつもと違う圧を感じた俺はとっさに反撃をあきらめて、棍棒と俺の間に木が入るように移動し、木と棍棒が当たるその瞬間に防御態勢を固めた。

 何とか止まってくれという俺の願いむなしく、とてつもない衝撃と主に棍棒は木の幹を砕きながら振りぬかれ、俺まで到達した。

 とっさに重心を後ろにずらし、攻撃に対して逆らわず威力を軽減することだけに集中した。

 その結果俺は棍棒の攻撃によって吹き飛ばされ2メートルほど後ろの木の幹にぶつかる。

 「っ」

 あまりの衝撃に息がつまり、一瞬意識が途切れそうになったが何とか持ちこたえた。

 棍棒の動きを受け止めた腕の骨は明らかに折れており、打ち付けた背中はかなり痛く、全身に力を入れることができない。

 朦朧とする意識の中、ここで意識を手放すと死ぬと思い、だんだんと集中状態に入っていく。

 木に打った時に頭から流血をしており、そのため頭に上った血が効いたのか、力が入らない体が余分な動きをなくしたのか。極限の集中状態に入ることで現状を打開しようと体が悪あがきをしている。

 今までも十分集中していたし冷静だったが、そこからは思考は敵を倒すこと以外のことを考えず、ただ効率的に体を動かす。

 立っているだけでもつらかったが、アドレナリンのおかげで動けるようになってきた体を動かし、残るゴブリンの処理に動く。

 折れた腕はぶらんとしながら、残っているほうの手で死神の短剣を握り、ゴブリンに向かって今までで一番の速さで突っ込んでいく。
 
 攻撃が当たったことでにやにやとしているゴブリンたちが、意識していないタイミングでの動きによって、まだこの動きにゴブリンたちは追いついてはいない。

 ステータス的にも速さは俺のほうが早く、そのマックススピードだ。ゴブリンたちは慌てて棍棒を構えるがもう遅い。

 「シッ、シッ」

 二匹のゴブリンの間を最高速度で通り抜けながら、死神の短剣を二回振り抜く。

 二匹の首の頸動脈を正確に切り裂き、そのまま通り過ぎ、後ろを確認するとゴブリンたちが首を抑えながら崩れ落ちる。

 まだ反撃する力があるかと警戒したが、そのまま弱っていき動かなくなったため仕留めたようだ。

 (どさっ)

 何とかゴブリンたちを倒すことに成功したことで緊張の糸が切れたのか、立っていられなくなりその場に倒れた。

「いってー…」

 体中が痛く、左腕も折れているようで動かせない。今まで経験したことのない痛みに戸惑いながらも生き残ったことに安堵の笑みがこぼれる。

 今日はこのまま眠ってしまいたいほど疲れているが、ケビンのほうが気になる。

 このままでは足手まといになるだけなので、ステータスボードを開いて、SPショップでポーション(中級)を購入し、すぐさま飲み込む。すると驚くことにすぐさま回復した。

 「マジか…」

 ポーションを飲み込むとすぐさま体中の傷が消えていき、折れた腕も感知し体力も戻ってきた。この効力でこの価格は安すぎるくらいだ。

 自分の身でポーションの効力を確かめた後、すぐに立ち上がり、ケビンのところに向かって走り出した。

 かなりの時間がかかってしまった。

 今の俺には祈ることしかできないが、頼むケビン生きててくれ!

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品