俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第11話 忍び寄る影

「【スラッシュ】」

「【クイック】」

「【攻撃力増強】」


 ゴブリンたちに近づくや否や、三人ともアビリティを使用した。物語のように技を叫びながら戦う姿はどこか滑稽でもあり、そしてアビリティが発動されるときに見られる、一瞬の光はどこか神秘的ですらある。

 初めて他人の発動するアビリティを見た感想としては、そんなとこだろうか。はたから見るとどのアビリティも強力そうで、先ほどのゴブリンとの戦闘も終始こちらが圧倒していたが、今回は一人につき一体を相手にしているにもかかわらず、先ほどよりも短い戦闘時間で決着がついた。 

 七瀬さんが放った【スラッシュ】は、発動とともに剣身が水色に光り、剣の軌道に沿って光が残るのは今が夜だからなのか、しかしそのような軌道がわかってしまうというデメリットをかき消すような威力がすさまじかった。MPを5と一番消費するこのスキルはゴブリンが振り回していた棍棒を打ち砕き、ゴブリンの体を斜めに切り裂いた。

 その威力はゴブリンの体が上半身と下半身の二つに分かれていることから察していただけるだろう。傷口は剣の性質からかたたき切ったようで、そのままゴブリンの死体が後ろに吹っ飛んだ。

 内海さんが放った【クイック】は、こちらも槍が青色に光り、明らかに突きの速さが早くなっており。突きの後に「ヒュッ!」っと風を切る音が聞こえてくるほどだ。一度目の発動でゴブリンの腹部を貫き、傷口をかばうようにしたゴブリンの頭部を二回目の発動で貫き倒した。

 【クイック】のスキルはゴブリンに対してはオーバーキルであった【スラッシュ】とは異なり、しっかりととどめを刺す堅実的なスキルなのだろうか、現状はこちらの方が使いやすそうだ。

 最後に加藤さんの【攻撃力増強】だが、、発動とともに全身がうっすら青色の光で覆われ、なんだか圧力が増したように感じた。一秒につき1MP消費するという性質上、あまり長く使えないと判断したのか。戦闘自体は七瀬さんと同じほど短く終わった。

 一手目でゴブリンの棍棒を受け止め、そのまま棍棒を持ちながらゴムリンのおなかをいわゆるヤクザキックで蹴り飛ばし、棍棒を奪い取ったままその棍棒でゴブリンの頭部を叩き潰した。

 戦闘自体はどれもこちらの圧勝といっていい結果に終わり、ゴブリンをポイントに変えつつ使用感などを聞いていく。戦闘用アビリティも俺の使用した【物品鑑定】とあまり変わらず青色のオーラのような光を放ちながら結果を与えてくれるようだ。

 体から何かが抜けていく感覚とともに何か不思議な力によって過程を無視して、【スラッシュ】だったら剣戟の威力そのものが大きくなって、【クイック】だったら槍の突きの速さそのものが増し、【攻撃力増強】だと込めている力は同じなのにそこで生まれる結果が変わるといった具合に、アビリティを使用すると生まれる結果が変わるみたいだ。

 使用感を聞いていると、皆一様にまだまだ力に振り回されている感が否めないとのことだったので、ただアビリティを使用するだけではなく、その力を使いこなさないといけないようだ。まだまだ皆MPの総量も多くなく、そう何度も使用できないが、これから適度に使っていきながら鳴らしていく必要があるだろう。 

 そうやって、まだまだスキルやステータスに関して理解出来てないので、こういった毎回のフィードバックを徹底しているが、そこでうれしい知らせがあった。

 今回の戦闘で三人のジョブレベルが上がり1になったのだ。まずジョブレベルが上がるだけでステータス加算が行われるので、単純に戦力アップになるのでこれは現状戦闘班にとって欠かせない要素の一つだ、そんな三人のステータスがこちらだ。

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 名前:七瀬 建ななせ けん
 種族:人族
 職業:剣士
 ジョブレベル:1
 必要経験値:1/20
 【ステータス】
 M  P:6+6×0.1×1=1/7
 攻撃力:8+8×0.3×1=10
 耐久力:7+7×0.3×1=9
 速 度:6+6×0.2×1=7
 知 力:6+6×0.1×1=7
 【所持スキル】
 剣術 レベル 1【スラッシュ 5MP】
 【所持SP】
 30P
 【装備品】
 無骨な剣
 【その他】
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 名前:内海 航平うつみ こうへい
 種族:人族
 職業:槍士
 ジョブレベル:1
 必要経験値:3/20
 【ステータス】
 M  P:6+6×0.1×1=4/7
 攻撃力:8+8×0.3×1=10
 耐久力:7+7×0.3×1=9
 速 度:7+7×0.2×1=8
 知 力:6+6×0.1×1=7
 【所持スキル】
 槍術 レベル 1【クイック 1MP】
 【所持SP】
 20P
 【装備品】
 無骨な槍
 【その他】
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 名前:加藤 元輝かとう げんき
 種族:人族
 職業:戦士
 ジョブレベル:1
 必要経験値:5/20
 【ステータス】
 M  P:5+5×0.1×1=2/6
 攻撃力:8+8×0.3×1=10
 耐久力:8+8×0.3×1=9
 速 度:7+7×0.2×1=8
 知 力:5+5×0.1×1=6
 【所持スキル】
 身体強化 レベル 1【攻撃力増強 1MP/s】
 【所持SP】
 10P
 【装備品】
 なし
 【その他】
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 とこうなった、ここで分かったことはまずステータス加算は四捨五入であること、レベルが上がってMP最大値が増えてもその分のMPは手に入らないこと、もっと言うとよくゲームなどであるレベルが上がると体力なども併せて回復するなどの都合のいいことはないことだ。

 攻撃力などは、俺の最初の戦闘中に途中から動きがよくなっていたことから、レベルアップと同時に反映されるのだろうが、体力などを回復するにはしっかりと休息をとる必要がある。言っていることは当たり前だな。

 ちなみにMPの回復速度なのだが、個人差があった場合あまり役には立たないと思うのだが、体感として一時間で大体3~4回復した。これは時間あたりに全体の何%という計算なのか、時間当たりいくつといった計算なのか、わからないが今までの傾向からして、呼吸なんかで回復しているのだとすると%ではないような気がする。実際のところ仕組みなどはわからないがそこまで外れていないような気がしている。 

「とりあえずこれで、監視モニターから見えていたゴブリンは始末できたな。」

 ひとまずこれで、ひと段落だな。いきなりの戦闘だったが気づいたときには普通に戦うことができていたし。今後のためにも結果いい経験を積んだ。

 そうやって今回の一連の出来事に対して自分の中でまとめているとケビンが。

「じゃあ坊ちゃんも言ってたとおり、これでとりあえずの危機は去ったとみていいだろう。この後は一応この屋敷の周りにまだ奴らがいないのか、見回りをしてから帰ろう。」

 というので、

 「どうする、みんなで一緒に回るか?それとも二手に分かれて回るか?正直戦ってみた感想としては二手に分かれても大丈夫だと思うんだが」

 と聞いてみた、正直もっと強い魔物や、大勢でゴブリンたちが表れる可能性自体は捨てきれないが、ここは二手に分かれてすぐに帰りたい気持ちのほうがつよかった。

 ケビンは一瞬考えたが、大丈夫だろうとの判断を下し。俺とケビンで北の方を見てから門まで回る反時計回りの遠回りを担当し、残りの三人はそのまま門の方まで向かい、榊原さんたちに合流して塀の修復作業と、荒らされた部屋の簡単な掃除をやっといてもらうことにした。

 まだあたりは暗く、いつゴブリンたちが表れるかわからないが、ケビンとなら何とかなるという安心感からそこまで不安にもならず。あたりを警戒しながら巡回を始めると。ケビンが今回のことについて話してきた。

「坊ちゃん、正直どうですかい?生き物を殺すっていう行為は基本的に精神的苦痛を伴うものです。ましてや普段から戦闘行為に対して慣れていない人は特に。はじめはアドレナリンで気づかなくても後になって手が震えだすなんてこともよくあります。いわゆるPTSDってやつです。だいじょうぶですかい?」

 ケビンにそう聞かれて、もしかしたら怖かったのかもと思い考えてみるが、特になんともなかった。

「確かに今考えると、初戦闘であそこまで動けるとは自分でも思わなかった。でも俺は正直なんともないな。ゴブリンたちにたいしてどちらかが死ぬまで安心できないような、絶対的嫌悪感みたいなのを感じていたし。正直奴らを殺すことに対しての抵抗はなかった。これが同じ人間とかだと違うのかもしれないけどね」
「そうですかい、確かに奴らに対しては本能的に見ただけで敵だと感じたし。そういうもんですかね」
「そうだね、でも俺は大丈夫だったけど、もしかしたらほかのみんなの中にはあとで怖くなる人もいるかもしれないし、その辺のフォローはケビンに任せるよ」

 もしかしたら俺の職業【死神】に関係しているのかもしれない。そもそもこんな職業が出てくるということは俺はいわゆるサイコパスなのかもしれないし、ほかの人が精神的に追い込まれてしまっても何らおかしくはないと思う。

 そう思ってケビンに任せた。

「わかりました。もし軟弱なやつがいたら叩き直してやりますぜ。どちらにしろ明日以降は戦闘班の強化と連携の練習。明確な敵がいるならこの辺も怠るわけにはいかないですしね。屋敷の戦力に関しては任せてください。坊ちゃんもビシビシ鍛えさせていただきますぜ」
「確かに、俺も戦い方なんかは全く知らない。お手和らかに頼むよ」

 ケビンと今後について話しながら、屋敷の周りをまわっていたが、北側のほうに来た時に空気が変わったことを感じた!。

「ケビン!」
「坊ちゃん!」

 ケビンとアイコンタクトを取り二人で息を沈め、あたりを警戒していると。山の北側、つまり森の奥の方から先ほどとは比べられないほどの圧を感じ、こちらも戦闘態勢に入る。

 奥から奴らが近づいてきているのは感じるが暗闇であまりわからない、「ギャアギャア」と鳴き声が聞こえてくるだけだ。

 奴らがいつ来てもいいように森の奥を警戒しているが、極限状態で一秒が一分にも一時間にも感じるほどの中待ち構えていると、ついに奴らの姿が月明かりに照らされて見えてきた。

 十メートルほど奥の木々の間から姿を現したのは、5匹のゴブリンとそれよりも一回りほど大きく、ゴブリンたちよりも知性を感じる目をした別の魔物だ。

 ゴブリンの上位種と思われるそいつと目が合った時に、戦闘開始の合図がなる。

「ギャアアアー!!!」

 上位種の号令を受けて5匹のゴブリンたちが一斉に駆け寄ってくる。



 まだまだ今日のメインイベントはこれからだったのだ。これから俺とケビンで文字通り命を懸けた魔物との戦いが繰り広げられる!

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