俺【死神】になりました ~喧嘩もしたことない俺の、選べる職業が【死神】だった!?~

伝説の孫の手

第1話 現状把握その①

 「なんだ?」

 突如として頭の中に神と名乗る者が語りかけてきて、おかしくなったのかと思い周りを見ると、皆困惑の表情で頭を抱えている。どうやら自分の頭が変になったわけではなさそうだ。

 今日は1月1日、正月だ。時間にして朝の9時半、年末のガキ〇カや、歌合戦なんかを見て夜更かしした人だとまだ寝ている人も多いのではないか。

 正月といえばお年玉や親戚で集まっておいしいご飯を食べるのが一般的だが、うちはちょっと違う。お年玉はありがたいことに裕福な家庭なのでお金は普段から十分もらっており、わざわざもらうことはない。正月は別々に暮らしているために会うことができない忙しい両親と会える貴重な機会なのでこの後向かう予定ではあったが、この様子だとのんきに正月を楽しむことは無理そうだ。

 両親と別々に暮らしているのは、何も仲が悪いというわけではない。単純に会社付近の都心に両親、学校の近くに俺が住んでいるというだけのことだ。

 俺が住んでいるのが一応昔からある黒神家の屋敷で、何度も改築を重ねているから十分きれいなのだが、いかんせん広すぎる。まず敷地面積だけで言えば山一つがまるまる敷地というだけで察していただけるだろう。そのうえ屋敷もかなり広いので、どうやっても一人では生活できない。なので住み込みの家政婦さんと警備員、執事とかなりの人数が生活している。

「坊ちゃん、これって……」

「爺、とりあえず屋敷のみんなを大広間に集めてくれ、ちょっと状況を把握したい」

「かしこまりました、直ちに」

 今話しかけてきて、みんなを集めに行ったのが執事の爺だ、名前は五十嵐 半蔵いがらし はんぞう。小さいころから面倒を見てくれている本当のおじいちゃんみたいな人だ。学校の送り迎えやスケジュール管理と、爺なしでは生きていけないのではないかというくらいお世話になっている。

 しばらくしてみんなが大広間に集まった。

「みんな、さっきの神とやらの話は聞こえたか?」

 皆静かにうなずいている。どうやら本当にすべての人に対して起こったことらしい。先ほどの揺れと相まって信じるしかなく、かなりの緊急事態であることは間違いない。

「そうなると、正直まだ信じられないが先ほどの話は本当なのだろう。とりあえずみんな、ステータスボードとやらを出して確認してみよう」

 そういって心の中でステータスと念じた。そうすると目の前にいきなり半透明の板が現れた。触ることはできないが操作することはできるので、板というよりSF映画とかに出てくるホログラムとかのほうが近いのかもしれない。

 周りを見ると皆目や手が動いていることからステータスボードを確認していることは間違いなさそうだが、他人には見えないらしい。もしくは、本人が見せようとしなければ見えないのかもしれない。
 
 とりあえず自分のステータスボードを確認してみよう。

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 名前:黒神 色人くろがみ しきと
 種族:人族
 職業:まだ選択されていません【選択可能ジョブ:死神】
 ジョブレベル:0
 必要経験値:0/0
 【ステータス】
 MP:10/10
 攻撃力:8
 耐久力:8
 速 度:11
 知 力:10
 【所持スキル】
 なし
 【所持SP】
 0P
 【装備品】
 なし
 【その他】
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 かなり簡単なステータスだな、とりあえず選択可能ジョブが死神ってところが気になるが、そこ以外は今の段階だと特にこれといっておかしなところはないように思える。しかし神はいろいろ便利な機能や必要な機能が入っていると言っていたが、特に見当たらないな。隠しボタンなんかもなさそうだ。

 その他ってなんだ? そう思った途端にいきなり文字が浮かび上がってきた。

(その他を開きますか? YES/NO)

 「!」

 不意を突かれて驚いたが、ここはYESしかないな。そう思うと画面が切り替わった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 【その他】
 【SPショップ】
 【サービス】
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 戻れるのかと思うと閉じるかどうかの文字が出てきたので、今回は閉じずにSPショップとサービスを調べていく。SPショップに意識を向けると買取か販売が選択でき、とりあえず買取を選択してみた。

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 【SPショップ/買取】
 何を買い取りますか?
(買い取ってほしいものをステータスボードに押し付けるか、簡易アイテムボックスの中から選んでください)
 【簡易アイテムボックス】
 なし
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 いきなり情報量が多いが、SPショップ/買取では何かを買い取ってもらえるらしい。とりあえず今手元にあるもので確かめてみよう。簡易アイテムボックスも気になるが、今は何も無いようなので後回しだ。

 とりあえずもしキャンセルできない場合も考慮して、なくなっても大丈夫なもので試してみる。ちょうどポケットに入っていたハンカチを押しつけてみる。そうすると何の抵抗もなくステータスボードに入っていき、文字が浮かび上がった。

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 ハンカチ 中級 → 1p
 交換しますか? YES/NO
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 なくなってもいいと思ったが、そこそこいいブランド物のハンカチで1pというのはどうなんだろうか。とりあえず交換しないを選択すると、ステータスボードから押し出されるように出てきたので慌ててキャッチする。

 財布の中から一万円札を取り出して押し当てると同じように入っていき、また文字が浮かび上がってきたが、今度は少し変だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 紙幣 (一万円):お金を感知しました、一年間の執行猶予期間中のため固定価格で取引いたします。
 紙幣 (一万円) → 100p
 交換しますか? YES/NO
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 お金を感知しました、一年間の執行猶予期間ということは一年後には価値がなくなっているということか?でも納得できるな、確かに世界が変わってしまったということは国の概念も崩れる可能性がある、そうなったときもちろんお金の価値もなくなる、逆に言うと秩序が問答無用で奪われた世界で一年間だけでも価値を保証してくれるのは良心的だな。

 こんな世界にした神に感謝はしないが、このステータスボードを作ってくれたおかげでただ人類を滅ぼしていのではなく、生きる道もあるということだな。

 100pがどんなものかはわからないが、このp(ポイント)は新しい世界での貨幣の代わりになるものというわけか。今となってはもう必要ないだろうし、お金は全部変えてしまおう。この家の中にはかなりのお金や貴重なものがあるが、その辺の扱いは後回しにして、とりあえず持っていたすべての現金をpに変換した。

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 現在の所持p 2358p
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 高校三年生にしては現金を持ちすぎている気もしていたが、今回に関してはそれが吉と出たな。

 2358pというのがどのくらいの価値なのか調べるために、今度はSPショップ/販売を開いてみる。単純計算で1p100円換算なのだが、pがどれだけの価値を持つのかを知る必要がある。

 最初に確かめたハンカチは、勿論100円でなんか買うことはできない。当たり前だが、買うときのほうが売るよりも値段が高いだろう。

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 【SPショップ/販売】
 【スキル】
 【武器】
 【防具】
 【アイテム】
 【素材】
 【生活用品】
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 販売の方ではスキル、武器、防具、アイテム、素材、生活用品が購入可能なようだ、試しにスキルのほうを見てみたが、その数は膨大でとてもじゃないがすべてを見ることはできない。

 イメージすると絞り込むこともできたので、おそらく他のものも同様だろう。しかし必要pの低い順に並べ替えても、最低で10000p必要なので、現金換算で100万円以上からとなるとかなり高額であることがうかがえる。しかしこの世界で生きていくには必要になってくると思われるので、いずれ購入することになるだろう。
 
 武器、防具も内容は想像通りで、いくつか購入することは可能だったが、そもそも武器や防具の相場を知らないし、試しに買ってみるには高かったのでいったん後回しだ。

 アイテムは漫画や小説に出てくるようなポーションや、パワーアップアイテムからマジックアイテムと思わしきものまでラインナップは充実しており、一番低級のポーション(傷薬)で一本10p、一番低級のマジックポーション(おそらくMPが回復するのだろう)で一本150pした。

 しかしこれも高いのか安いのかわからない。1000円で傷を治せるとなると安い気もするが、どこまで効力があるのかわからないし、今の世界で試しに傷を負ってみる勇気はない。確実に医療崩壊は起こるであろうからこのポーションが命綱だろう。

 素材は、鉄、石、木の枝など何でもあって、これらを使って物を作っていくことが可能なのだろう。これだけでも資源の枯渇などを気にしなくてよくなるので革命的だが、石が一つ50pすることから、どの大きさなのかはわからないが、それなりに高い価格設定なのだろう。

 最後に生活用品を見ると、ありとあらゆる生活用品が購入可能だがその中でお目当ての食料が存在した!正直一番の懸念材料が食料だったので購入可能なのはかなりありがたい。腹が減っては戦はできぬではないが、人間生きていくのに必ず食料は必要になってくる。

 おそらく物流も途切れてしまっている現状、いつ食料が底をつくかもわからないのと、手に入れることが可能なのとでは全く異なるからだ。

「食パンが20pだと!!」

 思わず声が出てしまった。今の時代コンビニに行けば100円で買える食パンが20倍の価格設定なのだ。屋敷にいる人間は俺を含めて22人、一日で消費する食料の量を考えると、正直全く持ってわからないがそんなに長く持たないであろうことは想像がつく。この時点で何とかしてpを稼ぐ方法を見つけるか、自給自足を可能にするしかないことが決まった。

 今現状この屋敷の中での最高責任者は俺だ、みんなに助けてもらっても何とかして状況を打破しないといけないだろう。

 現状は思ったよりも厳しいということが段々とわかってきた。

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