EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
125 タイムリミット
とにもかくにも眼前の機獣スライムを倒さなければ、時空間転移システムのコアユニットを操作することができない。
しかし、弱点とも言える核は正にそのコアユニットそのもの。
しかも、パーツがバラバラの状態でスライムの体内に散らばっていると来た。
これでは下手に攻撃をすると暴走をとめられなくなる恐れがある。
それどころか、暴走に拍車をかけてしまう可能性すらあった。
ならば、どうするべきか。
そうアテラとフィアのシールドに守られながら考えていると、その間に機獣スライムはマグ達を取り込もうとするように光の膜を包み込んだ。
ここまで来て退く気は毛頭ないが、退路を断たれた形だ。
「…………一先ず、判断材料を増やしましょう」
そんな状況を前にして、アテラは冷静に告げると自身の腰の辺りにスカート状に配置されているタングステン板を一枚動かし始める。
先史兵装【フロートバルク】によって操作されたそれは、浮遊したままシールドの境界へと緩やかに近づいていった。
「フィア」
「はい! おかー様!」
呼びかけを受け、フィアはタングステン板とシールドを同期させたようだ。
アテラの体に合わせて塗装された金属のプレートが、二人が作り出した光の膜を通過していく。すると――。
「うわ……」
機獣スライムのゲル状の肉体に触れた瞬間。
タングステンの塊は僅か数秒の内に全て溶けて跡形もなくなってしまった。
「嘘だろ。いくら腐食液のカクテルみたいなものだからって、こんな早く溶け切る訳がない。余りにも反応が速過ぎる」
少なくともマグの常識では異常過ぎて、思わず呆然とした声を上げてしまう。
「革新の判断軸・改良の断片が化学反応を加速させてる」
それを受け、ククラが目の前で起きた現象の理由を告げた。
「革新の判断軸・改良の断片……?」
聞き覚えがあり、口の中で小さく繰り返す。
「それって確か……」
メタが理解の断片と並んで追い求めていた断片だったはずだ。
自らの能力を拡張、強化する方向性で欲していたもの。
最後の最後になって、それが障害として立ちはだかってきたということか。
「無制限で使える物凄い触媒があるようなものデスね」
「廻天の断片による自己修復を、更に【アクセラレーター】で超加速してたはずなのに……それを上回る腐食速度になる程ってこと?」
ドリィの問いかけに、ククラが小さく首を縦に振って肯定する。
アテラを見ると、既に一枚失われていたスカート部が完全な形に戻っている。
それ程の自己修復速度を超えていると考えると、増幅率は相当なものだろう。
さすがはあのメタが探し求めていた断片と言うべきか。
「チート染みてるな」
勿論、効果対象次第ではあるのだろうが、このシナジーは厄介にも程がある。
せめて自己修復機能で腐食を抑え込むことができれば。
あるいはコアユニットがバラバラではなく形が整っていれば、まだやりようもあったかもしれないが……今そのような仮定をすることに意味はない。
事実を受けとめた上で目の前の問題に対処しなければならない。
しかし――。
「困りましたね」
アテラがディスプレイを黒寄りの青に染めて言い、万策尽きたかのように俯く。
他の皆も似たような様子だ。
この機獣スライムには一目で脅威が分かるような派手さはないが、迂闊に手を出すことができない厄介さがある。
その上、半ばコアユニットを人質に取られているような状況。
人間を遥かに凌駕する処理能力を有しているアテラ達でさえも、打開策を思いつくことができないようだ。
にもかかわらず、単なる人間であるマグが思考を巡らせても無駄だろう。
そうは思いながらも、頭の中で手札を並べていく。
メタとの最終決戦で増えたものは勿論、元からあるものも全て。
「…………いや」
そこでふと思い至ったことがあった。
そして、彼女達は思いつくことができなかったのではなく、思いついたことを口に出せなかったのではないか、という考えが浮かぶ。
だからマグはアテラ達一人一人に視線をやってから、自分自身の手を見詰めた。
「パパ」
と固い声でククラに呼ばれ、顔を上げて彼女を見る。
「微弱だけど、空間が振動を始めてる」
「なっ、タイムリミットか?」
「多分、まだ少しだけ猶予はある。けど……」
「そう長くはない、か」
引き継ぐように告げたマグの言葉に、ククラは深刻そうな顔で頷く。
口振りからして、数日とかそういう単位ではもはやなさそうだ。
かと言って数秒とか数分とか、既に挽回不可能な状況という訳でもないだろう。
数十分。あるいは数時間というところか。
宇宙崩壊の危機。
今すぐ覚悟を決めろと促しているのかもしれない。
しかし、弱点とも言える核は正にそのコアユニットそのもの。
しかも、パーツがバラバラの状態でスライムの体内に散らばっていると来た。
これでは下手に攻撃をすると暴走をとめられなくなる恐れがある。
それどころか、暴走に拍車をかけてしまう可能性すらあった。
ならば、どうするべきか。
そうアテラとフィアのシールドに守られながら考えていると、その間に機獣スライムはマグ達を取り込もうとするように光の膜を包み込んだ。
ここまで来て退く気は毛頭ないが、退路を断たれた形だ。
「…………一先ず、判断材料を増やしましょう」
そんな状況を前にして、アテラは冷静に告げると自身の腰の辺りにスカート状に配置されているタングステン板を一枚動かし始める。
先史兵装【フロートバルク】によって操作されたそれは、浮遊したままシールドの境界へと緩やかに近づいていった。
「フィア」
「はい! おかー様!」
呼びかけを受け、フィアはタングステン板とシールドを同期させたようだ。
アテラの体に合わせて塗装された金属のプレートが、二人が作り出した光の膜を通過していく。すると――。
「うわ……」
機獣スライムのゲル状の肉体に触れた瞬間。
タングステンの塊は僅か数秒の内に全て溶けて跡形もなくなってしまった。
「嘘だろ。いくら腐食液のカクテルみたいなものだからって、こんな早く溶け切る訳がない。余りにも反応が速過ぎる」
少なくともマグの常識では異常過ぎて、思わず呆然とした声を上げてしまう。
「革新の判断軸・改良の断片が化学反応を加速させてる」
それを受け、ククラが目の前で起きた現象の理由を告げた。
「革新の判断軸・改良の断片……?」
聞き覚えがあり、口の中で小さく繰り返す。
「それって確か……」
メタが理解の断片と並んで追い求めていた断片だったはずだ。
自らの能力を拡張、強化する方向性で欲していたもの。
最後の最後になって、それが障害として立ちはだかってきたということか。
「無制限で使える物凄い触媒があるようなものデスね」
「廻天の断片による自己修復を、更に【アクセラレーター】で超加速してたはずなのに……それを上回る腐食速度になる程ってこと?」
ドリィの問いかけに、ククラが小さく首を縦に振って肯定する。
アテラを見ると、既に一枚失われていたスカート部が完全な形に戻っている。
それ程の自己修復速度を超えていると考えると、増幅率は相当なものだろう。
さすがはあのメタが探し求めていた断片と言うべきか。
「チート染みてるな」
勿論、効果対象次第ではあるのだろうが、このシナジーは厄介にも程がある。
せめて自己修復機能で腐食を抑え込むことができれば。
あるいはコアユニットがバラバラではなく形が整っていれば、まだやりようもあったかもしれないが……今そのような仮定をすることに意味はない。
事実を受けとめた上で目の前の問題に対処しなければならない。
しかし――。
「困りましたね」
アテラがディスプレイを黒寄りの青に染めて言い、万策尽きたかのように俯く。
他の皆も似たような様子だ。
この機獣スライムには一目で脅威が分かるような派手さはないが、迂闊に手を出すことができない厄介さがある。
その上、半ばコアユニットを人質に取られているような状況。
人間を遥かに凌駕する処理能力を有しているアテラ達でさえも、打開策を思いつくことができないようだ。
にもかかわらず、単なる人間であるマグが思考を巡らせても無駄だろう。
そうは思いながらも、頭の中で手札を並べていく。
メタとの最終決戦で増えたものは勿論、元からあるものも全て。
「…………いや」
そこでふと思い至ったことがあった。
そして、彼女達は思いつくことができなかったのではなく、思いついたことを口に出せなかったのではないか、という考えが浮かぶ。
だからマグはアテラ達一人一人に視線をやってから、自分自身の手を見詰めた。
「パパ」
と固い声でククラに呼ばれ、顔を上げて彼女を見る。
「微弱だけど、空間が振動を始めてる」
「なっ、タイムリミットか?」
「多分、まだ少しだけ猶予はある。けど……」
「そう長くはない、か」
引き継ぐように告げたマグの言葉に、ククラは深刻そうな顔で頷く。
口振りからして、数日とかそういう単位ではもはやなさそうだ。
かと言って数秒とか数分とか、既に挽回不可能な状況という訳でもないだろう。
数十分。あるいは数時間というところか。
宇宙崩壊の危機。
今すぐ覚悟を決めろと促しているのかもしれない。
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