EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
106 急転直下
「何にせよ、協力してくれるのであれば情報を共有するし、たとえ器を入手できなかったとしても君の希望を叶えて上げよう」
「ありがとうございます。助かります」
【エゴトランスファー】によって魂を移す際に拒絶反応が生じない器を、未踏破あるいは未探索、未発見の迷宮遺跡から探し出すという依頼。
しかし、手がかりもほとんどない以上、確実に達成できるとは言い切れない。
スピルがそう明言してくれたのは実にありがたいことだ。
いずれにしても、研究と再現も含めると時間を要する可能性が高い話。
こうして清適の街・医療都市ポリークの管理者たる彼女と面識を得られたことこそが、今回の最大の収穫かもしれない。
迷宮遺跡で見つけたククラのこともそうだが、向学の街・学園都市メイアで受けた依頼は多大な利益をマグ達に与えてくれたと言うことができるだろう。
「ところで、未探索や未発見の迷宮遺跡の情報はありませんか?」
「いくつかある。少し待て」
スピルはそう答えると、しばらく瞑目してからオネットに視線を向けた。
対してオネットは一つ頷いてから「受け取ったデス」と告げた。
「では、私は研究に戻る。一日も早く、器を完成させねばならないからな。人間のためにも、私自身の探求心のためにも」
「分かりました。失礼します」
機械の体に溢れんばかりの情熱を宿した彼女に頭を下げ、部屋を出る。
本当に機人は皆、己に課した存在意義に懸命だ。
「…………ただ、余所との情報のやり取りもほとんどないようなので、定期的に見に来ないと研究が進んだとしても分からないデスね」
向学の街・学園都市メイアとぐらいしか交流がなさそうだし、状況を確認するにはローフェに確認するか、ここに直接来るしかないだろう。
「そうなると、時空間転移システムの問題が片づいたら、ここを拠点にして活動した方がいいかもしれないな」
廊下を歩いて街の出口へと向かいながら。
そう頭の中の考えを口に出していると、クイクイと腕を引っ張られる。
見ると、ククラが何か言いたげに見上げていた。
「そう言えば、ククラの力で器に必要なものを理解したりできないデス?」
「大体分かった。けど、材料が足りない。極めて特殊な物質が必要」
「それはここで作れるものなのか?」
驚きと期待を声に滲ませつつ問いかける。
その情報次第では一気に研究が進展するかもしれない。
そう思ったが、彼女は首を横に振った。
「設備が足りない」
そして簡潔に答えてから、更に言葉を続ける。
「少なくとも超重力場を極々局所的に発生させる装置が必要。数マイクロの精度で正確に。これも一から作り上げるか、どこかの迷宮遺跡から持ってくるしかない」
口調はどこか舌足らずな感じがあるが、補足自体は淀みない。
親にくっつく子供のような様子を見せてはいるものの、あくまでも彼女は人間ではなくガイノイドであることがよく分かる。
「まあ、これも要探索ってことか」
それそのものか、あるいは似た機能を持つものを手に入れる。
若干面倒ではあるが、具体的なロードマップがあるだけマシと思うべきだろう。
「……ククラ。全てを一から作ることは可能なのですか?」
「僕の情報を基に、向学の街・学園都市メイアと清適の街・医療都市ポリークが持つ技術を総動員して大体二十五年ぐらい必要」
アテラの問いかけにも、つっかえることなく答えるククラ。
やはり、全てが終わったらここに居を構えるべきかもしれない。
今度来た時にでも居住可能か聞いてみるとしよう。
「さて、これからどうしようか」
「とりあえず情報を収集するのが肝要かと」
マグの自問気味の呟きに応じ、アテラが告げる。
オネットを向学の街・学園都市メイアに連れていった段階で、直近でやらなければいけない仕事はおおよそ済んだとも言える。
RPGでたとえるなら一つイベントを終わらせたところ。
となれば、次のイベントが始まるまでは情報収集フェイズとなるのが普通だ。
「オネット。冒険者の街、みたいな場所はないのか?」
「冒険者に特化した街はないデスね。迷宮遺跡の情報が集まるのは、やっぱり秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアが一番デス。何と言っても数が違うデスから」
「そうなのか……」
「勿論、街によって情報を秘匿してる可能性はあると思うデスが、それこそ秘匿してるだけに私達が知るのは中々に困難デスよ」
それならば、広く浅く知ることができた方がいい。
オネットはそう言いたいようだ。
「となると、一度ラヴィリアに戻るべきか……」
呟きながら、オネットとククラを順番に見る。
メタの管理下にある街に二人を連れていくのは危険極まりない。
彼女達はどこかに置いていった方がいいだろう。
しかし、まず間違いなくククラは離れたがらないはずだ。
どうやって説得するか。
あるいは、どうにかして正体を隠して連れていくか。
少し考えなければならない。
「それはそうと、今日はこれからどうするデス?」
オネットに問われ、一先ず問題は棚に上げて時計を見る。
向学の街・学園都市メイアで迷宮遺跡攻略の依頼を済ませた後、そのまま清適の街・医療都市ポリークに来たため、もういい時間だ。
「この街には宿泊施設がないようデスが」
「…………なら、一旦メイアに戻るか」
そう結論し、マグ達は街を出て装甲車で来た道を引き返し始めた。
これからのことは戻って落ち着いてから考えることにして。
そんな中。
「フィ?」
隣で首を傾げているフィアに、ククラが問い気味に呼びかける。
合わせてマグ達も彼女に目を向けた。
「何か変な感じがします」
その視線を受け、彼女がそう口にした正に次の瞬間。
自動で整地する機能上、揺れなどほとんどないはずの装甲車に突然大きな衝撃が走り、車体が大きく吹っ飛ばされた。
「ありがとうございます。助かります」
【エゴトランスファー】によって魂を移す際に拒絶反応が生じない器を、未踏破あるいは未探索、未発見の迷宮遺跡から探し出すという依頼。
しかし、手がかりもほとんどない以上、確実に達成できるとは言い切れない。
スピルがそう明言してくれたのは実にありがたいことだ。
いずれにしても、研究と再現も含めると時間を要する可能性が高い話。
こうして清適の街・医療都市ポリークの管理者たる彼女と面識を得られたことこそが、今回の最大の収穫かもしれない。
迷宮遺跡で見つけたククラのこともそうだが、向学の街・学園都市メイアで受けた依頼は多大な利益をマグ達に与えてくれたと言うことができるだろう。
「ところで、未探索や未発見の迷宮遺跡の情報はありませんか?」
「いくつかある。少し待て」
スピルはそう答えると、しばらく瞑目してからオネットに視線を向けた。
対してオネットは一つ頷いてから「受け取ったデス」と告げた。
「では、私は研究に戻る。一日も早く、器を完成させねばならないからな。人間のためにも、私自身の探求心のためにも」
「分かりました。失礼します」
機械の体に溢れんばかりの情熱を宿した彼女に頭を下げ、部屋を出る。
本当に機人は皆、己に課した存在意義に懸命だ。
「…………ただ、余所との情報のやり取りもほとんどないようなので、定期的に見に来ないと研究が進んだとしても分からないデスね」
向学の街・学園都市メイアとぐらいしか交流がなさそうだし、状況を確認するにはローフェに確認するか、ここに直接来るしかないだろう。
「そうなると、時空間転移システムの問題が片づいたら、ここを拠点にして活動した方がいいかもしれないな」
廊下を歩いて街の出口へと向かいながら。
そう頭の中の考えを口に出していると、クイクイと腕を引っ張られる。
見ると、ククラが何か言いたげに見上げていた。
「そう言えば、ククラの力で器に必要なものを理解したりできないデス?」
「大体分かった。けど、材料が足りない。極めて特殊な物質が必要」
「それはここで作れるものなのか?」
驚きと期待を声に滲ませつつ問いかける。
その情報次第では一気に研究が進展するかもしれない。
そう思ったが、彼女は首を横に振った。
「設備が足りない」
そして簡潔に答えてから、更に言葉を続ける。
「少なくとも超重力場を極々局所的に発生させる装置が必要。数マイクロの精度で正確に。これも一から作り上げるか、どこかの迷宮遺跡から持ってくるしかない」
口調はどこか舌足らずな感じがあるが、補足自体は淀みない。
親にくっつく子供のような様子を見せてはいるものの、あくまでも彼女は人間ではなくガイノイドであることがよく分かる。
「まあ、これも要探索ってことか」
それそのものか、あるいは似た機能を持つものを手に入れる。
若干面倒ではあるが、具体的なロードマップがあるだけマシと思うべきだろう。
「……ククラ。全てを一から作ることは可能なのですか?」
「僕の情報を基に、向学の街・学園都市メイアと清適の街・医療都市ポリークが持つ技術を総動員して大体二十五年ぐらい必要」
アテラの問いかけにも、つっかえることなく答えるククラ。
やはり、全てが終わったらここに居を構えるべきかもしれない。
今度来た時にでも居住可能か聞いてみるとしよう。
「さて、これからどうしようか」
「とりあえず情報を収集するのが肝要かと」
マグの自問気味の呟きに応じ、アテラが告げる。
オネットを向学の街・学園都市メイアに連れていった段階で、直近でやらなければいけない仕事はおおよそ済んだとも言える。
RPGでたとえるなら一つイベントを終わらせたところ。
となれば、次のイベントが始まるまでは情報収集フェイズとなるのが普通だ。
「オネット。冒険者の街、みたいな場所はないのか?」
「冒険者に特化した街はないデスね。迷宮遺跡の情報が集まるのは、やっぱり秩序の街・多迷宮都市ラヴィリアが一番デス。何と言っても数が違うデスから」
「そうなのか……」
「勿論、街によって情報を秘匿してる可能性はあると思うデスが、それこそ秘匿してるだけに私達が知るのは中々に困難デスよ」
それならば、広く浅く知ることができた方がいい。
オネットはそう言いたいようだ。
「となると、一度ラヴィリアに戻るべきか……」
呟きながら、オネットとククラを順番に見る。
メタの管理下にある街に二人を連れていくのは危険極まりない。
彼女達はどこかに置いていった方がいいだろう。
しかし、まず間違いなくククラは離れたがらないはずだ。
どうやって説得するか。
あるいは、どうにかして正体を隠して連れていくか。
少し考えなければならない。
「それはそうと、今日はこれからどうするデス?」
オネットに問われ、一先ず問題は棚に上げて時計を見る。
向学の街・学園都市メイアで迷宮遺跡攻略の依頼を済ませた後、そのまま清適の街・医療都市ポリークに来たため、もういい時間だ。
「この街には宿泊施設がないようデスが」
「…………なら、一旦メイアに戻るか」
そう結論し、マグ達は街を出て装甲車で来た道を引き返し始めた。
これからのことは戻って落ち着いてから考えることにして。
そんな中。
「フィ?」
隣で首を傾げているフィアに、ククラが問い気味に呼びかける。
合わせてマグ達も彼女に目を向けた。
「何か変な感じがします」
その視線を受け、彼女がそう口にした正に次の瞬間。
自動で整地する機能上、揺れなどほとんどないはずの装甲車に突然大きな衝撃が走り、車体が大きく吹っ飛ばされた。
「SF」の人気作品
書籍化作品
-
-
337
-
-
4
-
-
2813
-
-
314
-
-
4
-
-
4
-
-
238
-
-
58
-
-
26950
コメント