EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~
064 オネットとキリ
秩序の街・多迷宮都市ラヴィリア。
しばらく前に【アブソーバー】を用いて一区画のセキュリティが停止するというイレギュラーな事件があったものの、他の街に比べれば基本的に治安はいい。
しかし、それでも問題を生み出す因子はそこかしこに隠れている。
かつて完全なる管理社会と思われていた環境の中でさえ、イクス・ユートピアというカウンターが発生していたのだから当然だろう。
無論、それが顕在化するかどうかはまた別の話だが……。
「……オネット」
「ああ。戻ってきたデスか。キリ」
街の外。城壁が遠く小さく見える場所。
そこに二人。あるいは二体。この街の法と秩序に反するであろう存在がいた。
どこか独特なアクセントで話す方がオネット。
口数少なく、彼女の呼びかけに対して頷いて応えたのがキリ。
どちらも人間ではなく、女性型の機人だった。
後期型の機体故に顔立ちは人間と何ら変わらない。
だが、首から下は人工皮膚の処理が全く施されておらず機械的。
正体を隠そうという雰囲気もない。
特にオネットの頭部には、桜色の人工頭髪の中からアンテナらしき無機質なパーツが飛び出ていたりもする。
「さて、キリ。データを共有して欲しいのデスよ」
「……了承」
余計な前置きは無用と本題に入ったオネットに、簡潔に応じるキリ。
彼女は街の中に不法侵入して得た情報を短距離無線通信によって受け渡した。
内容は二人の目的の障害となりそうな存在の情報。
その調査が正規の手段を踏まずにキリが街に入り込んでいた理由だった。
「最後のこの子。気づきかけてるデスね」
電子頭脳内で再生した映像。
その中で一人の少女型ガイノイドがハッとしたようにキリの方を振り返った姿を確認し、オネットは警戒するように声を低くして呟いた。
ここ最近、街で暮らし始めた稀人と一緒に行動している子のようだったが……。
「……驚愕」
「全くデス。間違いなく、彼女は何かしらの断片持ちデスね」
表情にも口調にも表れないキリの驚きに同意しつつ、確信と共に言うオネット。
そう断定することができる理由は、キリもまた断片《フラグメント》持ちだからだ。
排斥の判断軸・隠形の断片。
それによってキリが保有している超越現象――光学的、熱的な探知や感覚的な認識を狂わせ、己の存在を隠蔽する力――が大幅に強化されている。
並の探知能力では、彼女の姿を捉えることなどできない。
にもかかわらず、あの少女型ガイノイドはキリの気配に反応した。
勿論、完全にキリの存在に気づくことができていた訳ではないようなので、探知に特化した超越現象や断片ではないのは確かだ。
それでも――。
「……厄介」
キリの言う通り。
オネット達の障害となり得ることは間違いない。
たとえ、ほとんど杞憂となるような極々小さな可能性だったとしても。
「確実に、街の外に誘い出すべきデス」
「……同意」
敵は強大にして凶悪。
可能な限り、イレギュラーになり得る要素は排除しなければならない。
それでも尚、圧倒的な不利な状況に変わりはない。
しかし、そうと理解していても。なさねばならないことがある。
それこそが彼女達の存在意義でもあるのだから。
「簒奪者メタ。必ず私達が引き摺り下ろしてやるのデスよ」
しばらく前に【アブソーバー】を用いて一区画のセキュリティが停止するというイレギュラーな事件があったものの、他の街に比べれば基本的に治安はいい。
しかし、それでも問題を生み出す因子はそこかしこに隠れている。
かつて完全なる管理社会と思われていた環境の中でさえ、イクス・ユートピアというカウンターが発生していたのだから当然だろう。
無論、それが顕在化するかどうかはまた別の話だが……。
「……オネット」
「ああ。戻ってきたデスか。キリ」
街の外。城壁が遠く小さく見える場所。
そこに二人。あるいは二体。この街の法と秩序に反するであろう存在がいた。
どこか独特なアクセントで話す方がオネット。
口数少なく、彼女の呼びかけに対して頷いて応えたのがキリ。
どちらも人間ではなく、女性型の機人だった。
後期型の機体故に顔立ちは人間と何ら変わらない。
だが、首から下は人工皮膚の処理が全く施されておらず機械的。
正体を隠そうという雰囲気もない。
特にオネットの頭部には、桜色の人工頭髪の中からアンテナらしき無機質なパーツが飛び出ていたりもする。
「さて、キリ。データを共有して欲しいのデスよ」
「……了承」
余計な前置きは無用と本題に入ったオネットに、簡潔に応じるキリ。
彼女は街の中に不法侵入して得た情報を短距離無線通信によって受け渡した。
内容は二人の目的の障害となりそうな存在の情報。
その調査が正規の手段を踏まずにキリが街に入り込んでいた理由だった。
「最後のこの子。気づきかけてるデスね」
電子頭脳内で再生した映像。
その中で一人の少女型ガイノイドがハッとしたようにキリの方を振り返った姿を確認し、オネットは警戒するように声を低くして呟いた。
ここ最近、街で暮らし始めた稀人と一緒に行動している子のようだったが……。
「……驚愕」
「全くデス。間違いなく、彼女は何かしらの断片持ちデスね」
表情にも口調にも表れないキリの驚きに同意しつつ、確信と共に言うオネット。
そう断定することができる理由は、キリもまた断片《フラグメント》持ちだからだ。
排斥の判断軸・隠形の断片。
それによってキリが保有している超越現象――光学的、熱的な探知や感覚的な認識を狂わせ、己の存在を隠蔽する力――が大幅に強化されている。
並の探知能力では、彼女の姿を捉えることなどできない。
にもかかわらず、あの少女型ガイノイドはキリの気配に反応した。
勿論、完全にキリの存在に気づくことができていた訳ではないようなので、探知に特化した超越現象や断片ではないのは確かだ。
それでも――。
「……厄介」
キリの言う通り。
オネット達の障害となり得ることは間違いない。
たとえ、ほとんど杞憂となるような極々小さな可能性だったとしても。
「確実に、街の外に誘い出すべきデス」
「……同意」
敵は強大にして凶悪。
可能な限り、イレギュラーになり得る要素は排除しなければならない。
それでも尚、圧倒的な不利な状況に変わりはない。
しかし、そうと理解していても。なさねばならないことがある。
それこそが彼女達の存在意義でもあるのだから。
「簒奪者メタ。必ず私達が引き摺り下ろしてやるのデスよ」
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