EX級アーティファクト化した介護用ガイノイドと行く未来異星世界遺跡探索~君と添い遂げるために~

青空顎門

008 城壁と門番

 積み重なる非現実的な状況。
 その中で、混乱したまま神経を擦り減らしながら歩くこと数分。
 アスファルトの道に停止線が現れ、男はその前でアテラと共に歩みをとめた。
 すると、それを合図としたように、顔を上げた視界に変化が生じる。
 薄膜が破けて中身が露出していくかの如く、徐々に景色が変わっていき……。
 数メートル先。何もなかったはずの空間に巨大な城壁が現れた。

「光学迷彩のようなものか……?」

 まるで今この瞬間に無から生成されていっているかのような光景だったが、さすがにそんなことはないだろう。
 隠されていたものが明らかになったと考えるのが妥当だ。

「どうやら、今回の稀人はそれなりに文明が発展した時代から来たようだな」

 男の呟きに応じたように二人以外の声が聞こえてきて、視線を水平に戻す。
 いつの間にか城壁の巨大な門の前に立っていた門番らしき存在が目に映る。
 先の言葉は彼の発言だったらしい。
 全身鎧に覆われていて外見では性別が分からないが、声からすると男性だろう。

「稀人? それなりに文明が発展した時代?」

 男はアテラと共に慎重に近づき、少し離れたところで一旦立ちどまって尋ねた。

「お前達、ここじゃないどこかから転移してきたんだろう? 翻訳機の表示からして地球の……日本。話し方からすると時代は二十一世紀前後ってとこか」

 中世ヨーロッパ的な甲冑を着込みながら、突然SF染みたことを言い出す門番。
 そのミスマッチさに、男は思わずアテラと顔を見合わせた。
 漠然と異世界に来てしまったのではないかと推測してはいたが……。

「ここは、どこなんだ? 地球じゃないのか?」

 改めて受け入れがたい思いを抱きながら、男は確かめるように問いを重ねた。
 対して門番は「ああ」と頷いて肯定の意を示し、僅かに間を置いてから続ける。

「ここは地球から約五百万光年離れた惑星ティアフロントだ。そして今は、二十一世紀から数えると大体一万二千年後の未来に当たる」

 そうして彼の口から発せられた答えは、尚のこと信じがたい内容だった。

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