ペガサス救出大作戦

　ニクスの案内で森の中を進んで行くと、少し開けた場所でテントなどが沢山ならんでいるキャンプ地のような場所が見えてきた。

　そこから怒鳴り声が聞こえてくる。
「話が違うじゃないか!　ペガサスを渡したら俺の家族を返してくれるって話だっただろ!」
「威勢がいいのはいいが、自分の立場ってものがわかっていないみたいだな。やれ」
　大声で騒いでいた男を、まわりの男たちが殴る、蹴るの暴行を始めた。

　あの殴られている男がぺガサス誘拐の実行犯なのだろうか?
　俺たちは今森の中から男たちを見ているため、向こうからはまだ気づかれてはいなかったが、実行犯の家族が人質に取られているようだった。

「なぁ、俺たちはペガサスと積み荷を持ってこいって言ったんだよ。あの積み荷はどれだけの価値があったと思ってんだ?　それをこの広い森の中で無くしやがって」
「違う。俺はお前たちに荷物を渡そうとしたのに、早まってペガサスを攻撃したのはお前の仲間だろ。俺は家族を救いたいだけだったのに。お前の仲間が余計なことするから……」

「ねぇお父さん、俺余計なことしたの?　だってあんなに高く飛んでいたら、絶対に家族捨てて逃げようとしてるように見えるよね?」
　お父さんと呼ばれた男は先ほどから男を尋問している男だった。
　あの中では一番偉そうにしており、暴行を与えるように指示をしていたので主犯格の一人なのは間違いない。

「それもそうだな。コロンは賢いから、コロンが言うんだから間違いない。だからお前が悪いんだろ」

　無茶苦茶ないい分で男が責められているのが聞こえてくる。
「ボス、それで馬車の方はどうしますか?　あの中には天空の島へ封印するはずだった魔王の首輪があるって話ですから、魔物たちより早く見つけないと魔王を先に見つけられてしまいますよ」

　魔王の首輪?　なにか不吉なワードがでてきている。
　どうしようか。誰かに押し付けた方がいいのか？

「あれさえあれば、復活した魔王を先に見つけられるからな。今なら生まれたての魔王なら俺の支配下におけるはずなんだ。なんとしても馬車は見つけたい……だか、こいつが街から近い所で墜落させたせいで、今頃は馬車を探して衛兵が森狩りを始めているだろうからな。斥候へ行った奴らはどうなった？」

「まだ戻っては来ていませんが、そろそろ戻ってくるかと思います」
　今見えているだけでも、10人近くはいる。
　それに斥候となると……結構な大所帯なのかもしれない。

　そこへ森の中から足音もさせずに男たちが現れた。
　全身を黒っぽい服で統一し動きに無駄がない。
　ボスと呼ばれている男たちよりも強そうに見えるが、人は見かけじゃないからな。

「ボス、例の馬車見つけました。そう遠くない場所にありましたが、ペガサスたちが空からの探索を開始しているのが見えましたので急いだ方がよろしいかと思います」

「そうか。それなら全員で行って持てるだけの荷物を持ってさっさと逃げるか」
「この男と家族はどうしますか?」
「女は売れこの男は……ここにペガサス強奪の犯人として置いておけ。どうせ行きつく先は鉱山だ。助かりはしない」

『鉱山……怖い』
　男たちの会話で鉱山というワードがでてきた瞬間、チョロさんがじょぼじょぼとお漏らしをしてしまった。距離が離れているが……黒服の男たちがこちらを見ている。
　思わず、男たちの動きを確認しようとすると……やばい……俺と目があった。