猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第74話 えくすきゅーずみー





 おっちゃんは再び気を失った。
 ダメージを受けすぎたんだろう。
 ゆっくり休んでてね。




 私はおっちゃんをボコボコにした青年3人組を殺すことを心に決めた。
 犯罪? 知らないよそんなの。
 あいつらが捕まればいいのに、そして死んじゃえばいいのに




 その私のあからさまな殺気に気付いた澄海くんが


「………タマ。落ち着けって言ってるだろ。」
「落ち着けるわけがないよー。おっちゃんをここまでしたんだよー? 億死に値するよー」
「………違う、聞いて。感情的に動くな。」




 澄海くんはおっちゃんを壁にもたれさせてから、私に向かって歩いてきた
 赤い瞳で私の目を見つめてきた。


「………いいか? よく聞いて。人殺しはよくない。」
「じゃー、どーするのかなー? 」
「………僕だっておっちゃんのことは結構気に入ってる。だから、僕はあの三人に急襲をしかけるつもりでいる。腹が立っているのは同じだ。」
「で?」
「………タマには冷静に考えてほしい。この場でできる、殺す以外の最高の嫌がらせを。」
「ふーん。そっか。まーたしかに、直接殺すのはよくないねー。」




 おっちゃんにしても、人殺しと一緒に生活するのは息が詰まる思いがするだろう。


 澄海くんの言うとおり、冷静になろう。
 殺意の念を腹の中で膨らませたまま、クールに脳を冷やす


 そもそもだ。
 そもそも、私達が擬人化しているのは、幽霊退治のため。
 その次に、『おっちゃんの護衛』なんだよ。
 初めて澄海くんと平医院に行った日もおっちゃんは確かにそう言っていたじゃないか


 いじめられっこだから、情けないけどこの子たちに守ってもらおうって。
 澄海くんはプライド云々って言ってたけど、もともと、恥も外聞もプライドもかなぐり捨てて、私達に守ってもらいたかったのかもしれない
 おっちゃんは非力だ。私はそれをよく知っている。
 なのに、助けなかった。助けられなかった。


 また頭が熱くなってきた。幸い、ここはプールだ。
 顔に水をぴしゃりと浴びせて思考をクールダウンさせる。


 ほっぺたをバシバシと強く叩く。


 案をまとめよう。


 頭の中でいくつもの案が生まれては消去法で消されていく
 半分以上、あの三人が死ぬ案だった。


1.直接キラメキ団の首を引っこ抜く
 死ぬから却下


2.プールに蹴落としてしまう
 すぐに這い上がるし、水の中で押さえようにも結局は私がまだ水に慣れていないから却下


3.気配を殺して背後から頸動脈を切断
 返り血を浴びて不快だから却下


4.十八番の幽体離脱でなんかやる
 まだ物理的接触は不可だから却下


5.正面から殺しにかかる
 極小の可能性だが生き残られて顔を見られるかもしれないため却下




 どうやら私はさっきの一件で頭のねじが緩んだみたいだ。こんな物騒なことを考えるような猫じゃなかったはずなんだけどなぁ


 しかし、ふむ。いいことを思いついた


 これなら作戦に必要な時間は1秒程度でいい。
 なんせ、すれ違うだけだから。
 しかし相手が3人となると………もうちょっと脳みそを絞ってみるか。
 時間をかけて性格などを見極めてから、いいタイミングで仕掛けるのもいいかもしれない。
 それなら、一芝居打つか。
 よし、それで行こう。


「よーし、考えがまとまったよー。澄海くん、何もしなくていいよー。
 おっちゃんの目が覚めるまで、おっちゃんの近くにいてあげて?」


「………一人でする気なの。ダメだ。何をするのか教えろ。」




 んー、私がそんな言い方をしたからか、澄海くんが私が殺しに行くと思っているみたいだ。
 大丈夫、澄海くんには教えるよ。ただ、おっちゃんには秘密だよ


「これはねー、私にしかできないの。
 澄海くんには技術的に不可能だから、私に任せてー。
 じゃー、作戦を伝えるよー。」






 おっけーおっけー。待ってなさいよー、キラメキ団。


 社会のゴミクズはしっかり社会的に抹殺しないとダメだよねー。




 あざとく、賢く、狡猾に、ぶちころがしてあげる。








       ☆キラメキSIDE★








 先ほど、修に会った。
 あいつは昔から気に食わない。


 あいつがオレになにかをしたことはない。
 ただ、単純に気に食わない。
 理由なんてない。顔が気に食わないし、しゃべり方も気に食わない。
 親がいないくせにヘラヘラして、アホ面で話しかけてくるような奴だった。


 中学に上がってからは口数も減って、ほとんど誰とも話さなかったようだが。


 小学中学と、やはり気に食わなかったから悪質に苛め続けたのを覚えている
 おそらくそのせいで人とはあまりしゃべらなくなったんだろう。
 だが、オレにはそんなことはどうだっていい。
 オレにとっちゃ修が気に食わないことに変わりはない。


 それが完全に悪意に変わったのは、体育の授業のバスケだ。


 あいつは運動能力は高くない。運動音痴だ。
 しかし、努力家であることは知っていた。俺は鼻で笑っていたがな。


 修の口数が限りなく少なかった中学時代のバスケを思い出す。


 修のチーム、オレのチーム、審判ともに修の味方はいなかった。
 そのバスケの試合で、修は味方からボールをぶつけられ、敵チームからオフェンスファウルを受けてもディフェンスファウルとみなされ
 オレはドリブルしながら修に肩からタックルをかました。


 実際はオレのファウルだ。しかし、審判もグルだ。
 だから修のファウルということになった。


 修は訳が分からないという顔をしつつ、半泣きで、オレを睨みつけて試合を続行した。


 そして試合の後半。ゴール下でまたタックルを喰らわそうとすると、修はオレのタックルを躱してボールをスティールし、その場でシュートを放ちやがった。


 結果、そのシュートはちゃっかりとネットを揺らした。


 そして修は自陣に戻る際にすれ違い


「ふっ」
「こっの!」


 鼻で笑いやがった。
 その瞬間、俺は修を殴った。


 恥。
 恥をかかされた。
 そう直感した


 あいつは、どんなにいじめられても折れなかった。


 それが腹が立った。
 靴に画びょうを入れた。
 教科書をゴミ箱に入れた
 階段で肩をぶつけ、転落させた
 直接殴った
 二階の窓から飛び降りさせた


 それでも折れなかった


 目は死んでいたが、光を失っていなかった。


 気に食わない。




 さっきもそうだ。追い詰められ、地面に転がされ、それでもなお、オレたちに抵抗した


 気に食わない。さっさと死ねばいいのに






「ダハハハ! それにしても、さっきの修マジ笑えたわー。ありゃ才能だな」


 リューヤが笑いながらオレの肩を叩く。


「違いねぇ。小遣いももらったことだし、パーッと遊ぶか」




 それにしても、なんで修はこんな大金を持っていたんだ?
 高校生が万札を持ち歩くなんて、そうそうあるもんじゃないんだがな。
 ああ、そっか。霊媒師の弟子としてテレビに出たギャラか。
 楽なもんだな。詐欺を働いて金をもらっているなんてな。
 コレから定期的に修からお金をもらうのもいいかもしれない


 修からもらった2万4千円の内2千円を使ってプール近くで焼きそばを購入
 泳ぐと腹が減る。腹が減ると食う。食うためには金を使う。プールでの物価は普通より高い。
 金がどんどんなくなっていくな。ま、オレのじゃねーけど。


 焼きそばを食い終え、再びプールへと向かう


 さっき出会った女子大生のメルアドも聞いた。
 会う約束もした。
 オレはそれなりにモテるからな。女遊びもそれなりにしてる




 だから女の扱いにもだいぶ慣れているつもりだ。


















「えくすきゅーずみー」














「あ?」




 だが、外国人の女の子相手は、さすがにしたことがなかった





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