猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです

たっさそ

第51話 ★近中遠距離万能型



「あー、やっと片付いたねー。」


「はぁ………はぁ………プールのキモン、ふういんしたよ………」


「………(こくり)」


「ありがと、ティモちゃん………」


 ティモちゃんとクロちゃんが、時間をかけてプールの鬼門を封印してくれた。
 これで、ここから変なものが湧き出てくることはないよねー? ………だよね?


 うん。よかった………何とか切り抜けることができたみたいだ






 でも、後に残るのは、自分の不甲斐なさ。


 高火力で敵を一掃するクロちゃん


 厄介なボスを相手してくれる澄海くん。


 結界で相手の動きを制限させて、クロちゃんと澄海くんを戦いやすくしてくれるティモちゃん


 じゃあ、私は?


 幽体離脱ができて、数珠や塩の支援武器がなくても戦えるのはでかい。
 でも、それだけだ。
 クロちゃんみたいな火力はないし、澄海くんみたいに腕力もない。
 ティモちゃんみたいに結界も使えない。みんながどんどん遠くに行く。


 それどころか、私は右半身ががら空きで、迷惑をかけてしまう。
 私以外のみんなは、怪我どころか接触すらしていない。
 私はどうだ? プールの鬼門だけで、5回は攻撃を受けた


 それが続くようなら、いつかは私は致命傷を受けて死ぬかもしれない


 相手が雑魚だからよかったものの………


 悔しい………


 悔しい。どうしたらいい。
 私は長女だから、みんなを守らないといけないのに、私が不甲斐ないから、みんなの足を引っ張ってしまう
 証拠に、私だけが攻撃を受けてしまう






「おい、お前らふざけてんのか?」






 ほら、私が不甲斐ないせいで、イスルギさんが不機嫌になってる
 私が弱いから。この中で一番、弱いから………




「………ふざけてなんかない」




 澄海くんは、ふざけてなんかない。ふざけてるのは、頼りない私のことなんだから。




「ふざけてないなら、なんだあの戦い方は。スカイ、60点。まだまだダメだ。動きに無駄がある。ただ、筋力はたいしたもんだ。機転もきくし、状況の判断も出来ている。動きが自己流なんだろう。カイが帰ってきたら、体の動かし方でも習っとけ」


「………(こくり)」


 眉根を寄せながら、澄海くんは頷いた。スカイ君が60点なんて、ハードルが高いね
 次にクロちゃんに視線を移した。クロちゃんはビクリと肩を震わせると、イスルギさんは、クロちゃんにも同じように点数を告げる






「クロちゃん40点」






 へ?


「な、なんでー? 一番倒せていたじゃない」


「倒せたのは、クロちゃんの力じゃねぇ。鏡の力だ。まだ振り回されているから、微調整にかんしちゃ、俺からはなんにも言えないな、慣れろ」


「は、はい………わかり、ました」




「チー坊は、20点かな。」


 点数が下がってきてる
 ティモちゃんが泣きそうな顔をしてるよー。よしよし、大丈夫だよー。


「うぅ………低いよぅ」


「当たり前だ。擬人化してから2ヶ月で結界を張れるようになったのは驚きだけど、張り方がまだ甘い。結界の綻びから、妖怪や魔物が逃げ出す羽目になってる。これは要修行だな。精進しろ、大丈夫、ちゃんと伸びしろはある。鬼門の封印までしちまうしな。ただ、注意力が散漫だ。何回か致命傷を受けるところだったんだぞ。気を付けとけ」


 イスルギさんはポムポムとティモちゃんの頭を撫でる


 そして、最後に難しい顔で私を見つめる
 点数を告げるんだろうな。なんの基準でどういう点数なのかはわからないけど、私がいいわけがない


 長女であろうと頑張っていた。修行をしたから、もうなににも負けない気でいた
 負けたのはゴーストではなく、妖怪でもない。私は、自分自身と、みんなに負けたんだ。


 イスルギさんは、その口をゆっくりと開く






「―――タマは、80点。合格だ。」






「ふぇあ?」


 なんか間抜けな声を出してしまった


「なんで私が合格点なのー? だってー、私が一番攻撃を受けていたんだよー? みんなは無傷だよー。」


「はぁ? 何言ってんの? タマが右耳の聞こえが悪いことは知っているけど、それ抜きにしても、あの数相手にして、5回しか受けないってのは充分異常だろ。」


「だったら、無傷のみんなはもっと優秀じゃないのー?」


「逆だ逆。タマが優秀すぎるんだよ。逆に聞こう。誰がいいかな、スカイ」


「………なに。」


「オロチと戦った時、タマのサポート無しに、戦う選択肢を選べたか?」


「………(ふるふる)」


「そういうことだ」


 ………? どういうこと?
 澄海くんは、私のサポート無しでもヤマタノオロチを虫を払うかのように退治していたじゃない。


「あー、わかってねぇな。スカイが本気だしたら、全員巻き込んでどえらい被害を受けてたはずだ。タマは予測してクロとティモの位置を微調整してただろ」


「うーん、そうかも。よく覚えてないけど。」


「あと、俺の目には、スカイがオロチと一騎打ちできるように、ほかの雑魚を全部引き受けていたように見えたけどな。」


「それはそうだよー。私にできるのは、翻弄するくらいだからさー。別に私がいなくてもなにもかわらないよー。」


 私は戦闘には向いていないのかもしれない。だったら、サポートくらいはしたいよねー。


「そう、それだ。タマは十分接近戦の能力は持っているし、中、遠距離も幽体離脱で押さえている。持久万能型だ。一掃できる力はなくても、翻弄するにはもってこいだ。つまり、チームであることを意識して戦えているのが、タマ。お前だってことだ。全員、タマを頼りすぎている。タマ、次はいったん下がってみてみろ、そしたら、俺が言っていることがどういうことか、わかるだろう。」






 イスルギさんは、裏不思議のこういう状況でも、私たちを修行させようとしてるみたいだ。
 私が抜けても変わらないと思うけどねー。


「………タマ、数珠を貸して。」


「いーよー。」


 澄海くんに数珠を貸して、次の鬼門。旧校舎二階へと向かった。




 現在、15分経過。まだまだ長い夜は続くんだねー。




                    ☆



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