猫と宇宙人はゴーストバスターを始めたようです
第50話 不甲斐ないなぁ、私
前言撤回。挑戦を受けるべきではなかったよー!
「クハハハハ! ほらドンドン来るぞ!」
「クロちゃん! そっちのおねがいー!」
「う、うん!」
私たちは学校の廊下を全力で走り回っていた。
「ティモ! そいつらの足止め!!」
「あれだね! わかったよ!」
ティモちゃんが御札を使って廊下に張っていき、陣を作る。それから簡単な結界を張り、妖怪たちを足止めして、一か所に集まるように誘導すると
「クロ! さっきのを!」
「いくよ………『魔封陣!』」
鏡の中の神様とシンクロした声に反応し、ティモちゃんが廊下に貼った御札の陣から、眩い光が照らされ、ティモちゃんの結界ごと妖怪たちは破壊された。ついでに校舎も穴が開いた
これは範囲結界の中にいる悪霊や妖怪を成敗するための技。威力は高いけど燃費は悪い
「ほーれ、今度は裏に野狐が回り込んだぞ。」
「もー!! なんでこんなにいっぱい妖怪がいるのー!? ここは学校だよねー!?」
教室から湧き出てくる子鬼、妖怪、魔物、ゴースト
開始から5分でこの状況だ。4対∞の終わらない鬼ごっこが始まった
ワラワラとゾンビのように現れるもんだから、倒しても倒してもキリがないよ!
それどころか数が増えすぎてきてるような錯覚さえするもん!
うーん、多分本当に数は増えてる! 間違いない!
「クハハハハ! 誰が鬼門は校長室だけだと言った! あんだけで済んだら校舎が半壊なんかしやしねぇよ!」
後ろから私たちに並走ながら笑うイスルギさん。
こちらを手伝う気は全くないみたいだ
今のパーティで一番火力があるのがクロちゃんだから、頼りっぱなしになっちゃってるよー!
ごめんねクロちゃん―!
そして、なにかと小細工で役に立っているティモちゃん
私と澄海くんは、翻弄して誘導を促すくらいしかできていない
歯がゆい
多少成長したからと言って浮かれていた。
数の暴力には耐えられない
校舎内に無数に存在する鬼門から、一分間に100匹ほどの妖怪や悪霊が湧き出てくるペース。むちゃくちゃだー!
そりゃー、校舎が半壊するわけだよー!
ゆーには先に家に帰ってもらってよかった。足手まとい以外の何物でもないから
まずは掃除用具入れにゆーを押し込んで、1分。掃除用具入れを死守することに専念してからの鬼ごっこだ。まず、数が増殖してからスタートするなんて、この鬼ごっこは詰んでる。
もうこれは、どっちが鬼なんだろう。私たちが追ってる気もするし、大勢に追われている気もする。
もうどっちでもいーや!
私は幽体離脱でティモちゃんの結界から漏れてきた妖怪たちをうまいこと倒すことができるけど、
澄海くんは………
「………どうせ僕は弱いよ。知ってたよ。くそっ」
イスルギさんに負けて卑屈になっている。これは見てらんない。
「………あーもう! ウザイ!」
それに、一度塩をまかなければ攻撃する手段がほとんどないみたいだ。
七人ミサキに腕を掴まれ、塩を巻いてからぶん殴る。
ハンデがある状態で戦わないといけない。それは大変なことだ。
塩も有限なんだし、節約しないといけないのに
「七人ミサキって高知とか山口とかの幽霊じゃないのー!? ここ鹿児島だよー!?」
私のツッコミも、妖怪の悲鳴や破砕音にかき消される
聞くところによると、澄海くんは、イスルギさんとの戦闘で数珠がぶっ壊れたとかなんとか
霊力を込めた塩の数にも限りがあるし、澄海くんは、自身の宇宙人としての能力の代償に、結界を張ることができないみたい。
でも、それを補って余りあるくらい、もともと持っている力が強い。右手の幽体をほんの少しだけ分離させて(それが今の限界みたい)、一匹の人面犬を裏拳で殴り飛ばしただけで、10匹の妖怪を巻き込んで一掃したんだよー。すごいよねー
でも、幽体離脱はそれだけでかなり体力と集中力を消耗する。礼子さんのすごさがわかった。あの人は、霊媒師として天才だ。
専門家ってのはやっぱりすごい。
自分がまだまだ未熟だということを思い知らされる
「はぁ………一応片付いたか」
「そーみたいだねー。」
「うん………でも、今度はプールの方で、数が増えてきてる」
「えー! まだいるのー!?」
「くははは! だらしねぇ! まだ10分も経ってないぞ?」
クロちゃんが鏡を見ながら告げてくれるのは、神様の視覚情報。上空からミコトさんが観察してくれている
透視の能力もあるらしく、『天眼通』という神通力らしい。校舎内も神様にお任せ
ミコトさんマジ神様。
火力、応用力、防御力。ともに最も優れているのが、クロちゃん。
これについてはミコトさんの力が大きいみたいだけど。
火力次にが優れいているのが澄海くん。
もともとデタラメなステータスを持っているみたいだから、とんでもなく力強い
小細工が優れているのがティモちゃん。
強い結界ではないけど、それがなかったらかなり効率が落ちていた。
私はいったい、なにができるんだろう
「やー!」
大きな数珠を振り回し、クロちゃんの近くにやってきたドデカい百足の胴体に回してから引っ張り、切断する
左手では部分離脱させた幽体を飛ばし、ティモちゃんが張った結界から逃れようとした妖怪や悪霊、魔物の連中を結界内部に押し込む
サポートしかできていない
悔しい
「『神雷』!」
ミコトさんのいる上空から、ティモちゃんの結界ごと破壊する威力の雷が降る。リチャージに時間がかかるけど、雑魚の掃除には持ってこいの範囲技だ。
プールの中にいる魑魅魍魎は粒子となって消えた
「………邪魔」
さらには、澄海くんが腕を振るうと、地面ごと抉りながら飛んでゆくヤマタノオロチ。
それボス級の化け物だよ!? なんで蟲を払うように飛んでいくの!?
いろいろツッコミどころはあるけど、だいたいの流れはこんな感じだ。
正直、役に立っている気はしなかった。
「タマ! 右!」
「え――、きゃっ!」
それどころか、足手まといになっている気がする
吹き飛ばされたけど、澄海くんが呼んでくれなかったら、おそらく怪我してた
ありがとー、澄海くん。
………オッドアイの影響かはしらないけど、右耳の聞こえが悪い。
猫なら白猫がオッドアイになりやすく、そのうち3割の猫が、色素が薄い方。つまり、色が青い方の目や耳に異常が出るらしい。おっちゃんのパソコンで調べてみたけど、オッドアイっていうのは、そんなにかっこいいものではなかった。私はかっこいいと思ってるんだけどねー。
でも、レーダーのような役割をしてくれる耳も、右側が死角となってしまう
確かにオッドアイはかっこいいと思う。自慢したいくらいだ
でも、それによる弊害は、実に疎ましい
世の中うまく回らないものだねー。
「もー! 倍返しだよー」
とりあえず、私を吹き飛ばしてくれた船幽霊の首を右手の部分離脱でへし折る
その後は、クロちゃんの背後ががら空きだったから、背中合わせでクロちゃんの援護に入った
ミコトさんが上空にいる以上、クロちゃんは完全にただの遠距離砲台だよー。
いくら私より身体能力が高いといっても、今のままじゃ接近戦には弱いっぽい
それに、威力の高い術をつかうから、すぐに霊力が枯渇してしまう
持久戦を強いられている現状では、クロちゃんにはキツイたたかいになるだろうねー。
だから、すぐにフォローに回らないといけない
「おねがい、タマちゃん!」
「いーよー。」
クロちゃんが塩を撒いて、私がそいつらを文字通りに蹴散らす。
左手ではティモちゃんの結界の範囲外にいる妖怪を地面にたたき伏せ、右手に持った大きめの数珠を、上空にブン投げる
ティモちゃんの頭上に落っこちようとした釣瓶落としに見事命中。やったね
でも、数珠投げちゃったなー。どうしよ
ここらへんの蹴散らすまでは幽体離脱だけで戦うしかないか
「―――ひゃんっ!?」
とか考えてたら、また右側から攻撃を受けた
またゴブリンか! 私の尻尾の根本は敏感なんだよー! 離しなさい!
「えい!」
全身離脱しながら回し蹴りして、子鬼を吹き飛ばす
うぅ………せっかく、この前、おっちゃんが念入りに洗ってくれたのに………
不甲斐ないなぁ、私。
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